<大項目> エネルギーと地球環境
<中項目> エネルギー政策
<小項目> 石油代替エネルギー(新エネルギー)政策
<タイトル>
世界における再生可能エネルギー導入環境整備の状況 (01-09-07-07)

<概要>
 再生可能エネルギーの普及に向けては、促進制度の導入が重要な鍵になっている。しかも、世界的に見て、促進制度は、昨今、研究開発主体の技術プッシュ型から、経済的インセンティブを伴う需要プル型に大きく変化してきている。日本でも、この導入促進のために、2003年度から電気事業者による新エネルギー利用等特別措置法[RPS(Renewables Portfolio Standard)法、固定枠制度]が施行された。ところが、日本のRPS法には、2010年までの利用目標量が少なすぎるため市場の流動性が期待出来ないなどの課題が山積している。RPS法導入時に予定されていた法の見直しが2005年6月から始まったが、その際には海外のこれまでの実績が参考になると考えられる。ここでは、欧州、北米、その他地域における再生可能エネルギー導入環境整備の状況をまとめ、日本の固定枠制度(RPS制度)との比較分析を行う。
<更新年月>
2006年01月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.欧州
 欧州連合(EU)は、地球温暖化対策の観点から、2001年10月に「再生可能エネルギー推進指令」を出し、2010年までに1次エネルギーで再生可能エネルギー割合を、1998年の6%に対して倍増の12%(電力消費で21%)に引き上げるという目標を設定した。ドイツ、フランス、英国の各国の2010年再生可能エネルギー電力割合目標値は、それぞれ、12.5%、21%、10%となっている(参考文献1、2)。
 各国の普及制度をみると、ドイツ、スペイン、ポルトガルなどが固定価格制度を、英国、スウェーデン、イタリアなどが固定枠制度(RPS制度)を導入している。図1からわかるように、風力発電の飛躍的な普及を達成しているのは、固定価格制度のドイツ、スペインである。ドイツでは、本制度をベースとする再生可能エネルギー法を背景にして、電力消費における再生可能エネルギー電力の割合が、1998年の4.6%から2004年上半期には10%へと倍増した。固定価格制度の利点は、各種再生可能エネルギー事業に対する電力購入価格が長期間にわたって保障されるため、事業リスクが小さく抑えられる点である。日本でも、今後、再生可能エネルギー導入量が目標値に達しない場合には、期限を限定して電力の最小買い取り価格設定などの施策を導入する検討の余地がある。
 EUでは、上記の「再生可能エネルギー推進指令」において、再生可能エネルギーを送電系統に優先的に接続していくという方針が明確に規定されている。また、EUは、「再生可能エネルギーおよびその貯蔵が増加した場合の独立型発電システムの革新的制御技術」などの技術開発も積極的に推進している。
2.北米
 米国では、再生可能エネルギーを対象として、税制上の優遇措置が行われてきた。カリフォルニア州、ニューヨーク州、アリゾナ州など17の州でRPS法が制定され、州ごとに再生可能エネルギー比率の目標値が決められている。州ごとのRPS制度については、うまく機能している州もあれば、途中で停止している州もある。現在、連邦レベルの制定は無いが、2005年4月、米国ブッシュ大統領は、再生可能エネルギー導入を推進するため、その普及や技術開発に今後10年間で約19億ドルの予算を確保する意向を表明した。上院エネルギー・天然資源委員会では、2005年8月現在、「国家再生可能エネルギー法案」を審議中である。2007〜2009年で最低3%、2012年までに5%まで拡大、2013年以降は7.5%に拡大するという目標が掲げられている(参考文献3、4)。
 系統連系に関しては、1990年代から、再生可能エネルギーに限らずあらゆる独立発電事業者に対する送電系統の利用開放を進めてきた。連邦エネルギー規制委員会が中心となって、多くの再生可能エネルギー分散型電源が該当する出力20MW以下の小規模発電機を対象とした系統連系基準の策定を進めている(参考文献5)。
 また、カナダでは、従来から水力発電が進んでおり、現在、電力消費の約6割を水力発電でまかなっている。オンタリオ州では、「グリーン・パワー・スタンダード」という再生可能エネルギー推進政策を2006年から実施予定だが、連邦政府での動きは見られない(参考文献6)。
3.中国およびブラジル
 中国は、2005年2月に再生可能エネルギー法を公布し、2006年1月1日から施行される。再生可能エネルギーの開発と利用の促進等を目的とした本法では、税、財政、価格面の優遇措置とともに、電力系統を有する電力会社に対する再生可能エネルギー電力の購入が義務付けられた。中長期的総量目標として、2010年までに再生可能エネルギーの総量を1次エネルギー消費の10%、トータルで60.45GW(小水力発電50GW、風力発電4GW、バイオマス発電6GW、太陽光発電450MW)としている。これを機に、再生可能エネルギー発電事業者に対する送電系統の利用開放が進むと予想される。再生可能エネルギー発電の系統連系電力価格については、給電開始後3万時間(約3.4年)は固定、以後は市場価格と連動することになっている。エネルギー源毎に価格設定は異なる。
 ブラジルでは、1次エネルギー供給の約4割が、水力、バイオマスを中心にした再生可能エネルギーである。政府が、再生可能エネルギー電力を20年間買い取り保障するプログラムを実施しており、特に、リオデジャネイロでは、風力発電、太陽光発電、中小水力発電などの導入に今後力を入れていく予定である(参考文献7)。
4.各国の導入制度比較
 世界各国で始まっている再生可能エネルギー導入制度は、固定枠(RPS)制と固定価格制に大別できる。代表的な国を取り上げてその特徴を図2にまとめ、日本と比較した。1.で述べたように、風力発電導入量での比較では、固定価格制導入国の方が進んでいる。固定価格制では、各種再生可能エネルギー事業に対する電力購入価格が長期間にわたって保障されるため、発電事業者に対する大きなインセンティブが働き、電力購入価格の長期保証制度が有効である。
 他国のRPS制度をみると、英国における中長期的な制度の保証、イタリアあるいはスウェーデンなどの最低保証価格の設定、イタリアの再生可能エネルギー系統アクセス優先権確保などが、日本のRPS制度見直しの参考になると考えられる。日本の2010年導入目標量は全電力量の1.35%であって、他国に比べて非常に少なく、これでは日本の再生可能エネルギー市場の流動性は期待できない。現行のRPS法スキームを維持しながらも、目標量の大幅な引き上げと、発電事業者と電力供給事業者の事業リスクを可能な限り低減するような価格安定化および長期的制度保証を取り入れていくべきとの意見がある(参考文献8、9)。
<図/表>
図1 固定枠制(RPS制度)と固定価格制との風力発電導入量格差
図2 再生可能エネルギー導入制度の比較

