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<概要>
 2003年度、石油製品内需は2億4140万klとなる見込みで、2004年度は、前年度比▲2.7%と減少の見込み(2億3498万kl)。2005年度以降、2008年度には2億2811万klとなり、2003〜2008年度の年平均伸び率で▲1.1%と減少の見込みである。減少の一番大きい要因は、電力用C重油需要の減少で、これは運転を停止していた原子力発電所利用率の向上により、火力発電所の稼働率の減少が見込まれることによる。2005年度以降は、電力需要は増加で推移するものの、今後も石油以外の非石油系燃料発電の新設稼働が見込まれ、電力用C重油需要は低調に推移する。電力用C重油需要は2003〜2008年度の年平均伸び率で▲15.1%と減少の見込みである。
<更新年月>
2004年06月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.わが国石油政策の基本的考え方(安定的かつ効率的な供給の確保)
(1)石油はわが国一次エネルギー総供給の52%を占め、経済性・利便性の観点から、21世紀前半においても主要なエネルギーであることが予想され、その安定供給の確保は今後ともエネルギー政策上重要な課題である。
(2)また、原油のほぼ全量を輸入し、その88%を中東地域に依存しているわが国の石油の供給構造は、他の先進国と比較しても依然脆弱である。このため、わが国は、石油の備蓄、自主開発、産油国協力等の施策を効果的、効率的に進めることにより、緊急時に備えた体制整備を図っている。
(3)一方で、わが国経済の構造改革を進めていくためには、エネルギー分野においても国際的に遜色のないサービス水準を実現することが必要である。規制緩和によって石油精製業等の経営の自由度を増し、効率化・合理化等の経営基盤の強化を通じて強靱な石油産業が形成されることは、わが国のエネルギーセキュリティ上も重要である。
2.具体的施策
(1)石油・天然ガスの自主開発の推進
 石油・天然ガスの安定供給の確保、産油・産ガス国との関係強化、石油・天然ガス消費国としての国際的責務の観点から、国内外における石油・天然ガス開発を推進。政府としても、従来からこれらに対応した民間企業の動きを積極的に支援している。
(2)石油・LPガス備蓄の維持・推進
 備蓄は、わが国のエネルギーセキュリティを確保するための政策の重要な柱である。石油については、国家備蓄を5000万klに増強(1998年2月達成)するとともに、民間備蓄については義務日数を段階的に90日から70日に軽減(1993年度より70日義務を維持)。
 今後の備蓄保有の在り方としては、緊急時対応の観点から、財政状況を踏まえつつ、緊急時の初期においてIEA加盟国が協調して行う備蓄放出(CERM)に適切に対応しうる国家備蓄水準の達成を当面の目標とすべきこと、CERM対応に国家備蓄を活用していくことが提言された(石油審議会(現総合資源エネルギー調査会石油分科会)石油部会石油備蓄・緊急時対策小委員会報告書:1999年8月)。これを踏まえ、2001年度においては、約100万klの国家備蓄の積み増しを実施(2002年度においては、積み増しを見送ることとした)。
 一方、LP(液化石油)ガスについては、引き続き50日の民間備蓄を維持するとともに、2010年度に150万トンを目標とする国家備蓄実現のため、国家備蓄基地を建設中である。
3.2004〜2008年度石油製品需要見通し(表1図1
3.1 燃料油
3.1.1 燃料油全体
 2003年度は、前年度比▲0.6%と減少の見込み(2億4140万kl)。2004年度は、前年度比▲2.7%と減少の見込み(2億3498万kl)。2005年度以降は、2008年度には2億2811万klとなり、2003〜2008年度の年平均伸び率で▲1.1%と減少の見込みである。
3.1.2 油種別
(1)ガソリン
 2003年度は、自動車保有台数の堅調な伸び(+2.0%)により、前年度比+0.7%と増加の見込み(6035万kl)。2004年度は、自動車保有台数の伸び(+1.5%)により、前年度比+0.8%と増加の見込み(6084万kl)。2005年度以降は、自動車保有台数の伸びがあるものの、ガソリン乗用車の燃費向上が進むため、ガソリン需要は2003〜2008年度の年平均伸び率で+0.5%と増加となるが、伸び率は年々鈍化していく見込みである。
