<概要>
発電所用ウラン燃料(新燃料)は、その成型加工工場から原子力発電所まで、専用の
輸送容器に
燃料集合体を収納し、A型(核分裂性)輸送物として、トラックによる陸上輸送または海上輸送が実施されている。
輸送にあたっては、必要措置を細かく定めた諸法令に基づき、輸送船舶、車両、輸送体制等について安全上問題のないことを十分確認の上、実施されている。陸上輸送では輸送隊列を組み前後に警備車を配しており、また、海上輸送では難沈構造等安全性に配慮した船が使用されている。
新燃料集合体から出る
放射線は弱く、また、それ自体が耐熱性、密封性にすぐれたものであるが、輸送容器についても法令に基づく試験を実施し、輸送時の衝撃や火災等に対して充分耐えられる構造であることが確認されている。
<更新年月>
2010年09月
<本文>
新燃料の成型加工工場から原子力発電所まで、専用の輸送容器に燃料集合体を収納し、A型輸送物(核分裂性)として、トラックによる陸上輸送または海上輸送が実施されている(
図1参照)。
輸送にあたっては、必要措置を細かく定めた諸法令(
図2)に基づき、輸送船舶・車両、輸送体制等について安全上問題のないことを十分確認の上、実施している。(陸上輸送では輸送隊列を組み前後に警備車を配しており、また海上輸送では難沈構造等安全性に配慮した船を使用している。)
発電所で使われるウラン燃料としては
BWR用と
PWR用がある。いずれも低濃縮ウランが酸化物の
ペレット状に加工され、金属(ジルカロイ)の被覆管に密封され、燃料集合体に束ねられたものである。成形加工工場から発電所までは、この形状でBWR燃料PWR燃料それぞれ新燃料集合体専用の輸送容器で輸送される。
BWR用燃料は、ウラン酸化物ペレットが密封された
燃料棒を束ねて正方格子状の配列(例えば8本×8本)の集合体にしたものである。全長は約4.5mであり、燃料の有効長は約3.7mで、燃料棒は長さ方向に適当な間隔で配置されたスペーサーにより支えられている。燃料棒には、外径約11mm、長さ約11mmのペレットが封入されている(
図3参照)。
PWR用燃料は、ウラン酸化物ペレットが密封された燃料棒を束ねて正方格子状の配列(例えば17本×17本)の集合体にしたものである。全長は約4.1mであり、燃料の有効長は約3.7mで、燃料棒は長さ方向に適当な間隔で配置されたスペーサーにより支えられている。燃料棒には、外径約8mm、長さ約14mmのペレットが封入されている(
図4参照)。
発電所用ウラン燃料(新燃料)の輸送容器は、新燃料集合体から出る放射線・熱が少ないため、遮蔽体は不要であり除熱能力の考慮が不要である。新燃料の輸送容器は、
図5及び
図6(BWR燃料集合体用)、並びに
図7及び
図8(PWR燃料集合体用)に示すように、外部容器と内部との間に緩衝体などを置き燃料集合体を保護している。
この輸送容器は、一般に、核燃料物質等の運搬に関する法令ではA型輸送容器の規制区分となっている。核分裂性の輸送物であるので、一般の試験条件に加えて厳しい条件での試験により輸送物(輸送容器に燃料を収納したもの)が変形したとしても
臨界にならないことが定められている(
表1参照)。
1999年以降の核燃料物質等の運搬物確認実績を
表2に示す。
(前回更新:1998年3月)
<図/表>
<関連タイトル>
BWR用ウラン燃料 (04-06-03-01)
PWR用ウラン燃料 (04-06-03-02)
六フッ化ウランおよび二酸化ウランの輸送 (11-02-06-03)
使用済燃料の輸送 (11-02-06-04)
わが国の核燃料物質輸送に係る安全規制 (11-02-06-01)
<参考文献>
(1)科学技術庁原子力安全局原子力安全調査室(監修):原子力安全委員会安全審査指針集、大成出版社(1994年10月)、p.942-969
(2)電気新聞(編):原子力ポケットブック2009年版、日本電気協会新聞部(2009年8月)
(3)原子力安全委員会:平成7年版原子力安全白書、大蔵省印刷局(平成8年7月)、p.66-73
(4)科学技術庁原子力安全局核燃料規制課ほか(監修):放射性物質等の輸送法令集1997年版、日本原子力産業会議(1997年1月)
(5)青木成文:放射性物質輸送のすべて、日刊工業新聞社(1990年6月)
(6)松岡 理:核燃料輸送の安全性評価、日刊工業新聞社(1996年11月)