<本文>
1.設立目的と事業
(一社)海外電力調査会(JEPIC:Japan Electric Power Information Center, INC)の設立目的は、日本の電気事業の健全な運営・発展、経済の発展、国民生活の向上及び国際協力の推進への寄与である。本会は、その目的を達成するため次の事業を行う。
(1) 海外の電気事業に関する調査研究、
(2) 電気事業に関する海外の関係機関、団体との交流及び協力、
(3) 海外の電気事業に関する情報・資料の収集・分析及び提供、
(4) 海外の電気事業に関する報告会、研究会等の開催、
(5) 海外に対する日本の電気事業に関する情報の提供、及び
(6) 前各号に掲げるもののほか、本会の目的を達成するために必要な事業。
2.歴史概要
表1に本会の設立からの推移を示す。当初は9電力会社と電源開発(株)が会員となって1958年に設立された。その後、1974年に日本原子力発電(株)が、2001年に沖縄電力(株)が加わった。
1974年にワシントン事務所、1979年には欧州事務所、2002年には北京事務所を開設し事業の推進を図った。2012年には社団法人から一般社団法人に移行した。
3.組織と資金
3.1 会員
本会は、定款で会員資格を電気事業法上の一般電気事業者と卸電気事業者と定めており、2014年には10電力会社と2卸電気事業者の12社が会員である。
1995年の改正電気事業法により、電力の卸供給を行う独立系発電事業者と発電所を設置し電気を供給している地方公共団体の公営電気事業者が発足し、特定の供給地点における需要に応じ電気を供給する特定電気事業が始まった。将来は、当調査会の改組・拡大と事業内容の変更等が予想される。
3.2 組織と予算
(1)組織
図1に本会の組織を示す。本会には、会長を含め12〜19名の理事、2〜3名の監事を置く事ができる。平成26年度には16名の理事と2名の幹事が置かれ、役職員は約100名である。理事会は、事業計画及び事業報告、予算及び収支報告、定款の実施細則等を承認する。総会は、年一回開催され、理事及び監事の選任・解任、財政報告、会費の分担、定款の変更、解散・財産の処分等を検討し決定する。ワシントン、欧州及び北京の各海外事務所は、調査研究、国際交流等の事業を進める重要な拠点である。
(2)予算
平成26年度の収入は、会費約9.7億円、受託事業費約1.6億円等を合わせ約11.7億円を計上している。
3.3 事業計画
事業計画は年度ごとに立案される。事業は調査・交流に関するが、(1)調査研究事業と(2)国際協力事業に大別される。「調査研究事業」は調査研究活動と国際交流活動に分けられ、「調査部」が主に分担する。「国際協力事業」は国際協力活動と国際交流活動に分けられ、「電力国際協力センター」が主に分担する。
(1)調査研究事業
・調査研究活動:国内の電気事業が直面している諸課題を念頭に、欧米の電気事業の動向調査を進めるとともに、アジアを中心とした新興諸国のエネルギー・電力分野の課題、動向等についての情報収集と取りまとめを行う。合わせて、エネルギーと環境政策等を調査する。
平成26年度の重点調査項目は、1)エネルギーと環境政策、2)原子力利用、3)再生エネルギー利用、4)電気事業経営、5)電気市場、6)電力供給と電力設備、及び7)料金と需要家サービス、である。
・国際交流活動:欧米諸国を中心とした活動である。電気事業に関する海外の関係機関、団体との交流を通じて情報交換等を行う。そのため、欧米諸国の電力業界の主要団体との定期会合、国際会議、シンポジウムにより、情報交換等を進めている。特に米国エジソン電気協会(EEI)、欧州電気事業連盟(EURELECTRIC)、米国原子力協会(
NEI)、米国原子力規制委員会(
NRC)、米国電力中央研究所(
EPRI)、国際エネルギー機関(
IEA)、ドイツエネルギー・水道事業連合(BDEW)、フランス電力(
EDF)等と親密な交流を図っている。
(2)国際協力事業
開発途上国の電力事業に寄与する事業である。
・国際協力活動:開発途上国の電力基盤整備に寄与するため、会員会社、関係団体及び政府関係機関の協力を基に、ASEAN(東南アジア諸国連合)における電気事業に関して研修生受入や専門家派遣(現地セミナー)を開催し、また、国際協力機構(JICA)からの協力要請を受け技術協力事業を行っている。原子力発電所の安全管理に関する技術協力に関しては、経済産業省からの委託を受けた「原子力発電所安全管理等人材育成事業」がある。
・国際交流活動:電気事業に資するために、中国、ASEAN、ロシア・ウクライナの原子力事業者等の発展途上国の関係機関、団体との情報交換や友好関係を深めている。
4.活動の成果
4.1 調査研究事業の成果
