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<概要>
 茨城県における環境放射線の測定業務は、1968年4月に茨城県公害技術センターが設置され開始された。2005年4月1日組織改正により、新しい茨城県環境監視センターに常時監視による大気環境、環境放射線の調査研究および原子力施設周辺における環境放射能の調査研究の業務が移管された。
 茨城県環境監視センターの環境放射線の常時監視業務および茨城県の放射線監視体制について概説する。
<更新年月>
2005年06月   

<本文>
1.概要
・沿革
1968年4月 茨城県公害技術センターが設置され、茨城県衛生研究所の一部で業務を開始。
1970年7月 調査・管理の2部制となる。
1971年2月 庁舎が完成し、現在地(下記)にて業務を開始。
1971年6月 庶務・大気・水質の3部制となる
1972年6月 機構改革により所属が環境局となり、同時に放射能部が衛生研究所から移管されて、庶務・大気・水質・放射能の4部制となる。
1975年5月 別館庁舎が完成する
1986年4月 庶務・情報・大気・水質・特殊環境・放射能の6部制となる。
1993年4月 機構改革によって所属が生活環境部となる
1999年4月 庶務・情報・大気環境・水質環境・化学環境・放射能の6部となる。
2002年4月 情報部を企画情報部に改称する。

茨城県公害技術センターの主要業務をつぎに記す。
 庶務部:庶務、経理、財産等の管理事務
 企画情報部:常時監視による大気環境、環境放射線の調査研究
 大気環境部:大気環境、大気汚染発生源および騒音・振動の調査研究
 水質環境部:河川、湖沼等における水質汚濁防止対策の調査研究
 化学環境部:廃棄物、化学物質、土壌およびダイオキシン類の調査研究
 放射能部 :原子力施設周辺における環境放射能の調査研究

2005年4月1日 茨城県公害技術センターは、茨城県環境監視センターおよび茨城県霞ヶ浦環境科学センターに組織改正される。前者に企画情報部と放射能部の業務が移管される。

茨城県環境監視センター
 所在地:〒310−0905 茨城県水戸市石川1−4043−8
 Tel:029−252−3151 Fax:029−253−2144
 業務内容:
・大気環境および環境放射線の常時監視
・原子力施設周辺における環境放射能の調査研究

 以下に、茨城県環境監視センターの環境放射線の常時監視業務について概説する。

2.放射線の測定システム
2.1 システムの構成
 茨城県では、原子力施設から排出される放射性物質の影響を監視する目的で、1977年1月からテレメータシステムを用いた常時監視を実施している。このシステムは、測定局で空間ガンマ線量率や排水中の放射能濃度などを24時間連続測定する。(図1参照)
 空間線量率等の測定データは、表示局(16ヶ所)をはじめ県庁(原子力安全対策課、災害対策室)、市町村役場(9ヶ所)、港湾事務所(3ヶ所)に提供している。
 一般の人が訪問できる表示局は、原子力関連施設を持つ役場とその周辺に設置してあり、リアルタイムデータおよび原子力と放射線に関する映像を高精細大型ディスプレイ等に表示している。また、県庁、市町村役場、港湾事務所には情報端末を設置し、職員が測定データの確認を行うことができる。
2.2 システムの特徴
(1) 空間線量測定局では、平常時から緊急時までの広い範囲の線量率を測定する。
(2) 中央監視局の収集系制御装置およびデータベースサーバは、機能停止等を防ぐため二重化している。
(3) 夜間・休日中に異常等が発生した場合、緊急通報回線により、その内容を職員宅へ通報する。
(4) 空間線量率測定局、中央監視局の電源は、無停電化されている。
(5) 障害発生時に迅速に対応できるように遠隔監視機能を持っている。
2.3 測定局
(1) 中央監視局
 各測定局で測定されたデータを収集し各種処理判定を行う収集系装置(テレメータ親局装置、収集系制御装置など)、収集系から転送されたデータの各種統計解析処理、およびデータ記憶用の解析系装置がある。データは異常の有無をチェックしてから、表示局、監視情報ネット、SPEEDIネット、およびインターネットに配信される。(図2a)
(2) 空間線量測定局
 空間線量率を測定する空間線量率計と風向・風速や降水量等を測る気象観測機器を設置し、連続測定している。測定データは、2分毎にNTT専用回線で中央監視局に伝送されている。各局には、落雷対策として耐雷トランスや避雷針のほか停電時のデータの欠測を防ぐために無停電電源装置が設けられている。また、電光表示盤を通じて周辺住民に最新の空間線量率データを提供している。(図2b)
(3) 中性子線量測定局
 中性子線量率を連続測定している。測定データは、2分毎にNTT専用回線で中央監視局に伝送される。(図2c)
(4) 排水測定局
 4つの原子力事業所の排水中の放射能濃度等を連続測定している。測定データは2分毎にNTT専用回線で中央監視局に伝送されている。 (図2d,e)
(5) 高所気象測定局
 高所での風向・風速を連続測定している。測定されたデータは、2分毎にNTT専用回線で中央監視局に伝送されている。
2.4 測定装置
 測定装置としてNaI線量率検出器、電離箱線量率検出器、中性子線量計検出器などが設置されている。(図3

