<大項目> 海外情勢
<中項目> 中近東各国
<小項目> アラブ首長国連邦(UAE)
<タイトル>
アラブ首長国連邦(UAE)の原子力開発 (14-07-05-01)

<概要>
 アラブ首長国連邦(UAE)は、GDPの約36%を占める石油部門を重要な産業と位置づけ、2014年までに石油生産を500万バレル/日(bbl/d)以上へ増加させる計画である。また、天然ガスについても石油化学工業の原料及び発電・淡水化プラント燃料として、供給拡大に向けた積極的な開発が進んでいる。UAEは急速な経済成長と人口増加を背景に、増大する電力・淡水需要に対応するため、エネルギー資源の確保に努めるほか、エネルギー供給力の強化と地球温暖化対策として、原子力と再生可能エネルギーの開発に取り組んでいる。
 なお、UAEはこれまで原子力研究開発の実績がなかったことから、国際原子力機関(IAEA)の推奨に従い、2008年4月にアラブ首長国連邦原子力公社(ENEC)を設立、安全監督省庁として連邦原子力規制庁(FANR)を2009年10月に発足させた。建設プロジェクトはENECにより一括発注(建設・運営・維持補修)方式が採用され、2009年12月に韓国電力コンソーシアムによる韓国国産のPWR、APR-1400を建設することが決定された。建設サイトに関しては、2012年7月、アブダビ首長国西域部のバラカが選定承認され、1号機は2012年7月に、2号機は2013年5月に建設を開始している。両機ともに2017年以降の運転開始を目指している。
<更新年月>
2013年12月   

