<大項目> 海外情勢
<中項目> アジア各国
<小項目> マレーシア
<タイトル>
マレーシアの国情と原子力開発 (14-02-08-01)

<概要>
 マレーシアはエネルギー資源に恵まれているが、近年は国内の電力消費量の急速な伸びによって発電用の化石燃料消費量が増大しつつあり、生産量に占める輸出量の割合が低下する傾向にある。そのため、マレーシア政府は外貨獲得の貴重な収入源となっている石油の輸出量を長期にわたって維持することを目指し、発電用には天然ガス、水力、石炭等を利用し、特に石炭利用比率を増やして電源の多様化を図る政策をとっている。原子力に関しては医学、農業、工業、医療など多くの分野で放射線利用が行われている。原子力発電については、2011年1月にマレーシア原子力発電公社(MNPC)が首相府の下に設置され、原子力を持続可能な高所得経済国家の実現に資するものと位置づけ、安全確実な原子力平和利用計画のための包括的基盤の確立を目指している。
<更新年月>
2013年12月   

<本文>
1.エネルギー政策および原子力計画
 2012年の統計によると、マレーシアの総発電設備容量は26.4GWであり、その内訳(電源構成)は天然ガス、石炭、石油がそれぞれ約51%、35%、3%、残りは水力10%、その他再生可能エネルギー等1%である。このように発電容量は化石燃料によるもの(火力発電設備)が大部分を占める。発電電力量は、2000年に60TWh、2011年に113TWhであり、過去11年間に72%増加した。発電電力量の内訳は、石炭45%、天然ガス43%、水力6%であり、全体の約90%を火力発電が占めている。
 そこで、エネルギー・セキュリティの観点から、石油と天然ガスの利用比率を引き下げつつ、電源の一層の多様化を図ることを目指している。実際、総発電設備容量における天然ガス火力発電の占める割合は、1995年、2000年、2005年、2011年においてそれぞれ約68%、79%、61%、51%と変化し、また、石油火力発電は11%、5%、3%、3%と約15年間で7割以上減少した。これに対し、石炭火力発電は10%、8%、30%、35%と3倍以上に増えてきた。マレーシア全体でみると水力発電が全発電量に占める割合はわずかであるが、サラワク州では現在35%を占めており、2020年までに80%まで増強する予定である。2001年に300MWの水力発電所が完成した。
 マレーシアの電源は上記のとおり、天然ガス、石炭、水力、石油で構成されているが、石油は近い将来に純輸入国となる可能性があり、天然ガスも2018年前後に生産減少が予測されるために、マレーシア政府は将来の選択肢として原子力発電の導入を検討している。2011年3月の福島第一原発事故の直後には一時的に原子力発電計画に対して慎重姿勢に転じたが、その後、再び従前どおりの検討を進めている。
2.原子力開発
2.1 原子力開発体制の変遷
 マレーシアの原子力開発は、1972年に首相府の下に原子力応用センター(CRANE)が設立されたことで本格的にスタートし、このセンターは翌年に原子力研究センター(PUSPATI)と名称変更された。1982年にはPUSPATIで、米ゼネラル・アトミック(GA)社製のTRIGA-2型炉(1,000kW)が臨界に達した。
 1983年に、PUSPATIは首相府に置かれたまま改組・強化され、原子力庁(UTN)に昇格した。UTNは、原子力研究開発をする一方で、ラジオアイソトープの製造・販売なども担当することになった。1989年にはカナダ原子力公社(AECL)製のコバルト60線源を用いた大型照射施設(SINAGAMA:200万Ci、約7万4千テラベクレル)が完成して医療用具の滅菌も行っている。その後1990年にUTNの監督官庁は科学技術環境省に移り、1994年には民間活力を導入するための機構改革が実施され、UTNの名称がマレーシア原子力技術研究所(MINT:Malaysian Institute for Nuclear Technology Research)に変更された。さらにMINTは2006年9月にマレーシア原子力庁(Malaysia Nuclear Agency、MNA)として改組された。なお、UTNの規制部門は1985年に独立して原子力許認可委員会(AELB)となった。
 MINTは1996年に天然ゴムラテックス放射線加硫(RVNRL)施設と椰子油滓の放射線処理による動物飼料製造(STERIFEED)施設の2つのパイロットプラントを完成させたが、これらは1998年に開所したMINTテクノパークの構想の一環として、技術移転計画の先駆けとなった。なお、MNAは科学技術革新省(MOSTI)の管轄下にある。MNAは引き続き、医療技術、水資源・廃棄物・環境、農業技術、非破壊検査等の産業技術、材料技術、加速器等の分野で研究開発を進めている。
 図1にマレーシアにおける原子力開発体制を、図2に原子力庁の組織図を示す。
2.2 原子力計画実施機関の発足と原子力発電
 マレーシアでは2009年6月に原子力開発運営委員会(NPDSC)が発足し、2010年7月に政府が原子力開発政策の採用を決定した。同年10月には経済変革プログラム(ETP)が立ち上げられ、12月には原子力計画実施機関(NEPIO)が設立された。さらに、2011年1月にマレーシア原子力発電公社(MNPC)が首相府の下に設置され、NPSDCはMNPCに置き換えられた。MNPCの組織図を図3に示す。MNPCは原子力を持続可能な高所得経済国家の実現に資するものと位置づけ、所定の時間と予算を考慮し、透明性を確保しつつ、安全確実な原子力平和利用計画のための包括的基盤の確立を目指している。また、2021年頃に初号機運転を開始することを予定している。
3.電力事情
3.1 電気事業体制
 マレーシアの電気事業体制はかつて国家電力庁(NEB)が半島マレーシア、サラワク電力供給公社(SESCO)がサラワク州(ボルネオ島西部)、サバ電力庁(SEB)がサバ州(同島東部)などを供給エリアとし、発電から配電までの電気事業を一括して担当していた。マレーシア政府は1980年代から電気事業の民営化に着手し、NEBは1990年にテナガ・ナショナル社(TNB)として100%政府出資の特殊法人となり、その後の1992年にクアラルンプール証券取引所に上場し、株式の25%を民間に開放した。
 また、1990年の電力供給法に基づき、規制部門としてエネルギー通信郵政省に電力供給規制局が新設された。同局は発・送・配電の事業ライセンスを発給する権限を持ったため、独立系発電事業者(IPP)はライセンスを取得すれば、TNBなどに売電することが可能となった。
3.2 電力需給バランスと電源開発計画
 2011年における半島マレーシア(TNB)の販売電力量(IPPの購入電力も含む)は93,713GWhであった。同年における販売電力量の用途別内訳は、家庭用20.2%、商業用33.9%、工業用44.2%、公共照明用1.2%、鉱業用とその他の合計で0.5%であった。半島マレーシアに電力を供給するTNB以外の2011年における販売電力量は、サバ州のサバエレクトリシティー社が4,276GWh、サラワク州のサラワクエレクトリシティーサプライ社が6,486GWhであった。TNB社の販売電力量が他の2社に比べて圧倒的に大きいため、マレーシア全体の販売電力量合計の用途別内訳は、TNB1社の内訳と大きな差異はない。
 上記の経済変革プログラム(ETP)によると、2020年までに高所得国家になることを想定すると、経済成長とともに電力のピーク需要が年率3.4%で増加し、2020年には2,900万kWに到達する見込みである。この需要増加とその間のプラントの退役を考慮すると、2020年までに1,100万kWの設備の新設が必要になる。化石燃料については、自然保護、供給力及び価格の問題がある。このような状況を踏まえて、ETPはエネルギー関連の様々なプロジェクト、石油・天然ガスの探査活動の強化、枯渇油田の回復、エネルギー効率の向上、再生可能エネルギー発電の増加、原子力オプション等を検討している。
(前回更新:2006年6月)
<図/表>
図1 マレーシアにおける原子力開発体制
図2 マレーシア原子力庁(MNA)組織図
図3 マレーシア原子力発電公社(MNPC)組織図

