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<概要>
 原子力施設の防衛は、国土安全保障省(DHS)の国土防衛脅威水準(Homeland Security threat levels)に維持されている。原子力プラントへの接近は、厳しく管理されており、防御の境界は拡大・強化され、防衛部隊とその能力は増強された。さらに、司法機関、情報機関関係者と軍隊との協同は、強化された。若干のプラントで、これらの努力は、国家警備隊、米国沿岸警備隊、州警察または他の部隊によって補完されている。2002年2月に、NRC(原子力規制委員会)は産業がすでに実施している防衛に対する多くの強化策を整えた。接近の許可を一層制限する新しい要件を発効した。2003年4月に、NRCは防衛要員の労働時間を制限する規則を発効し、武器に練達することを含む訓練の増強を要求した。原子力プラント防衛の広範囲のレビューを完了して、NRCは原子力の設計基準脅威の定義を、原子力プラントが防衛しなければならない脅威が非常に増えているとして、更新した。
<更新年月>
2003年11月   

<本文>
 NRC(Nuclear Regulatory Commission:原子力規制委員会)の最近の資料によると表題の施策は、原子力施設の防衛、防衛訓練、防衛要員、包括的防衛評価と脆弱性研究、汚い爆弾(放射能放散爆弾)への防衛、調整と通信、NRCの緊急時オペレーション・センターと緊急時計画、他防衛行動、NRCにおける防衛の9項目に亘っているが、ここでは、施設の防衛に直接関係する項目だけについて述べることにする。
(1) 原子力施設の防衛
 NRCは、2001年9月11日以前から、テロリストの攻撃に対する防衛をしていたが、それ以降は、脅威が増していることを考慮して防衛を強化している。
 原子力発電所を含む原子力施設は、委員会規則に従って、すでに多くの防衛と護衛を持っており、この国で最も頑強に防護されている民間施設に数えられている。
 それにもかかわらず、2001年9月11日の事件によってこれらの設備の防衛を強化した。
 2001年9月のテロ攻撃の後で、NRCは原子力施設にその時のシステムで最高位の防衛をするよう通達した。
 一連の通達、命令、規制文書、要約が、NRC認可の施設—発電炉、廃止原子炉、独立の燃料貯蔵施設、研究・試験炉、ウラン転換施設、ガス拡散プラント、燃料加工施設、放射性物質の特定の使用者、及び使用済み燃料と放射性物質の輸送者を含む—の防護を一層強化するよう発効されている。
 実施された活動の詳細は機微にわたるものであるが、発電用原子炉のような施設に対しては、一般に以下のようなものを含んでいる。
・パトロールの増強
・防衛部隊と防衛能力の増強
・防衛ポスト(駐在所)の追加
・物理的バリア設置の追加
・より遠い位置での車輛チェック
・法の執行機関と軍関係当局との協力の強化
・全職員に対するサイト接近の制限的管理
・拡張され、促進され、より徹底された従業員の経歴チェック。
(2) 防衛訓練
 NRCは、脅威が高まっている発電所において防衛への影響の危惧のため、2001年9月のテロリストの攻撃直後、一時防衛実戦部隊訓練を中止した。2002年夏に、紙上訓練(確かなシナリオを使って討論を容易にする)が、連邦、州と地方の司法機関及び緊急計画担当者からなる部隊を含めて実施された。
 2003年2月に、脅威の特徴と防衛強化の影響を評価し、かつ訓練過程を強化する先行的計画の一部として、運転中の原子力発電所で防衛訓練を再開した。NRCは現在、月約2回の割合でこれらの訓練を実施している。先行的計画が一まわり終了すれば、2001年9月11日以前に実施された8年サイクルの代わりに、3年サイクルでこれらの訓練は、各原子力発電所で実行されよう。
 実戦部隊訓練は、実施権者(認可取得者)の防衛部隊及びNRC規制の要件としての設計基準脅威に対して防護する能力を実績に基づき評価する大切な方法である。実施権者の防衛強化は、プラント安全特性と緩和戦略、防衛対策と緊急時準備に必要な要件を統合した方法で提言している、NRCの深層防護安全哲学を反映している。
 最近の実戦部隊訓練は、訓練の現実味を増すためにMILES(Multiple Integrated Laser Engagement System、多重レーザー交戦システム)装置を利用した。MILES装置は国防総省(DOD)、エネルギー省(DOE)と他の機関によって使用される地上戦闘トレーニング・システムである。これは、防衛隊と敵部隊の間の戦いをシミュレーションすることによって訓練に現実味を加えるレーザー送信機を付けて改造された武器を使う。