<本文>
1.国情
 アラブ首長国連邦(UAE:United Arab Emirates)は、アラビア半島の南東部、アラビア湾に面した地域に位置するアブダビ、ドバイ、シャルジャ、ラスアルハイマ、フジャイラ、アジュマン、ウムアルカイワインの7つの首長国で構成される連邦国家である。首都はアブダビで、東部はオマーンと、南部・西部はサウジアラビアと隣接する世界有数の石油産出国である。17世紀以降、英国のインド支配との関係でこの地域は重要視されていたが、英国が1968年にスエズ運河以東の撤退宣言をしたため、独立存続が困難な小首長国を中心に1972年に連邦を結成した。連邦国家であるが、各首長国の権限は大きい。外交、軍事、通貨などは連邦政府の権限であるが、資源開発、教育、経済政策、治安維持(警察)、社会福祉、インフラ整備などは各首長国の権限に属する。
2.エネルギー
2.1 エネルギー資源政策
 1996年6月に制定されたアラブ首長国連邦憲法では、天然資源の所有・処分権は当該首長国に属する旨を定めており、連邦政府は対外エネルギー政策及び石油輸出国機構(OPEC)政策を担当する。従って、天然資源の探鉱開発、生産精製、販売輸出等のエネルギー政策は、各首長あるいは各首長国政府が独自に策定している。実質的には石油資源の大部分を賦存するアブダビ最高石油評議会(SPC:Supereme Petroleum Council)が政策を決定し、アブダビ国営石油会社(ADNOC:Abu Dhabi National Oil Company)が政策を展開する。
2.2 エネルギー需給
 UAEは世界有数の石油産油国であり、豊富な石油資源を背景に、石油生産並びに石油関連産業で経済成長を続け、実質経済成長率は、2006年に9.84%を記録した(IMF調べ)。2009年以降、世界的な金融危機の影響で経済は減速したが、2012年には4.37%を示した。
 天然ガスについては、石油化学工業の原料と、発電・淡水化プラント燃料として需要が大きい。今後、経済成長と人口増加は急速に拡大すると思われ、電力及び淡水の需要に対応したエネルギー資源の確保が重要である。また、地球温暖化対策として、原子力開発及び再生可能エネルギーの普及に積極的に取り組んでいる。以下、UAEの石油及び天然ガスにおける地下資源状況を述べる。表1に天然資源の生産状況を示す。
(1)石油
 UAEは世界第6位の確認埋蔵量を持ち、1967年から加盟している石油輸出国機構(OPEC:Organization of Petroleum Exporting Countries)でも、加盟12か国中第4位の生産枠を有している。2012年の確認埋蔵量978億バレル(bbl)は世界全体の7.8%に相当するが、その94.3%はアブダビ首長国に賦存する。他首長国は石油資源に恵まれず、ドバイ4.1%、シャルジャ1.5%、ラスアルハイマ0.1%程度に留まる(図1参照)。
 アブダビ首長国の原油生産量は1960年代後半から1970年代にかけて活発化し、積極的な探査活動や回収技術の進歩もあって着実に増加している。2012年末時点の生産量は280万バレル/日(bbl/d)以上で、ADNOCとADCOなどの外資系企業が生産する。なお、ドバイ首長国では、石油部門収入が1980年代にはGDPの約50%を占めたが、2007年には3%まで低下し、現在では石油・天然ガスの取引市場として活躍している。
(2)天然ガス
 UAEの天然ガス埋蔵量は2011年末時点で18,473億立方フィート(cf)で、ロシア、イラン、カタール、トルクメニスタン、サウジアラビア、米国に次ぐ世界第7位である。世界全体の埋蔵量の約3.5%を占めるが、硫黄化合物を多く含むサワーガスが主体で、経済性は低い。天然ガスの産出はアブダビ、シャルジャ、ドバイ、ラスアルハイマの4首長国に限定され、確認埋蔵量の90%以上はアブダビに賦存する。中でもUmm Shaif油田とAbu al-Bukhush油田の下に広がる構造性のKhuffガス田は世界最大級の規模を持つ。
 UAEの天然ガス国内需要は年々増加しており、2011年末時点のガス消費量は26,629億cf、不足分は海外からの輸入に頼っている。天然ガスはLNG輸出、発電、淡水化プラント燃料、石油化学産業の原料のほか、原油回収量向上のために油田へのガス再注入に使用される。
2.3 電力需給
 UAEの消費電力量は急増しており、2010年の消費電力量は851億6,930万kWhで、2000年の消費電力量の2.35倍に当たる(図2参照)。2010年時点の発電設備容量は約2,325万kWで、アブダビとドバイ両首長国で8割以上を占める。なお、発電設備は全て火力発電所で、淡水化設備と組み合わせたガスタービンが年々増加しつつある(表2参照)。
 送電に関しては、連邦エネルギー省による送電網の整備が進み、ADWECとDEWAが2006年に、SEWAとFEWAが2007年に連系し、首長国電力網(ENG)が完成した。2011年にはサウジアラビア及びオマーンとの系統連系が可能になっている。UAEは、そのほかクウェート、バーレーン、カタール間を系統連系させるプロジェクトにも参加している。
(a)アブダビ首長国連邦・・・ADWEC(Abu Dhabi Water and Electricity Company)の発表によると2012年の発電電力量621億6,500万kWhであった。ADWECは北部首長国電力会社SEWAとFEWA及びサウジアラビア、オマーンへ電力を輸出しており、国内消費電力量は471億1,500万kWhとなる。発電設備は1998年以降急速に拡張しており、2002年からの増加率は年平均10.2%である。高温多湿の気候による夏場の電力需要対策に追われている。
(b)ドバイ首長国・・・電気・水道事業を展開するDEWAの発表によると、2012年の発電設備容量は964.6万kW、発電電力量は362億9,900万kWhであった。2005年以降、需要家数の目覚しい経済成長を背景に、発電設備容量は年平均14.1%、発電電力量は年平均9.4%で増加を続けている。なお、2012年の消費電力量の構成比は淡水化8.61%、産業用7.30%、商業用47.33%、家庭用27.94%、その他8.82%となっている。
3.バラカ原子力発電所の開発
3.1 原子力発電所の導入
 UAE連邦政府が2008年4月に発表した包括的原子力エネルギー政策では、増加する電力需要に対応するため、2020年までに40GWeの発電設備が必要であり、再生可能エネルギーを6〜7%導入するとともに、ガス火力を約20GWe、残りを原子力で賄うとした。
 これにより、原子力研究開発の実績がないUAEは、国際原子力機関(IAEA)の推奨に従って、2008年4月に原子力導入プログラムの推進機関として、アラブ首長国連邦原子力公社(Emirates Nuclear Energy Corporation:ENEC)を設立。さらに政府は核不拡散、原子力安全、核防護、インフラ基盤整備等の専門家から構成される「国際アドバイザリー委員会」を設置し、原子力運営に関して広く意見を求め、透明性を確保する方針を表明した。
 2009年10月、UAEは原子力の平和利用に関する連邦原子力エネルギー部門全般の安全保障を管轄する連邦原子力規制庁(Federal Authority for Nuclear Regulation:FANR)を発足した(図3参照)。
 なお、UAEは核不拡散の方針を遵守するとして、連邦内でのウラン濃縮、再処理を放棄し、燃料の供給は海外から受けることになっている。また、フランス、米国及び韓国と原子力の平和利用に関する協定を締結し、英国、日本と協力支援の覚書を交わした。UAEの安全規制は、IAEAのガイドラインや、他の原子力先進国に認知された方式に準じると定め、IAEAと密接な関係を保っている。2011年12月、IAEAのIRRS(総合原子力安全規制評価サービス)レビューを受け、FANRの規制体系の健全性を確認した。2012年10月には原子力損害賠償法が定められた。
3.2 バラカ原子力発電所の建設
 建設プロジェクトはBOT方式で、ENECが一括発注(建設・運営・維持補修)する国際入札で行われた。まず、UAEはプラント発注に先立ち、原子力の導入計画・管理のコンサルテーション業務を米国CH2M HILLエンジニアリング社に委託。2009年12月末には、韓国電力コンソーシアムによる韓国国産PWR、APR-1400・4基の建設を決定した。コンソーシアムには、韓国電力(KEPCO)のほか、現代(ヒョンデ)建設、三星(サムスン)物産、斗山(ドゥサン)重工業、米ウェスティングハウス、日本の東芝などが参加している。4基のうち1号機は2017年に竣工し、残り3基は2020年までに完工する。APR-1400は2015年9月までに運転開始を予定する新古里3・4号機(設計寿命60年)がモデルであり、韓国国産原子炉の初の海外輸出となる。
 一方、2008年半ばから、原子力発電所の建設サイト評価が、FANR、米国原子力規制委員会(USNRC)、IAEAのガイダンス等の国際基準に照らし合わせて行われた。地震履歴、人口密集地区からの距離、大量取水、既設送電網との接続、インフラ状況を鑑み、アブダビ首長国の西部、ルワイス(RUWAIS)の西南西約53kmに位置する、ペルシャ湾岸のバラカ(Barakah)が2010年4月に選定された(表3および図4参照)。
 2010年2月にENECは1号機および2号機の工事許可申請を原子力規制庁(FANR)に提出し、FNARはアブダビ環境庁とともに2012年7月に原子炉2基の建設を承認するライセンスを賦与した。審査の過程では、2011年3月の福島第一原子力発電所事故の教訓を考慮し、設計基準を上回る過酷事故に対する評価も別途提出し、審査されている。1号機は2012年7月18日に、2号機は2013年5月28日に発電所建設を開始している。
<図/表>
表1 UAEにおける天然資源量の生産状況
表2 UAEにおける発電設備容量と発電電力量の推移
表3 アラブ首長国連邦(UAE)の原子力発電所一覧
図1 UAEにおける主な石油産出エリア
図2 UAEにおける電力需給バランスの推移
図3 UAE原子力規制庁(FANR)組織図
図4 バラカ原子力発電所位置図

