<大項目> エネルギーと地球環境
<中項目> 世界のエネルギー情勢
<小項目> 世界のエネルギー需給
<タイトル>
超長期エネルギー需要の見通し(1994年総合エネルギー調査会) (01-07-02-03)

<概要>
 我が国の経済社会構造が変化しつつある中で、現行需給見通しの視野である2010年度を超えた「超長期的視点」から、我が国のエネルギー需給構造を展望していくことが必要となってきている。総合エネルギー調査会基本政策小委員会(当時)は、1994年度を出発点として、2030年度までの超長期エネルギー需給の姿について、2つのシナリオの想定の下で、マクロ・エネルギー需給モデルにより、我が国が将来直面するエネルギー需給の姿に関するシミュレーションを行った。その結果、我が国の超長期のエネルギー需給が極めて厳しい状況に直面せざるを得ないことと、従来の省エネルギー・新エネルギーに向けた努力の実施を前提とした上で、更に、相当の原子力立地の推進が必要であることが示された。
<更新年月>
1997年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.マクロ・エネルギー需給モデルによるシミュレーションの実施
 我が国の経済社会構造が変化しつつある中にあって、
・地球環境問題への対応が一層厳しい制約要因となること
・新エネルギー技術の開発・導入や原子力発電所の立地には、長期のリードタイムを必要とするが、最近では、これが従来以上に長期化しつつあること( 図1 参照)
・アジアを中心とした発展途上国のエネルギー需要の増加傾向による、世界的な規模での中東依存度の上昇等を通じて、エネルギー需給の不安定性が増大する可能性があること
等を考慮して、現行需給見通しの視野である2010年度を超えた「超長期的視点」から、我が国のエネルギー需給構造を展望していくことが必要となってきている。
 このため、総合エネルギー調査会総合部会基本政策小委員会(当時)は、1994年度を出発点として、2030年度までの超長期エネルギー需給の姿について、2つのシナリオの想定の下で、マクロ・エネルギー需給モデルにより、我が国が将来直面するエネルギー需給の姿に関するシミュレーションを行った。
2.基本的なシナリオの想定
 このシミュレーションを行うに当たって必要となる経済成長率等の想定については、産業構造審議会総合部会基本問題小委員会(当時)の中間とりまとめ(1996年11月)において示された、思い切った経済構造改革及び財政・社会保障改革が実施され、一定程度の経済成長が確保された場合の数値を用いた。
<経済社会の基本的な姿の展望>
 同基本問題小委員会の我が国経済の将来見通し(思い切った経済構造改革及び財政・社会保障改革を実施した場合の粗い試算)によれば、高齢化のピークを迎える2025年度には、以下のような姿を実現可能としている。
・経済成長率は2.2%程度(2011〜2025年度の平均)で堅調に推移
・国民負担率は45%程度にとどまる
・勤労者一人当たりの手取り所得は堅調に推移(2011〜2025年度の平均:1.7%程度)
・財政赤字は収束傾向
・経常収支は適正水準
3.シミュレーション結果の概要
<シナリオ1>
 思い切った経済構造改革及び財政・社会保障改革が実施され、一定程度の経済成長が確保される。一方、エネルギー政策に関しては、省エネルギーの推進、新エネルギーの導入促進に係る現行程度の施策・取組が長期的に継続され、原子力立地については、2010年度までに現行の「長期エネルギー需給見通し」の目標を達成するものの、その後、横ばいに転ずると想定する。
・エネルギー需要面の展望:省エネルギーに係る現行施策を継続することにより、2030年度時点まで、最終エネルギー消費の伸びを年平均1.0%に抑制する。
・エネルギー供給面の展望:新エネルギーに係る現行施策の継続、2010年度まで原子力立地を着実に推進することで、2030年度時点では、原油換算で約1千万klに相当する新エネルギーの導入と原子力設備容量を7,050万kWとして、石油依存度を約48%と依然5割程度の維持とした。
・エネルギー環境面の展望:上記の想定の下、2030年度時点における二酸化炭素排出総量は4.8億トンとなり、1990年レべルから約5割も増加する( 図2 参照)。
 このシナリオでは、一定程度の経済成長は確保できるものの、現行程度のエネルギー政策を維持しただけでは、二酸化炭素の排出総量は大幅に増加し、また、石油依存度の低下もなかなか進展せず、依然として我が国のエネルギー需給構造が抱える脆弱性から脱却できないおそれがあることを示している。
<シナリオ2>
 思い切った経済構造改革及び財政・社会保障改革が実施され、一定程度の経済成長が確保される。一方、エネルギー政策に関しては、省エネルギーの推進、新エネルギーの導入促進に係る施策・取組を最大限強化するとともに、原子力立地についても、2030年度までに原子力委員会の「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画(原子力長計)」(1994年6月決定)において期待されている1億kWが達成されると想定する。
・エネルギー需要面の展望:省エネルギーに係る施策を最大限強化(<シナリオ1>の省エネ努力に加え、2030年度時点で原油換算で約5千万klの省エネを断行)することで、2030年度時点まで、最終エネルギー消費の伸びを年平均0.7%に抑制する。
