<大項目> 海外情勢
<中項目> 北米各国
<小項目> アメリカ
<タイトル>
アメリカのPA動向 (14-04-01-07)

<概要>
 一般国民による原子力の受け止め方は、国内で運転中の原子力発電所の高稼働実績や2001年冬期にカリフォルニア州で起こった電力危機、2001年5月にブッシュ政権が打ち出したエネルギー政策の影響を受けて好転している。原子力エネルギー協会NEI)が2001年10月に実施した世論調査によると、安全性や支持に関しては、原子力発電所が安全であると考える米国人の割合は66%と、前年の57%や1984年の35%以下より大幅に上昇した。また、原子力エネルギーの使用に賛成する割合は65%にのぼり、1980年代初めに始まったこれまでの調査の中で最も多くの支持を得た。
<更新年月>
2002年01月   

<本文>
1.原子力発電の現状
 2001年12月末現在、アメリカでは103基の原子力発電所が運転中である。1974年以来、原子力発電所の発注は途絶えているが、運転中の原子力発電所では、定格出力アップ(power uprate)や運転認可の延長(現在の40年から60年に)が盛んに行われており、原子力の評価が高まっている。2001年の原子力発電電力量は、過去最高だった前年の7,540億kWhを上回り7,688億kWhを記録。平均設備利用率も前年からさらに1%上昇し91%に達した。燃料と運転・維持コストを合計した運転コストも2000年には1.74セント/kWhとなり、最も運転コストの低い電源としての地位を保った。なお、資本コストを含めた総発電コストは約2.25セント/kWh。既存炉の運転実績が向上していることやブッシュ政権が2001年5月に発表した「国家エネルギー政策」をはじめエネルギー省(DOE)の第4世代炉計画など、政府が原子力開発を支援していることから、新規建設にむけた期待が高まっている。
2.住民投票
 反原子力グループは1970年代から1980年代にかけて、州レベルで原子力の是非を問う住民投票を実施する活動を行った。1976年には、カリフォルニア州、アリゾナ州、コロラド州、モンタナ州、オレゴン州、オハイオ州およびワシントン州の7州で原子カ発電所の新規建設禁止の是非を問う住民投票が実施された。いずれの投票も、新規建設の禁止に反対する票が過半数を占めた。なお、運転中の原子力発電所については投票の対象外とされた。結果は 表1 とおりである。その後の住民投票でも、反原子力主導の住民投票はほとんど失敗している。
 1980年にオレゴン州で行われた住民投票の結果、新規原子力発電所の建設認可のための条件として、(1)放射性廃棄物処分場の操業、(2)新規発電所に対する州レベルの合意が賛成多数で認められた。また、同年のモンタナ州での住民投票では、例外付きながら、同州での放射性廃棄物の処分を禁止する条例の制定について賛成が反対をわずかに上回った。これにより、同州でのウラン採鉱および精錬も禁止された。
 カリフォルニア州ランチョセコ原子カ発電所の閉鎖が問われた住民投票は、州レベルではなく、サクラメント公営電力(SMUD)を巻き込んだ地域レベルの住民投票だった。1988年に実施された住民投票では、SMUDに対して同発電所の運転を認める結果となったものの、1989年の住民投票では、同発電所の閉鎖を求める投票が53%対47%と上回った。なお、投票後の分析調査によると、投票者は「反原子力」というよりも原子力発電にかなり好意的であったが、SMUDの経営陣に対する不満が同発電所の閉鎖を支持した要因となったことが明らかになった。
3.世論調査動向
 原子力エネルギー協会(NEI:Nuclear Energy Institute)が2001年10月に実施した世論調査によると、原子力エネルギーを支持し、安全と考える米国人の割合は、過去最高レベルに達している。原子力発電所が安全であると考える米国人の割合は66%と、2000年の57%や1984年の35%以下より大幅に上昇した( 図1 )。原子力エネルギーの利用に賛成する割合は65%にのぼり、1980年代初めに始まった一連の調査の中で最も多くの支持を得た( 図2 )。NEIでは、原子力発電に対する国民の信頼は、2001年9月11日のテロ攻撃やその後に沸き起こった原子力施設が攻撃目標になるという懸念によって揺らいでいない現れであると分析している。
 原子力発電所を増設すべきであるという質問には、65%が強い同意を表明した。これは、エネルギー供給に対する国民の関心が最高潮であった2001年3月の調査(66%)より低いが、2年前(42%)より23%も上昇している( 図3 )。「将来原子力発電所をもっと建設すべきである」という意見に「強く」または「ある程度」賛成すると答えた人の割合を地域別に見ると、中西部(64%)、南部(61%)、西部(57%)が多く、北東部(49%)はそれほど多くなかった。また、66%が既存の原子力発電所サイトに新規原発を増設するのは支持できると答えた。一方、原子力エネルギーに強く反対する人の割合は、2000年の16%から14%に下がった。
 米国の将来のエネルギー需要をまかなう上で、原子力発電が重要な役割を果たすと回答した人の割合も1992年以来の質問の中で最も高い74%に達した( 図4 )。国内の大きな流れとなっている原子力発電所の運転認可(ライセンス)の延長については、84%の人が「安全基準をクリアーできる原子力発電所の運転認可は更新すべきである」と回答した。
 なお、NEIの調査は1,000人の成人を対象としており、プラスマイナス3ポイントの許容誤差がある。
<図/表>
表1 米国で実施された反原子力住民投票
図1 米原子力エネルギー協会世論調査:運転中の原子力発電所の安全性に関する設問
図2 米原子力エネルギー協会世論調査:原子力エネルギーの利用に関する設問
図3 米原子力エネルギー協会世論調査:「原子力発電所を増設すべき」と回答した割合
図4 米原子力エネルギー協会世論調査:「米国の将来のエネルギー需要をまかなう上で原子力発電が重要な役割を果たす」と回答した割合

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
アメリカの原子力政策および計画 (14-04-01-01)
アメリカの原子力発電開発 (14-04-01-02)
アメリカの原子力開発体制 (14-04-01-03)
アメリカの核燃料サイクル (14-04-01-05)
アメリカの電気事業および原子力産業 (14-04-01-06)

<参考文献>
(1) (社)日本原子力産業会議:世界の原子力発電開発の動向 1999年次報告(2000年5月23日)
(2) (社)日本原子力産業会議:世界の原子力発電開発の動向 2000年次報告(2001年6月22日)
(3) (社)日本原子力産業会議:原子力年鑑 2001/2002 p308−321(2001年11月)
(4) 日本原子力産業会議:原産マンスリー No.12、(1996年9月)p.11−16
(5) 米国原子力エネルギー協会(NEI)ホームページ:(2002年1月31日)
JAEA JAEAトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