3.測定結果の例
3.1 空間線量率
 空間線量率とは、大気中にある放射線量を測定時間で除したもので、茨城県ではNaI線量率計と電離箱線量率計を用いてガンマ線の線量率を測定している。
 測定場所および測定結果の一例を各々図4図5に示す。このデータは、NaI線量率計で測定した最新の10分間平均値を表示している。単位はμGy/h。降雨時には、線量率が平均よりも3x10E−2μGy/h位上昇することがある。
3.2 排水中の放射能濃度
 排水中の放射能濃度とは、NaIシンチレーション検出器で測定された排水中の全ガンマ放射能を排水量で除したものである。データは、最新の1時間平均値を表示している。単位はmBq/cm3。つぎの4つの事業所で測定している。(図6
・日本原子力発電(株)東海第二発電所第2排水溝
・日本原子力研究所東海研究所(現日本原子力研究開発機構原子力科学研究所)第2排水溝
・核燃料サイクル開発機構東海事業所(現日本原子力研究開発機構核燃料サイクル工学研究所)再処理排水口
・原研大洗研・サイクル機構大洗(現日本原子力研究開発機構大洗研究開発センター)共同排水溝

4.放射線等の監視体制
 原子力施設から放出される放射線および放射性物質の影響を調べるため、国、県、原子力事業者は、協力して監視・測定を行っている。
 東海村・大洗町などの52ヶ所の測定局で、24時間体制で測定されたデータは、茨城県東海地区環境放射線監視委員会において、3ヶ月毎に検討、評価を行い、その結果は県の広報誌などで公表している。
(1) 茨城県環境監視センター(2005年4月改組、旧茨城県公害技術センター)
・核爆発実験による環境放射能の影響調査
・原子力施設周辺における環境放射能の監視
 農産物、牛乳、井戸水、海水、海底土、魚介類等中の放射能の測定
 モニタリングステーション30ヶ所(東海村内:石神・豊岡・舟石川・押延・村松)等による 空気中の放射線の測定(風向、風速、雨量などの気象状況も測定)
・事業所排水の濃度測定
・年間を通じ定期的に測定し、3ヶ月毎に中間報告(公表)
(2) 文部科学省水戸原子力事務所(1963年10月設置)
原子炉等規制法に基づく原子力事業所の監督
・環境放射能の測定監視
(3) 各原子力事業所(原研東海(現日本原子力研究開発機構原子力科学研究所)、サイクル機構(現日本原子力研究開発機構)、原電)
・原子炉等規制法および放射線障害防止法に基づき、各事業所の放射能(線)測定の義務
・常時測定(排気、排水)
(4) 茨城県東海地区環境放射線監視委員会(1971年10月発足)
・県・市町村・各種団体・学識経験者を構成メンバーとする(26名)
・放射線監視計画の策定、監視結果の検討と評価
 3ヶ月毎に監視季報として公表
・下部機構……調査部会・企画部会・評価部会(評価部会には地区の代表者が参画)
(5) 東海村
・原子力対策課において必要な測定を依頼
・村議会……原子力問題調査特別委員会(11名)
 (原子力施設の新増設計画に対しては、必要に応じ村議会に審議を付託するなどして、安全を確認している。)
・村原子力施設排水監視会(8名)
・村原子力安全対策懇談会(15名)
<図/表>
図1 茨城県環境監視センター・空間線量測定局のシステムの構成
図1  茨城県環境監視センター・空間線量測定局のシステムの構成
図2 茨城県環境監視センター・空間線量測定局について
図2  茨城県環境監視センター・空間線量測定局について
図3 茨城県環境監視センター・空間線量測定装置
図3  茨城県環境監視センター・空間線量測定装置
図4 空間線量率測定場所
図4  空間線量率測定場所
図5 空間線量率測定結果一覧
図5  空間線量率測定結果一覧
図6 排水中の放射線濃度
図6  排水中の放射線濃度

<関連タイトル>
環境放射線モニタリング (09-04-08-02)
原子力防災対策のための国および地方公共団体の活動 (10-06-01-04)

<参考文献>
(1)茨城県公害技術センターの組織改定等について(お知らせ)、(2005年3月28日)
(2)茨城県環境監視センター、放射線テレメータ・インターネット表示局:システムの特徴と構成、http://www.houshasen-pref-ibaraki.jp/
(3)茨城県環境監視センター、放射線テレメータ・インターネット表示局:測定局について、http://www.houshasen-pref-ibaraki.jp/
(4)茨城県環境監視センター、放射線テレメータ・インターネット表示局:測定装置、http://www.houshasen-pref-ibaraki.jp/
(5)茨城県環境監視センター、放射線テレメータ・インターネット表示局:空間線量率測定結果、http://www.houshasen-pref-ibaraki.jp/
(6)茨城県環境監視センター、放射線テレメータ・インターネット表示局:空間線量率測定結果・一覧、http://www.houshasen-pref-ibaraki.jp/
(7)茨城県環境監視センター、放射線テレメータ・インターネット表示局:排水中の放射能濃度、http://www.houshasen-pref-ibaraki.jp/
(8)放射線等の監視体制:http://www.vill.tokai.ibaraki.jp/as-tokai/04kanshi/kansitai.htm
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