・エネルギー供給面の展望:新エネルギーに係る施策の最大限強化、2030年度まで原子力立地を着実に推進することで、2030年度時点では、原油換算で約8千万klに相当する新エネルギーの導入と原子力設備容量は1億kW(この結果、石油依存度は約41%に低下)とした。
・エネルギー環境面の展望:上記の想定の下、2030年度時点における二酸化炭素排出総量は3.2億トンとなり、1990年レべルまでの排出抑制が可能となる(図2参照)。
 このシナリオでは、2030年度時点における二酸化炭素排出総量を1990年レベルまで抑制できることを示している。また、この時石油依存度も、約4割にまで低下するなど、エネルギー・セキュリティーの観点からも、<シナリオ1>よりも望ましい姿を達成している。
(参考1)
 <シナリオ2>で必要とされる省エネルギー・新エネルギー・原子力の量的イメージは、以下のとおり。ただし、各項とも単純化のために、一定の仮定の下で試算を行ったものであることに留意が必要である。
・5千万klの省エネルギー・イメージ
 例えば以下のような対応の組合せによる膨大な量の節減に相当する。
a.産業部門:約1.5千万kl
b.民生部門:約1.5千万kl
c.運輸部門:約2千万kl以上、合計で約5千万kl
・8千万klの新エネルギー導入イメージ
 例えば以下のような膨大な量の新エネルギーの導入に相当する( 図3 参照)。また、新エネルギーは、自然条件や利用形態による制約があることから、一定の限界があることに留意が必要である。
a.太陽光発電   : 約42百万kl
b.風力発電    : 約3百万kl
c.未利用エネルギー: 約17百万kl
d.その他の新エネルギーの導入量を最大限拡大:約15百万kl
以上、合計で約8千万kl
 なお、2030年時点で8千万klの新エネルギー導入量達成のためには、前提条件等不確定要因は多いが、単純な仮定の下で計算すると約140兆円の設備投資等(これを、仮に政策的な価格差補てん等で行う場合の追加的費用は、約30兆円)が必要となる。
・1億kWの原子力設備容量のイメージ
 原子力長計において、2030年度における設備容量として期待されている原子力発電施設がおおむね倍増することをイメージしている。
(参考2)
 <シナリオ1>及び<シナリオ2>の試算に当たっては、省エネルギー・新エネルギ一施策の程度と原子力立地の程度に応じて、4つのケースを想定した試算をあらかじめ行った( 表1 参照)。
 この4つのケースの試算結果では、原子力立地の推進のみでは二酸化炭素の排出抑制が実現されない(Case2)のはもとより、省エネ・新エネの最大限強化(Case3)だけでも十分ではないことを示している。これを踏まえ、(Case1)を<シナリオ1>として、(Case4)を<シナリオ2>として、それぞれ採用した。
(参考3)
 経済構造改革及び財政・社会保障改革が実施されず、我が国の経済成長率が大幅に鈍化した場合の、我が国のエネルギー問題へのインパクトに関しても試算を行った結果、2030年度時点の二酸化炭素排出総量は3.8億トンと1990年レベルから約2割も増加した。また、石油依存度も約47%と依然として高い水準を維持する結果となった。すなわち、この結果は、エネルギー改策の目標であるエネルギー・セキュリティの維持及び環境の保全のいずれも達成できないおそれがあることを意味している。
(4)今後の課題と国民的な議論の展開
 以上のシミュレーション結果は、我が国の超長期のエネルギー需給が極めて厳しい状況に直面せざるを得ないことを示唆している。我が国が来るべき21世紀においても豊かで活力にあふれた経済社会を実現していくためには、一定程度の経済成長が必要である。一方、2000年以降の地球温暖化問題に係る二酸化炭素の排出抑制に向けて積極的に対応していくことが不可欠な課題となっている。また、従来の省エネルギー・新エネルギーに向けた努力の実施を前提とした上で、更に、相当の原子力立地の推進が必要であることを示唆している。
 今回のシミュレーション結果が示す最も重要な結論は、我が国のエネルギー政策の基本的な目標である「経済成長」「エネルギー需給の安定」「環境保全」の同時達成のためには、ライフスタイルの根本的改変や膨大なコストの負担、場合によっては規制措置の導入といった、痛みを伴う対策が必要ということである。今後、国民的な議論が重要になるが、そのための大前提として、我が国のエネルギー問題に関する一層の情報公開の推進、学校教育におけるエネルギー教育の推進等の環境整備も必要である。
<図/表>
表1 シミュレーション結果一覧
図1 原子力発電所の立地に至る平均リードタイム
図2 シミュレーション結果(二酸化炭素排出量)の概要
図3 新エネルギー技術の実用化等の目途

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
原子力発電の将来見通しと原子力施設の立地の促進(平成6年原子力委員会) (10-01-04-04)

<参考文献>
(1) 通商産業省資源エネルギー庁企画調査課(編):エネルギー・未来からの警鐘−21世紀に向けて我々は何を選択すべきか−(財)通商産業調査会出版部(1997年2月20日)
(2) 通商産業省産業政策局(編):日本経済の構造改革、東洋経済新報社(平成9年5月8日)
(3) 原子力委員会(編):21世紀の扉を拓く原子力、大蔵省印刷局(平成6年8月30日)
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