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<概要>
 2001年1月、原子力施設デコミッショニング研究協会は、その業務にRI・研究所等廃棄物に関する調査業務を追加し、財団法人原子力研究バックエンド推進センター(RANDEC)が設立された。RANDECでは、従来の原子力研究施設等のデコミッショニングに関する調査研究の業務に加えて、RI・研究所等廃棄物の処分施設の立地に関する調査あるいは所要の普及啓発事業を進めてきた。文部科学省のこれまでの検討との整合性と原子力二法人の統合を踏まえたRI・研究所等廃棄物作業部会報告書(2006年7月)において、「当該廃棄物の発生量が最も多く、かつ技術的能力を有する原子力機構が自ら及び他者の廃棄物を合わせて処分すること」とされた。報告書を受けて原子力機構の業務に放射性廃棄物の埋設処分を加えるほか、国が基本方針、原子力機構が実施計画を定めるなどとする原子力機構法の改正(2008年5月)が成立した。RANDEC及びRI協会との協力協定を改訂し、これまで立地調査等を進めてきたRANDECに代わって、原子力機構が処分地の立地促進等処分事業化に関する事業を推進することになった。
<更新年月>
2008年12月   

<本文>
 1.はじめに
 原子力施設デコミッショニング研究協会は、2001年1月、RI・研究所等廃棄物の処理処分に関する調査業務を追加することとし、原子力研究バックエンド推進センター(以下、RANDEC)に改められた。
 原研、サイクル機構及びRI協会は、いずれも、多年にわたる業務(研究)活動により発生した放射性廃棄物(以下、「廃棄物」)について、各々の処分の検討を進めてきた。また、上記以外の研究機関、企業等においても、各自所有している廃棄物について、その処分の検討を進めていた。さらに、今後、老朽化した原子力施設、設備の解体が予想されることから、多量の廃棄物の発生が見込まれており、早晩その処分が必要になるのは必然であるとしていた。
 このような状況を受けて、原子力委員会では、1994年に策定した「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」において、
(1)RI廃棄物の処分については、原研とRI協会等の主要な責任主体が協力して、実施スケジュール、実施体制、資金確保等について、早急に検討を始めること
(2)研究所等廃棄物は、直接の廃棄物発生者である主要な機関が協力して、実施スケジュール、実施体制、資金の確保等について、早急に検討を進めること
としている。これを受けて廃棄物の処分について検討が進められ、「2000年頃の事業主体設立を目途とし、これに向けた具体的な作業内容およびスケジュールを策定する必要がある」とする基本的考え方(1998年)が原子力委員会から示された。それを受けて、RANDECが設立された。
2.原子力二法人統合準備会議におけるバックエンド対策に関する議論
 原子力二法人の統合に関する報告書(2003年)が取りまとめられ、そのなかで「発生者としての責任を全うしつつ、民間活力を用いて効率的に事業を進めていくことも有力な選択肢」であり、「処理処分事業については、文部科学省における検討との整合性にも配慮しながら、検討を深めることが重要」との指摘が行われた。
3.RI・研究所等廃棄物の処分事業に関する懇談会における検討
 RI・研究所等廃棄物の処分事業に関する懇談会(2004年)の報告書が出され「処分の具体化を図る方法としては、発生者責任の考え方を踏まえれば、(1)発生者自らが実施主体となって事業を実施する方法、(2)委託等により民間事業者にゆだねて処分を行う方法」が考えられ、事業実施主体の形態については、「遅くとも新法人の設立までに結論を得ることが望まれる」とされた。
4.RI・研究所等廃棄物の処分事業の実施体制等
 科学技術・学術審議会の原子力分野の研究開発に関する委員会において、RI・研究所等廃棄物の処分事業の実施体制等に関する報告書(2006年7月)が取りまとめられた。これを受けて、当該廃棄物の発生量が最も多く、かつ技術的能力を有する原子力機構が自ら及び他者の廃棄物を合わせて処分するための体制整備を進めている。浅地中処分相当の当該廃棄物の処分実現に向けて処分費用の確保方策、国民の理解促進及び立地地域との共生方策、安全規制及び研究開発について検討が進められている。
5.廃棄体数量及び処分事業に要する費用
 施設の解体等を含み、平成60年度末までに発生すると推定されている廃棄体の数量はピット処分21.8万本、トレンチ処分37.2万本(200リットルドラム缶換算)としており、その内訳は表1の通りである。また、この廃棄体量に基づく処分事業に要する費用が、総事業費用約23百億円、初期建設費用760億円と試算されている。
6.処分場概念図
 廃棄物は、その放射能濃度に応じてコンクリートピット又はトレンチに埋設する。コンクリートピット及びトレンチの概念図を図1図2図3に示す。ここで、コンクリートピットは、既に原子力発電所から発生した(低レベル)廃棄物を埋設している青森県六ヶ所村の低レベル放射性廃棄物埋設センターとほぼ同じ形態である。また、トレンチは、原子力機構が原子力科学研究所敷地内北地区で実地試験を実施している極低レベル埋設施設とほぼ同じ形態である。なお、廃棄体処分に必要な敷地面積は約100万平方mと概算されている。
7.事業計画
事業計画(例)を図4に示す。事業は、0期(立地活動)、I期(用地取得、環境調査、設計・許認可、建設)と約50年間のII期(本格操業)事業を経て、約300年間のIII期(閉鎖後管理)事業までを対象としている。
8.まとめ
 処分施設予想配置図(処分場の鳥瞰図)を図5に示す。本施設の安全評価結果によれば、施設は活断層直近を別にすれば、地質、地層には大きく影響されずに安全性を確保できる見通しを得た。そのため、文献調査等により、全国を対象として立地に係る情報収集を行っている。
(前回更新:2004年6月)
<図/表>
表1 RI・研究所等廃棄物の浅地中処分相当の廃棄体量、余裕深度処分相当の廃棄体量、地層処分相当の廃棄体量及びクリアランス対象となる物の量
表1  RI・研究所等廃棄物の浅地中処分相当の廃棄体量、余裕深度処分相当の廃棄体量、地層処分相当の廃棄体量及びクリアランス対象となる物の量
図1 コンクリートピット型埋設施設(200リットルドラム缶用)の概念図
図1  コンクリートピット型埋設施設(200リットルドラム缶用)の概念図
図2 コンクリートピット型埋設設備(200リットルドラム缶用)
図2  コンクリートピット型埋設設備(200リットルドラム缶用)
図3 トレンチ型埋設施設の概念図
図3  トレンチ型埋設施設の概念図
図4 RI・研究所等廃棄物処理処分関連事業の事業計画(例)
図4  RI・研究所等廃棄物処理処分関連事業の事業計画(例)
図5 処分施設予想配置図
図5  処分施設予想配置図

