<大項目> 国際協力・原子力関連機関
<中項目> 海外の原子力関連機関
<小項目> 国際機関(IAEA・OECD等)
<タイトル>
国際チェルノブイルプロジェクト (13-01-01-07)

<概要>
 1989年にソビエト社会主義共和国連邦(旧ソ連)から、国際原子力機関(IAEA)によるチェルノブイル事故で汚染した地域住民の安全性、放射線の影響対策の妥当性等を評価する調査・検討の希望が出た。これは、IAEA、世界各国の研究者、ヨーロッパ諸国、国連食糧農業機関(FAO)、国際労働機関(ILO)、国連放射線影響科学委員会(UNSCEAR)、世界保健機関(WHO)等の賛同を得て、「国際チェルノブイルプロジェクト(International Chernobyl Project)」が始まった。このプロジェクトは、1989年から1991年春まで土地の汚染状況、住民の被ばく状況、健康への影響などを検討し、当時のソ連の採った防護措置の妥当性を検証し、1991年5月に報告会を開催し終了した。
<更新年月>
2008年12月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.プロジェクトの始まり
 1989年に国際原子力機関(IAEA)に、ソビエト社会主義共和国連邦(旧ソ連:USSR)から、チェルノブイル事故で飛散した放射性物質で汚染した地域の住民が安全に暮らせて、影響を減らすために採る方法の有効性を評価するため、当時のソ連を含めた国際的な専門家会議を組織する希望が出た。この希望は、IAEAのみならず25か国の200名の研究者、ヨーロッパ諸国、国連食糧農業機関(FAO)、国際労働機関(ILO)、国連放射線影響科学委員会(UNSCEAR)、世界保健機関(WHO)等の共感をよび、「チェルノブイリ事故によるUSSRの放射線影響:健康と環境への影響と保護方法の評価に関するプロジェクト」が始まった。これは簡略化して、「国際チェルノブイルプロジェクト(International Chernobyl Project)」と呼ばれた。
2.国際チェルノブイルプロジェクトの活動
(1)主目的:当時のソ連政府の政策に対する住民の不安を軽減するため、国際的な専門家が事故の影響を評価する。
(2)対象地域:白ロシア・ソビエト社会主義共和国(BSSR)、ウクライナ・ソビエト社会主義共和国(UkSSR)、およびロシア・ソビエト連邦社会主義共和国(RSFSR)の28の汚染地域、7つの立ち入り制限地域
(3)費用など:IAEAの予算は381,000米ドル、日本は20,000米ドルの印刷費を負担、ソ連は7,8人年の専門家と4,7人年の補佐役、専門家のソ連内の旅費を負担した。当時のソ連は外国人の旅行は制限されており、研究者が自由に旅行して調査できることから当時のソ連の意気込みが判る。そのほか各国政府、研究所、会社、科学者から医療機器や技術の提供があった。
(4)主な活動:1990年5月から12月までの間に、50の学術調査団、200人以上の専門家、25の国と7国際機関から派遣された20の国際研究所がソ連を訪れ、野外モニタリング、住民の健康調査等を行った。
 この調査では、8,000の個人線量計による外部被ばく調査、10,000の全身計測による内部被ばく調査、疫学調査に係る1,800の検査、100の追加健康診断、2,000の環境放射線量測定、1,000の大気、土壌、牧草、食品試料等の採集・分析を含んでいる。さらに、1,200名以上の医者、農業指導者、移住に関する行政関係者へのセミナーもあった。
 しかし、原子炉の清掃整備に従事した精算人(Liquidator)と呼ばれた人々は対象となっていない。
(5)活動期間:1989年〜1991年、1991年5月にウイーンで国際報告会議を開催
3.国際チェルノブイル計画の成果
(1)会議報告書
1)IAEA、「国際チェルノブイル計画報告会の予稿集」(1991)、THE INTERNATIONAL CHERNOBYL PROJECT, PROCEEDINGS OF AN INTERNATIONAL CONFERENCE, http://www-pub.iaea.org/MTCD/publications/PDF/Pub894_web.pdf
2)IAEA、「国際チェルノブイル計画報告会、科学技術報告書」(1991)、THE INTERNATIONAL CHERNOBYL PROJECT TECHNICAL REPORT、http://www-pub.iaea.org/MTCD/publications/PDF/Pub885e_web.pdf
3)IAEA、「国際チェルノブイル計画報告(概要)」(1991)、THE INTERNATIONAL CHERNOBYL PROJECT、AN OVERVIEW、http://www-pub.iaea.org/MTCD/publications/PDF/Pub884e_web.pdf
4)IAEA、プロジェクトの概要(1991)、The International Chernobyl Project,An Overview、http://www-pub.iaea.org/MTCD/publications/PDF/Pub884e_web.pdf
5)IAEA、「チェルノブイル事故の放射線影響」(2000)、国連科学委員会報告UNSCEAR 2000 report(Annex J:Exposures and effects of the Chernobyl accident)、詳細な技術報告書、http://www.unscear.org/docs/reports/annexj.pdf
(2)成果の概要
 このプロジェクトは、住民の不要な不安を鎮め、影響を早急に評価して行政の信頼性を得ることが目的であった。また対象の区域はきわめて広大であった。そのため必要な情報を得る十分な時間と経費の余裕も無く、徹底的に検討できなかった事柄もあった。
 しかし次の結論は、国際諮問委員会から妥当と評価された。
1)環境汚染:ストロンチウム90(図1)とセシウム137による詳細な汚染地図が作成された。飲料水や食品の放射性核種濃度は、国際ガイドライン以下であった。ホットスポットの調査はこの計画では除外された。
2)住民の放射線被ばく:外部被ばくは検出限界0.2mSv/2月であり、計算モデルの予測と一致していた。内部被ばくの全身測定から計算モデルの妥当性が示された。しかし、放射性ヨウ素の線量は個別に検証されなかった。
3)健康影響:汚染区域と居住区域の住民には、放射線被ばくによると見られる健康の変調は無かった。しかし、事故の不安、生活の変化などによるストレスによると見られる影響があった。小児の甲状腺被ばくによるガンの発生は将来増加すると推察された。しかし、将来の全ガンの発生率の増加は予測が難しかった。
4)防護:事故後に政府の採った防護措置は妥当であったと評価された。
<図/表>
図1 ストロンチウム90による詳細な汚染マップ

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<関連タイトル>
チェルノブイリ原子力発電所事故の概要 (02-07-04-11)
チェルノブイリをめぐる放射線影響問題 (09-01-04-10)
旧ソ連チェルノブイルから10年−放射線影響と健康障害−(OECD/NEA報告書) (09-03-01-07)
ウクライナ共和国チェルノブイル原子力発電所事故後の放射能対策 (09-03-02-06)
チェルノブイル原子力発電所事故特別報告書の概要 (10-03-02-07)

<参考文献>
(1)IAEA,The International Chernobyl Project,http://www-ns.iaea.org/projects/chernobyl.htm
(2)IAEA,Bulletin,“The International Chernobyl Project”,2,4-14(1991),
(3)平成3年原子力白書、第III部 資料 4.その他 (8)国際チェルノブイル計画概要(抜粋)、http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/hakusho/wp1991/index.htm
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