<大項目> 国際協力・原子力関連機関
<中項目> 海外の原子力関連機関
<小項目> 政府関連機関(NRC・EPA・ORNL等)
<タイトル>
アイダホ国立研究所(INL) (13-01-02-14)

<概要>
 アイダホ国立研究所(Idaho National Laboratory)は、1949年の創設から長い原子力開発の歴史を経て、1997年にはDOEの下でアイダホ国立工学環境研究所となり、2005年には、本名称に改称された。職員3,900名は、大学や工業関係者、客員研究員等と共に原子力開発や他の多様な研究開発に従事している。施設はアイダホ州アイダホフォールの890平方マイルの敷地にあり、新型試験炉コンプレックス、物質・燃料コンプレックス、および研究・教育キャンパスの三地区に大別できる。2009−2018年の新研究計画が始まり、先進的な原子炉と燃料サイクルの研究・開発と実証(RD&D)、国と国土の保安に関する研究開発、炭素消費が少なく安定で清浄なエネルギーのRD&Dなどが進められている。
<更新年月>
2009年02月   

<本文>
1.歴史と施設
(1)歴史
 アイダホ国立研究所(INL:Idaho National Laboratory)には長い歴史がある。1949年に、国立原子炉試験場(NRTS:National Reactor Testing Station)として設立された。1975年に原子力委員会(Atomic Energy Commission)が原子力規制委員会(NRC)と原子力研究開発庁(ERDA:Energy Research and Development Administration)に分かれた際には、ERDA研究所と称された。1977年には国立技術研究所(Idaho National Engineering Laboratory)に変わり、1997年にはDOEの下でアイダホ国立工学環境研究所(INEEL)となり、2005年には、アイダホ国立研究所(INL:Idaho National Laboratory)となった。
(2)組織
 DOEとの契約でバッテルエネルギー同盟(Battelle Energy Alliance)が研究所を運営・管理している。此処では科学者、技術者及び支援・事務職員3,900名と、大学や工業関係者、客員研究員等が働いている。図1は組織の概要を示す。研究所長の下には、副所長3名、準所長2名、15名の部長(Director)等が業務を分担している。
(3)施設
 研究所は、アイダホ州アイダホフォールの東方30マイルにある。面積は約890平方マイル(2,305平方km)。ここは、新型試験炉(Advanced Test Reactor:ATR)コンプレックス、物質・燃料(Material & Fuels:MF)コンプレックス、および研究・教育(Research & Educational:RE)キャンパスの三地区に大別できる。
1)新型試験炉(ATR)コンプレックス:ATRの最高熱中性子束は1×1015cm−2s−1、速中性子束は5×1014cm−2s−1、66箇所で照射できる(図2)。照射後の分析及び試験施設が整備されている。ATRは次世代の原子炉材料開発に不可欠であり、医療用RIの製造にも利用されている。2009年には新しい放射化学研究施設が完成する予定である。
2)物質・燃料(MF)コンプレックス:新型燃料や、電気化学を利用する高温再処理技術、宇宙で利用する放射性壊変を利用した原子力電池の開発はここで進めている。
3)研究・教育(RE)キャンパス:研究者は十以上の施設でロボット工学、遺伝学、生物学、化学、金属工学、計算科学、水力学等の分野の最先端の研究を進め、スーパーコンピューターがそれを支援している。そのほか、先進的エネルギーや国家保安の研究施設、精密機器工場やガラス工作工場等もここにある。
2.2009−18年の研究・開発戦略
(1)本務(Mission)
 米国には安全で競争力があり持続可能なエネルギー源が必要であり、また国の安全を守る必要がある。そこで、研究所は技術的に到達可能であり、経済性に優れ環境保護の観点からも、持続的に利用できる原子力エネルギー技術の開発を目指している。
(2)戦略の目標
 以下の5分類、10項目の目標が掲げられている。
第1分類:原子力開発
1)先進的な原子炉と燃料サイクルの研究・開発と実証(RD&D):将来の原子力エネルギーシステムは安全性と経済性に優れ、核不拡散と持続的利用に適する事が望ましい。原子炉開発には、ガス冷却高速炉等の第4世代の原子炉がある。また先進的な燃料サイクルでは長半減期の超ウラン元素(TRU)を減らす研究開発がある。
2)官民協力による原子力エネルギー技術の開発・実証(D&D):技術の開発と実証により将来のエネルギー産業のセンターを目指している。アイダホ国立研究所(INL)が民学官の協力で取り組む次世代型プラント(NGNP)の開発には、発電、熱利用及び水素製造に利用できる高温ガス炉がある。
第2分類:多様化プログラム
3)国と国土の保安:テロリズムと原爆の脅威の戦いには、軍事や法制の整備だけでなく核物質の拡散を防ぐ必要がある。アイダホ国立研究所(INL)は、技術力を駆使して核燃料サイクルに関する安全・保安に対処できる研究開発を進める。対処法には動的(kinetic)及び非動的(non—kinetic)な方法がある。非動的方法について、プロセス制御システム、サイバー保安、ワイアレス通信等の技術の開発・試験を進める。
4)エネルギー関連環境技術の開発:炭素消費が多く不安定なエネルギー状態から、炭素消費が少なく安定で清浄なエネルギー消費への研究開発と実証(RD&D)を進める。このRD&Dには、原子力、化石燃料、太陽エネルギー、バイオ燃料等を含んだ包括的なエネルギーシステムの開発、環境保全と水資源確保等が含まれる。原子力分野には、使用済燃料放射性廃棄物の処分の技術開発がある。
第3分類:先進的な施設と設備の充実
5)先進的研究開発の施設の整備:アイダホ国立研究所(INL)の本務の達成には、先進の施設・設備と優れた研究者が必要であり、新型試験炉(ATR)コンプレックス及び物質・燃料(MF)コンプレックスの施設・設備の整備を進める。また、照射後試験装置、新型燃料開発に利用する放射化学研究施設の新設等の多くの計画がある。
6)先進的原子力多様化プログラム研究:研究所の研究開発は、研究所特定研究(Laboratory Directed Research and Development:LDRD)方式と設備の整備で拡大を図る。
7)戦略的研究開発の協力:民間、大学及び他の研究所と協力し、本務遂行に当たる。また、技術移転、企業化を進める。
第4分類:人材の獲得・育成
8)人材機構の設置:研究所の本務達成に必要な人材の獲得、育成、維持方法を検討する。
第5分類:安全な施設運転と地域サービス
9)効率的運営と企業化:健全な運営と企業化の為に、効率の低い官の介在を減らし安全性とRD&Dの増強を図る。このため、施設安全のマネージメントを、組織、方式、構成要素等を考慮し改善する。また、運営と法規・制度を定期的に見直す。
10)大衆の原子力への信頼増大
(前回更新:2004年2月)
<図/表>
図1 INLの組織の概要(2009年1月)
図2 INLのATRと周辺施設

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
オークリッジ国立研究所(ORNL) (13-01-02-04)
米国エネルギー省(DOE) (13-01-02-08)

<参考文献>
(1)INLホームページ:about INL,organization,,,
(2)INL:Strategic Plan,2009−2018,
(3)INL,ATRの利用者ガイド:ATR National Scientific User Facility,
(4)松井ほか、原子力学会誌、45(3)、161−172、第4世代原子力システム技術開発
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