<関連タイトル>
放射性廃棄物の処分の基本的考え方 (05-01-03-01)
RI・研究所等廃棄物処理処分の基本的考え方 (05-01-03-14)

<参考文献>
(1)原子力委員会:「原子力研究開発利用長期計画」(1994年6月)
(2)原子力委員会原子力バックエンド対策専門部会:RI・研究所等廃棄物処理処分の基本的考え方について(1998年5月)
(3)文部科学省原子力二法人統合準備会議:原子力二法人の統合に関する報告書(2003年9月)
(4)文部科学省:RI・研究所等廃棄物の処分事業に関する懇談会報告書(2004年3月29日)
(5)(財)原子力環境整備センター:「放射性廃棄物データブック」(1998年11月)、p.28、29
(6)阿部昌義、大越 実、吉森道郎:極低レベル廃棄物埋設実施試験、デコミッショニング技報第15号(1996年12月)、p.50
(7)(財)原子力研究バックエンド推進センター:パンフレットより抜粋
(8)坂井章浩、吉森道郎、大越実ほか:JAERI−Tech 2001−018(2001年3月)
(9)原子力委員会;平成19年版原子力白書(平成20年3月),
(10)文部科学省:RI・研究所等廃棄物作業部会報告書−RI・研究所等廃棄物(浅地中処分相当)処分の実現に向けた取り組みについて−(2006年7月21日),http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/toushin/06110922/001.htm
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