(2)ナフサ
 2003年度は、BTX(Benzene,Toluene,Xylene、芳香族炭化水素)生産量が堅調に推移するなか、エチレン生産量は年度前半は低調に推移するも、後半はアジア向け輸出の堅調な伸びなどから回復基調で推移し、年度全体では横ばいで推移するため、前年度比▲0.0%の見込み(4856万kl)。2004年度は、BTXは、中国を中心としたアジア需要の伸びにより増加が見込まれ、内需も前年度の水準を維持することにより、生産量は増加する見込みである。一方、エチレンは、アジア向け需要が引き続き高水準を維持するも前年度割れで推移することから、ナフサ需要全体では微減となる見込みで、前年度比▲0.2%の見込みである(4846万kl)。2005年度以降は、BTX生産量は堅調であるものの、エチレン生産量はアジアでのプラントの新増設に伴い減少することから、ナフサ需要は2003〜2008年度の年平均伸び率で▲0.5%と減少の見込み。
(3)ジェット燃料油
 2003年度は、航空会社の統合に伴う路線再編の影響などにより、前年度比▲1.4%と減少の見込み(454万kl)。2004年度は、航空会社統合後のさらなる再編などにより民航用の減少が見込まれるものの、低調に推移していたその他用の回復が見込まれることから、全体では前年度比+1.1%と増加の見込み(459万kl)。2005年度以降は、座席キロの伸び等により、ジェット燃料油需要は2003〜2008年度の年平均伸び率で+0.6%と増加の見込み。
(4)灯油
 2003年度は、産業用が鉱工業生産の回復傾向に伴い増加するものの、民生用については、下期の暖冬により暖房度日数が大幅に減少すると見込まれるため、前年度比▲4.9%と減少の見込み(2912万kl)。2004年度は、産業用が引き続き増加するなか、民生用についても、前年度暖冬の反動により下期の暖房度日数が増加することから、前年度比+1.6%と増加の見込み(2959万kl)。2005年度以降は、産業用については、鉱工業生産が堅調に推移する等により前年並みから微増し、民生用については、世帯数の伸びの鈍化や住宅の高断熱・高気密化、灯油以外の暖房機器へのシフト等により微減で推移することにより灯油需要は減少傾向で推移する。なお、2003〜2008年度については、2003年度が暖冬により低水準であることから、年平均伸び率は+0.1%と微増の見込み。
(5)軽油
 2003年度は、物流合理化等に伴う軽油自動車保有台数の減少により、前年度比▲3.8%と減少の見込み(3799万kl)。2004年度は、引き続き前年度比▲3.2%と減少の見込み(3675万kl)。2005年度以降は、輸送の合理化による貨物自動車の大型化の進展やトラック保有台数が減少することなどから、軽油需要は2003〜2008年度の年平均伸び率で▲3.0%と減少の見込み。
(6)A重油
 2003年度は、暖冬の影響により業務用暖房需要が伸び悩むものの、一部鉱工業生産の回復により、前年度比+0.0%と横ばいの見込み(3014万kl)。2004年度は、鉱工業生産の回復が継続することに加え、前年度暖冬の反動などから、前年度比+0.5%と増加の見込み(3030万kl)。2005年度以降は、鉱工業用は生産活動に支えられ増加傾向で推移するものの、農林漁業用、水運用などが減少し、A重油需要は減少傾向で推移する。なお、2003〜2008年度については、2003年度が暖冬により低水準であることから、年平均伸び率は+0.1%と微増の見込み。
(7)B・C重油(一般用)
 2003年度は、大口需要家の石炭等他燃料への転換や省エネが継続し、かつ環境対策からA重油への油種転換もあり、前年度比▲4.9%と減少の見込み(1776万kl)。2004年度は、紙・パルプ、化学等の大口需要家の生産活動は回復するものの、石炭等他燃料への転換が継続することから、前年度比▲3.0%と減少の見込み(1722万kl)。2005年度以降は、鉱工業において大口需要家の生産活動は緩やかに回復するが、燃料転換や省エネが継続することから減少する見込み。2003〜2008年度の年平均伸び率で▲1.7%と減少の見込み。
(8)電力用C重油