(3) 防衛要員
 NRCは、2003年4月29日発電炉実施権者に、防衛要員に対する追加の訓練と資格要件を強化する命令(Orders)を発効した。これらのOrdersは、もっと頻繁に武器を使うこと、もっと広い条件下でのより現実的な訓練及び固定された目標だけでなく動く目標に対して武器を使うことを含んでいる。防衛要員の疲労を最小にするために、同じ日に義務と労働時間の管理に対して防衛要員がうまく適合できるように、追加の処置を要請するOrdersを発効した。それは、過度の労働時間が、原子力発電所防衛要員の義務を慎重かつ効果的に遂行する能力を妨げないことを保障するものである。
(4) 包括的防衛評価と脆弱性研究
 2001年9月11日の直後に、NRCは護衛と防衛計画、規制、手続の包括的な再評価を実施し、多くは現在進行中の多数の防衛改善に繋がった。この評価の一部としてNRCは、放射性物質を含む妨害行為及び窃盗または転用に対する設計基準脅威(Design Basis Threats、DBTs)中の敵の特質を修正した。
 NRCは、原子力発電所とその他の施設の潜在的な脆弱性を調査する研究を進めており、発電炉と使用済み燃料施設への計画的な航空機衝突に対する予備的な脆弱性評価を完了している。また、原子力発電所でサイバー防護を強化する処置をした。サイバー防衛を強化する追加の対策は、防衛プログラムの包括的再調査の中で考慮されている。また、潜在的な空からの脅威を扱うために適当な連邦機関と協同している。例えば、NRCは連邦航空局と輸送防衛管理局とともに、操縦士への適切な忠告をだし、原子力発電所の上で円を描いたり、ぶらぶらしたりしない、さもないと司法機関員によって面接をされると忠告している。
(5) NRCにおける防衛
 NRCは、そのウェブサイトを徹底的に再吟味し、改訂してテロリストが関心を持ちそうな機微な情報を取り除いている。また、機微な情報を同定する基準を開発し、実施している。
(6) NRCに対する原子力産業の対応
・原子力発電所の建設と運転において使われる深層防御哲学は、公衆を放射性物質の被ばくから保護している。
・原子力産業は、常にアメリカの産業の中で最も高い防衛基準を維持している。産業は、防衛のための原子力規制委員会規制に適合するよう要求され、多くの分野でこれらの要件を越えている。全ての商用原子力発電所は、定常的に訓練され、試験される高度に訓練された防衛隊を持っている。
・2001年9月11日以来、防衛はかなり強化された。NRCは、2002年2月及び2003年4月に再び防衛強化を命令(order)した。
・9月11日以来、産業はおよそ2,000人の警備員を増加させ、物理的な防衛の質を向上させた。全体として、産業は9月11日以来、追加の防衛に3億7000万ドルを使用した。
・原子力発電所への接近(9月11日以来厳しくなった)は、全ての車輛と人物を捜索する防衛警備員によって、管理されている。プラント運転領域に入る全ての労働者は、高感度の金属及び爆発物探知設備を通らなければならない。
・電力会社は、重要なプラント・システムと構成要素に損害を与えるような車輛爆弾に対して防護する追加の車輛バリア・システムを設置した。
・産業は、原子力規制委員会を通して、潜在的脅威の査定並びに商用原子力施設に対する確実な脅威のある場合の産業防衛隊による特定の活動に関して、国土安全保障省及び情報関連部局と協同している。
・全ての商用原子力プラントは、プラント事故またはテロリスト事件の場合に、緊急時対応手続きと非常事態計画を持っている。これらの手続き—9月11日以来再検討され改訂されている—は、プラント職員と地元の警察、消防、非常事態管理組織を巻き込んだ大規模な訓練によって、2年ごとに評価される。NRCと連邦緊急管理庁(Federal Emergency Management Agency)専門家チームは、これらの訓練を評価する。
<関連タイトル>
米国国土安全保障省(DHS) (13-01-02-12)
アメリカの原子力政策および計画 (14-04-01-01)
アメリカの原子力安全規制体制 (14-04-01-04)
アメリカの原子力政策および計画(2001年、ブッシュ政権) (14-04-01-28)

<参考文献>
(1) USNRC,Fact Sheet on Nuclear Security Enhancements Since Sept. 11, 2001(September 2003),
(2) NEI, Nuclear Plant Security(May 2003),
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