これまでに、1次エネルギー消費構成と自給率、1次エネルギー消費量の推移、発電電力量の電源構成、発電電力量の推移、発電設備の電源構成、消費電力量の部門別構成、温室効果ガスの削減目標と実績、1人当たりの二酸化炭素排出量と発電量1kWh当たり二酸化炭素排出量、世界の主要発電所、主要国の電圧と周波数、の項目に関する調査結果がまとめられている。また、米国、カナダ、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ロシア、スウェーデン、中国、韓国、インドなど、各国の電気事業の概況報告がある。
これら調査研究結果は、日本語・英語版の書籍「海外諸国の電気事業」にまとめられ出版されている。
4.2 国際交流事業の成果
欧米の電力業界の主要団体との定期会合、国際会議、シンポジウムに参加して、情報交換と人的交流を進め、本会の事業推進を図っている。
また、経営や技術に関する意見・情報交換のため、ロスエネルゴアトム(ロシア)、エネルゴアトム(ウクライナ)、タイ発電公社(EGAT)、国網信息通信有限公司(中国)、ASEAN電気事業者連合組織(HAPUA)などの電気事業者との定期交流がある。
4.3 国際協力事業の成果
ASEANとの協力、JICAへの協力及び原子力安全協力に分けられる。
(1)ASEAN(東南アジア諸国連合)の電気事業者との協力
ASEAN諸国の電気事業関連の人材育成に協力し、1991(平成3)年度から受入研修と協力相手国での現地セミナーを行っている。2013(平成25)年度末までに、受入研修を90回開催し520名が研修を終えている。また、現地セミナーを101回開催し、4,368名が受講した。
図2に夫々の国の事情等を勘案した対象国と受入研修のスキームを、
図3に現地セミナーの開催状況を示す。
(2)JICA(国際協力機構)への技術協力
JICA(国際協力機構)の委託により開発途上国の電力に関して以下の協力を進める。
1)研修員の受入
JICAの委託により開発途上国からの研修員を受入れ、電力分野における専門知識や技術の移転を図っている。研修員の受入れは、複数の国が参加する「課題別研修」と特定国を対象とする「国別研修」に分けられる。「課題別研修」はJICAの研修テーマやプログラムに基づく研修である。「国別研修」は、対象国の具体的な要請に基づいた研修テーマやプログラムである。1958(昭和33)年度から2013(平成25)年度末までの国別の研修員受入人数は、2,784名に達している。
平成25年度は、課題別研修 5コースに65名、国別研修 3コースに28名、合計93名の研修生を受入れた(
表2)。
2)専門家の派遣
JICAを通して開発途上国に電力会社の専門家を派遣し、技術指導や政策助言を中心とする協力を行っている。1989(平成元)年度から2013(平成25)年度末までに 1年以上の長期派遣に64名の専門家を、1年未満の短期派遣に118名の専門家を推薦している。
平成25年度には、3名をネパール、ミャンマー及びラオスに長期派遣しており、第三国研修(ベトナム、ラオス、カンボジア及びミャンマー向け)には1名を短期派遣している。
3)原子力安全に関する技術協力
1985(昭和60)年度から、世界的な原子力安全の確保・向上に関する政府の活動を積極的に支援するため、補助・委託事業等を基に2013(平成25)年度末までに
表3に示す技術協力を進めた。またこの間に、2,354名の研修生を受入れ(
図4)、延べ569名の専門家を派遣した(
図5)。平成25年度には、協力打合せ等のため17カ国に延べ284名の関係者を派遣している。
(前回更新:2006年6月)
<図/表>
表1 海外電力調査会の設立と推移
表2 国際協力事業の課題別研修と国別研修、平成25年度の実績
表3 原子力安全に関する技術協力
図1 海外電力調査会の組織
図2 国際交流事業の受入研修のスキームと対象国
図3 現地セミナーの開催状況
図4 原子力安全に関する技術協力の研修生受入実績
図5 原子力安全に関する技術協力の専門家派遣実績
<関連タイトル>
電源開発株式会社(J-POWER) (13-02-02-14)
日本原子力発電株式会社(JAPC) (13-02-02-13)
電気事業連合会 (13-02-02-12)
日本の原子力に関する国際協力 (13-03-03-01)
エネルギー環境分野における日中技術協力の動向 (13-04-02-13)
<参考文献>
(1)(一社)海外電力調査会、ホームページ
http://www.jepic.or.jp/
(2)(一社)海外電力調査会、定款
(3)(一社)海外電力調査会、平成25年度事業報告
(4)(一社)海外電力調査会、国際協力事業