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
アジア原子力協力フォーラム(FNCA) (13-01-03-22)

<参考文献>
(1)日本原子力産業会議(編集発行):原子力年鑑2001-2002(2001年11月)、p.296-297、同2006年版(2005年10月)、p.169-172、同2012年版(2011年11月)、p.167-169、同2013年版(2012年11月)、p.180-182
(2)海外電力調査会:海外諸国の電気事業、第一編、1998年、(1998年3月)、p.353-369
(3)日本原子力産業会議:アジア諸国原子力情報ハンドブック(2001年3月)、p.139、142
(4)海外電力調査会(編集発行):海外電気事業統計2013年版(2013年11月)、p.337-349
(5)海外電力調査会(編集発行):海外諸国の電気事業、第1編、2003年(2003年3月)、p.495-520
(6)TNB2005年度年次報告、

(7)マレーシア原子力庁(MNA):
(8)米国エネルギー情報局:http://www.eia.gov/countries/cab.cfm?fips=MY
(9)日本原子力研究開発機構:マレーシアにおける原子力人材まとめ,

(10)D. R. Markandu: Roles & Organization of the NEPIO in Malaysia, Technical Meeting on Topical Issues, 11-14 February 2013, IAEA, Vienna
(11)日本原子力産業協会:マレーシアの原子力発電導入に向けての動き、
http://www.jaif.or.jp/ja/asia/malaysia/malaysia_data.pdf
(12)坂本茂樹(JOGMEC):マレーシア:LNG輸出大国のパラドックス(2010年3月)

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