 2003年度は、2002年9月中旬以降に発生した一部原子力発電所の運転停止が2003年度も継続したため、火力発電所の稼働が増加し、前年度比+19.4%と増加の見込み(1295万kl)。2004年度は、経済活動の緩やかな回復や冷夏暖冬の反動により電力需要量は堅調に推移するが、運転を停止していた原子力発電所利用率の向上が見込まれ、火力発電所の稼働率が減少するため、前年度比▲44.1%と減少の見込み(724万kl)。2005年度以降は、電力需要は増加で推移するものの、今後も石油以外の非石油系燃料発電の新設稼働が見込まれ、電力C重油は低調に推移する。2007年度には石炭火力の廃止により石油系火力発電について若干の増加が見込まれるものの、電力用C重油需要は2003〜2008年度の年平均伸び率で▲15.1%と減少の見込み。
3.2 LPガス需要見通し(表2図2
3.2.1 概要
 2004年度、家庭業務用は、LPガス世帯の伸び、LPガス器具普及の進展等により需要の増加が見込まれ、また景気回復に伴う産業用分野での増加、更に化学原料用は石化会社における原燃料多様化により需要の増加が見込まれる。一方、都市ガス用は、中小都市ガス会社における熱量転換に加え、大手都市ガス会社の増熱用需要の減少により、需要の減少が見込まれる。これらにより、対前年度比1.2%増の1822万トンと見込まれる。2005年度〜2008年度については、2005年度以降も家庭業務用及び化学原料用は引き続き堅調に推移することが見込まれる。また、自動車用は燃費の改善が見込まれるものの、規制緩和によるタクシー台数の増加、環境問題へ対応するため貨物車の増加が見込まれることから堅調な増加で推移し、工業用についても、生産活動の活性化に伴い増加することが見込まれる。一方、都市ガス用は、中小都市ガス会社における熱量転換が引き続き進展するが、転換も2007年度でほぼ終了し、その後は都市ガス販売量の増加に伴い、LPガス消費量も増加に転ずることが見込まれる。これらにより、2003年度から2008年度までの5年間の平均伸び率は1.4%と堅調な伸びとなり、2008年度の総需要は1932万トンになると見込まれる。
3.2.2 部門別需要状況
(1)家庭業務用
・2004年度:LPガス世帯数の増加、主要機器の普及率の上昇等により、需要の増加が見込まれる。これらにより、対前年度比0.2%増の784万トンと見込まれる。
・2005〜2008年度:引き続きLPガス世帯数の増加、エコキュート等の主要機器の普及に伴う1世帯当たりの消費原単位の増加が見込まれるため、需要は堅調に推移すると見込まれる。業務用のガスエンジンヒートポンプ(GHP)について効率向上による消費原単位の減少や買い換えによる普及の鈍化はあるものの、マイクロガスタービン、マイクロガスエンジン等の新規需要も見込まれる。これらにより、2003年度から2008年度までの5年間の平均伸び率は0.9%となり、2008年度の需要は818万トンと見込まれる。
(2)工業用
・2004年度:他燃料への転換等があるものの、生産活動の伸びにより、需要は増加するものと見込まれる。これらにより、対前年度比0.6%増の482万トンと見込まれる。
・2005〜2008年度:省エネ等による消費原単位の減少があるものの、生産活動の活性化等から、需要は増加傾向で推移するものと見込まれる。これらにより、2003年度から2008年度までの5年間の平均伸び率は0.6%となり、2008年度の需要は493万トンと見込まれる。
<図/表>
表1 2004〜2008年度石油製品の内需見通し(総括表)
表1  2004〜2008年度石油製品の内需見通し(総括表)
表2 2004〜2008年度LP(液化石油)ガス需要見通し
表2  2004〜2008年度LP(液化石油)ガス需要見通し
図1 2004〜2008年度石油製品需要見通し
図1  2004〜2008年度石油製品需要見通し
図2 2004〜2008年度LP(液化石油)ガス需要見通し(総括)
図2  2004〜2008年度LP(液化石油)ガス需要見通し(総括)

<関連タイトル>
日本の石油開発プロジェクト (01-03-02-03)
日本の石油備蓄の現状と課題 (01-03-02-04)
日本の石油エネルギー政策 (01-09-03-05)

<参考文献>
(1)経済産業省資源エネルギー庁:エネルギー・資源を取り巻く情勢、石油
(2)総合資源エネルギー調査会石油分科会石油部会石油市場動向調査委員会(第4回)配布資料3-1及び3-2
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