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
世界の原子力発電の動向・アジア(2011年) (01-07-05-15)
世界の原子力発電の動向・中近東(2011年) (01-07-05-16)
韓国の原子力発電 (14-02-01-04)

<参考文献>
(1)(一社)日本原子力産業協会:原子力年鑑 2014年版(2013年10月)、アラブ首長国連邦
(2)(一社)日本原子力産業協会:世界の原子力発電開発の動向、2013年版(2013年5月)
(3)(一社)日本原子力産業協会:アラブ首長国連邦の原子力発電開発、http://www.jaif.or.jp/ja/news/2013/uae_nuclear_development.pdf
(4)日本外務省:アラブ首長国連邦、

(5)UAE連邦原子力規制庁(FANR):Annual Report2012、

及び組織図(2013年)、

(6)米国エネルギー省エネルギー情報局(EIA):United Arab Emirates(2013年1月) 及び電力統計データ、など
(7)国連・UAE大使館:Fact_Sheet、

(8)世界原子力協会(WNA):アラブ首長国連邦、
http://www.world-nuclear.org/info/Country-Profiles/Countries-T-Z/United-Arab-Emirates//
(9)ADWEC:Statistical Report1998-2012、http://www.adwec.ae/report2012.html
(10)DEWA:Electricity Statistics 2002-2012、

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