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<概要>
 第一次石油危機後の1974年2月にキッシンジャー米国務長官(当時)の提唱を受け、先進石油消費国が協議した結果、同年11月15日付けの経済協力開発機構(OECD)理事会を経て、OECDと直結した自律機関として、国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)が設立された。加盟国は、2008年9月現在で、OECD加盟国のうちアイスランドとメキシコを除く28か国である。
 設立当初は、エネルギー資源の備蓄、緊急融通システム整備等の直接的手段および省エネ、代替エネルギー開発等の間接的手段を通じて、加盟国の短期および中長期のエネルギー事情を改善することを主目的としてきた。しかし、その後の国際的な状況の変化を反映し、天然ガス、石炭、原子力などの石油以外のエネルギー源への対応、中国、インド、ロシア等主要非加盟国との協力、気候変動問題に対処するためのエネルギー技術面での貢献など、従来は想定されていなかった活動も増加している。
<更新年月>
2009年01月   

<本文>
1.設立経緯
 1973年から74年にかけての第一次石油危機後、1974年2月にキッシンジャー米国務長官(当時)の提唱を受け、先進石油消費国が協議した結果、同年11月15日付けの経済協力開発機構(OECD:Organization for Economic Cooperation and Development)理事会を経て、OECDと直結した自律機関として、国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)が設立された。
2.加盟国・組織
 OECD加盟国のうち、90日分の石油備蓄、関連法制など緊急時対応システムへの参加能力を整備し、かつIEA共通目標(Shared Goal)等の目標や戦略を共有する国が加盟している。
 2008年9月現在OECD/IEAの加盟国は、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、日本、韓国、ルクセンブルク、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スロバキア、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、イギリス、アメリカ合衆国の28か国(ポーランドは、2008年9月25日に正式加盟)。IEA未加盟のOECD加盟国はアイスランド、メキシコの2か国である(図1参照)。
 最高意思決定機関は加盟国代表からなる理事会で、その下に各種作業部会・委員会が設置されている。また、事務局本部(パリ所在)には、市場・緊急時対策局、エネルギー効率・技術局、地球規模エネルギー対話局の3つの局が設置されている。職員はエネルギー問題と統計学の専門家からなり、総数約190名である(図2参照)。
3.目的と活動
 設立当初は、エネルギー資源の備蓄、緊急融通システム整備等の直接的手段および省エネ、代替エネルギー開発等の間接的手段を通じて、加盟国の短期および中長期のエネルギー事情を改善することを主目的としてきた。しかし、その後の国際的な状況の変化を反映し、天然ガス、石炭、原子力などの石油以外のエネルギー源への対応、中国、インド、ロシア等主要非加盟国との協力、気候変動問題に対処するためのエネルギー技術面での貢献など、従来は想定されていなかった活動も増加している。さらに2005年以降、G8サミットプロセス関連の活動も多くなっている。
 現在の主要な活動を分類すると以下の通り(( )内は担当常設作業部会・委員会)。
(1)緊急時対策・準備(緊急時問題常設作業部会:SEQ)
 1974年に締結の国際エネルギー計画(IEP:International Energy Program)合意に基づき、緊急備蓄水準の策定・管理、緊急融通システムの管理発動
(2)石油市場対策(石油市場問題常設作業部会:SOM)
 平常時の情報収集、国際石油会社(メジャー)等との協議・協調
(3)エネルギー政策協力(長期協力問題常設作業部会:SLT)
 加盟国・非加盟国に対するエネルギー政策(エネルギー源多様化、価格政策等)の勧告
(4)エネルギー技術協力(エネルギー研究技術委員会:CERT)
 石油依存度低減のための省エネ技術、代替エネルギーの研究開発の促進等
(5)非加盟国との協力促進(地球規模エネルギー対話常設作業部会:SGD)
 主要生産国および消費国との協力・調整、これら諸国への政策・技術の提言
(6)G8プロセスへの対応(各委員会・作業部会)
 英国スコットランド、グレンイーグルズで2005年(平成17年)7月開催のG8首脳会合での要請を受け、気候変動・クリーンエネルギー、持続可能な開発に関し、グレインイーグル計画を推進している。また、北海道洞爺湖で2008年(平成20年)7月開催のG8首脳会合では、3年間の活動成果として、グレンイーグルズ・サミットで委託された気候変動問題に貢献する技術的政策提言を報告した。
4.最近の動きと今後の方向性
(1)奇数年開催の閣僚理事会
 2007年開催の閣僚理事会では、(1)緊急時対応能力の向上、(2)主要生産国における政治的・地政学的問題への対応、(3)環境面で持続可能なエネルギー利用のための政策と技術について議論され、省エネ推進や非加盟国との協力のさらなる強化等を含むコミュニケを採択した。
(2)世界経済危機のもと、エネルギー利用・高効率化やクリーンエネルギー技術開発への政策提言
 2030年までのエネルギー動向、石油・ガス生産の見通し、気候変動政策におけるエネルギー役割について調査し、報告した2008年WEO(World Energy Outlook)では、気候変動との関連で、炭素捕獲蓄積装置(CCS : Carbon Capture and Storage)を装備した火力発電所の必要性を強調している。また、IEAのプレス・リリース等でも、世界経済を刺激し、気候変動に効果的な“クリーンエネルギー・ニュー・ディール”のひとつとして、技術が重要性を提言している。
(3)わが国との関係
 石油供給の殆どすべてを外国に依存するわが国にとって、IEAの活動は、エネルギー安全保障上、重要なものである。例えば1991年の湾岸戦争や2003年の対イラク戦争時の石油市場は1970年代の石油危機に比べて大きく改善された。また、2005年9月の協調放出でもその重要性が確認された。わが国は、IEA諸活動に積極的に参加しており、日本の分担率は米国に次ぐ第2位(2007年度分担率は17.617%)となっている。
<図/表>
図1 OECD/IEA加盟国
図1  OECD/IEA加盟国
図2 OECD/IEAの組織機構図
図2  OECD/IEAの組織機構図

<関連タイトル>
経済協力開発機構(OECD)原子力機関(NEA) (13-01-01-10)

<参考文献>
(1)OECD/IEAホームページ:About IEA:
(2)OECD/IEA:”World Energy Outlook 2008”,ISBN 978−92−64−04560−6.
(3)OECD日本政府代表部:OECDの基礎知識、国際エネルギー機関(IEA)
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