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<概要>
 インドでは、国内にウラン資源と豊富なトリウム資源が存在するため、長期的な目標としてトリウムの有効利用を図った独自の核燃料サイクルを目指している。すなわち、ウランあるいはトリウムをブランケットに装荷したプルトニウム燃料の高速増殖炉、そして最終的には、ウラン233とトリウムの燃料リサイクルの増殖炉が計画されている。高速実験炉(FBTR)(電気出力15MW、ループ型)は、1985年10月に臨界に達した後、運転が続けられている。高速増殖炉原型炉(PFBR)(電気出力500MW、タンク型)は、2003年9月に建設が認可された。
<更新年月>
2004年11月   

<本文>
 インドには40万トン近いトリウム資源とその数分の一のウラン資源が存在している。したがって、インドの原子力利用計画では、まず天然ウランを燃料に用いる重水炉を、次にウランあるいはトリウムをブランケットに装荷したプルトニウム燃料の高速増殖炉、そして最終的には、ウラン233とトリウムの燃料リサイクルの増殖炉が計画されている。
1.高速実験炉(FBTR)(40MWt,13MWe)計画
 上記の方針にしたがって、インド原子力委員会は、熱出力40MW、電気出力13.2MWのウラン・プルトニウム混合炭化物燃料(I型炉心:PuC70%,UC30%)および2組の貫流式サーペンタイン型蒸気発生器を用いた高速実験炉(FBTR)(2ループ型、図1)の設計を1969年から始め、カルパッカム(Tamil Nadu州 Kalpakkam、図2)の原子力研究センター(IGCAR)において1972年に建設に着手した。建設は順調に進み、1985年10月に初臨界を達成した。その後種々の問題に悩まされたが、1991年4月に初めて熱出力1MWを達成し、それ以降最高1MWで運転が行われた。1993年1月より熱出力は4MWに引き上げられ、1993年10月には熱出力8MWでの出力運転試験を終了した。
 1996年から1997年にかけて炉心燃料集合体22体で熱出力10.5MWで運転した。熱出力10.5MWtの運転を継続中では燃料破損もなく燃料燃焼度の最大は32,000MWd/tに達した。1999年11月には50,500MWd/tに達した。1997年7月11日に1MWeだが州営送電網に送電を開始した。その後徐々に集合体本数を増加し、現在、炉心燃料集合体は39体まで増加し、その内1体は高速原型炉(PFBR)の燃料集合体である。運転熱出力は17.4MWtである。2003年末に、炉心中央の燃料の燃焼度は破損無しに123GWd/tに達した。
 インドは高速増殖炉の運転経験を有する国としては世界で7番目である。FBTRの建設に際してフランス電力庁(EDF)と同国の産業界の協力があった(1969年4月フランスと高速炉計画協力協定調印)。炉心と1次冷却系の設計は、フランスの高速実験炉ラプソディーに似てはいるが、大きく異なる点もある。すなわち、ラプソディーは燃料としてウランとプルトニウムの混合酸化物を使用しており、発電はしていない。これに対し、インドのFBTRは燃料に混合炭化物を用い、発電を行っている。ウランとプルトニウムの混合炭化物燃料を採用したのはFBTRが世界で最初である。
2.高速原型炉(PFBR)(1250MWt,500MWe)計画
 高速原型炉(PFBR)計画ではMOX燃料を採用することになっている。FBTRに続く電気出力500MWのPFBR(タンク型、熱出力1250MW、MOX燃料、目標燃焼度100,000MWd/t、炉寿命30年、表1)は、FBTRに隣接して建設される予定である。1996年3月、過去2年間コスト低減を目的とした合理化設計が行われ、プール型、1次冷却系、2次冷却系ともに2ループ、中間熱交換器4基、蒸気発生器8基、タービン発電機1台、ナトリウム炉心入口/出口温度397℃/547℃、ウラン・プルトニウム混合酸化物燃料、燃料ピン径6.6mmなどの主要目が決定された。
そして2003年9月PFBRの建設と予算が認可され、詳細設計、研究開発、コンポーネントの製造技術開発が鋭意進められている。サイトの掘削は完了し、長納期の主要機器の購入手配がなされ、まもなく原子炉建家の建設が開始する。同時にPFBR建設に関連する炉物理、炉工学等の多岐にわたるR&Dが精力的に進められている。
<図/表>
表1 インド高速原型炉(PFBR)の設計諸元
表1  インド高速原型炉(PFBR)の設計諸元
図1 インドの高速実験炉(FBTR)の主要設計諸元
図1  インドの高速実験炉(FBTR)の主要設計諸元
図2 インドの主要な原子力施設
図2  インドの主要な原子力施設

<関連タイトル>
世界の高速増殖炉実験炉 (03-01-05-01)
世界の高速増殖炉原型炉 (03-01-05-02)
インドの原子力開発と原子力施設 (14-02-11-02)

<参考文献>
(1)科学技術庁:FBR広報素材資料集(第2版)、原子力文化振興財団(1990年3月)
(2)日本原子力産業会議(編):原子力年鑑 1999/2000年版、p168?p169,p312?p314(1999年10月)
(3)A.Selvaraj et al.:Design of Prototype Fast Breeder Reactor, 3rd JSME/ASME Joint Int’l.Cof.on Nucl.Eng.,Apr.23−27,1995,Kyoto,Japan
(4)S.B.Bhoje:IAEA/IWGER Annual Meeting ”Status of the Fast Reactor Development in India”(1997年5月)
(5)Power in Asia,July 28,1997
(6)日本原子力産業会議(編):原子力ポケットブック1998年版、原産(1999年2月)
(7)S.B.Bhoje:Status of Fast Reactor Development in India, IAEA IWGFR 30th Annual Mtg,Beijing,13−16 May 1997,p252
(8)S. C. Chaetal :Status of Fast Reactor Development in India April 2003−March 2004, IAEA TWG−FR, 37th Annual Meeting, May (2004) (Private Communication)
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