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<関連タイトル>
新エネルギーの導入と動向 (01-05-01-09)
グリーン電力制度 (01-09-05-20)
日本の新エネルギー導入政策 (01-09-07-01)
新エネ等電気利用法(RPS法) (01-09-07-06)

<参考文献>
(1)DIRECTIVE 2001/77/EC OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL of 27 September 2001 on the promotion of electricity produced from renewable energy sources in the internal electricity market
(2)NEDO海外レポート:“再生可能エネルギー発電:欧州のグリーン電力振興(1/2)、No.953”、“EUの新エネ/環境/研究開発・動向レポート(その三・1/2)、No.904”、(2003.4.7)
(3)米国ホワイトハウス:
(4)NEDO海外レポート:米国エネルギー法案の現状と行方、No.956(2005.6.1)
(5)飯沼芳樹他:米国電気事業の最近の動向、海外電力(2005)
(6)NEDO海外レポート:オンタリオ州の再可エネ政策に国内での整合求める声、No.920(2003.11.26)
(7)W. Victer,V.S. Marques:Renewable Energy in Brazil,Proceedings of World Renewable Energy Congress(2005),p.5-9
(8)環境省:新エネ利用特措法見直し検討タスクチーム提言書、自然エネルギー拡大のための政策・制度の提案、「自然エネルギー促進法」推進ネットワーク(GEN)(2005.
年2月22日)http://www.env.go.jp/council/06earth/y060-27/ref03-3.pdf
(9)大平竜也:再生可能エネルギーの普及促進策と技術課題、科学技術動向2005年8月号、p.30-41
(10)飯田哲也(編):自然エネルギー市場、築地書館(2005年)
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