<大項目> 海外情勢
<中項目> 中近東各国
<小項目> トルコ
<タイトル>
トルコの国情とエネルギー事情 (14-07-04-02)

<概要>
 トルコ共和国の国内エネルギー資源は、無煙炭、褐炭(リグナイト)、石油、天然ガス、水力である。石炭の賦存量は87億トンと推定され、発電や鉄鋼、セメント製造に使われているが、炭質は全般的に悪く、一次エネルギーの大半を海外に依存している。従って、経済活動の活発化に伴う電力需要を賄うため、石油、天然ガスなどの輸入は年々増加し、2013年のエネルギー自給率は27.8%と低く、電力の安定供給が重要な課題となっている。また、トルコはEU加盟を目指して電力市場改革を行うとともに、EU型の電力自由化を進めている。トルコは地理的に、豊富な石油、天然ガスなどエネルギー資源を抱える中東諸国やロシアと、消費地であるヨーロッパ諸国との中継地として、きわめて重要な立場を有する。
<更新年月>
2016年01月   

<本文>
1. トルコの国情
 トルコ共和国は1923年10月から共和制をとる独立国家で、総人口約7,770万人(2014年)。西アジアのアナトリア半島と東ヨーロッパのバルカン半島東トラキア地方を領有する総面積780,576km2(日本の約2倍)の国で、首都をアンカラにおく。大半がトルコ民族で、南東部を中心にクルド民族(推定1,000万人以上)、ユダヤ、ギリシャ、アルメニアなど70以上の少数民族が居住し、その99%がイスラム教スンニ派を信仰する。
 トルコの外交方針は、NATO(北大西洋条約機構)およびOECD(経済協力開発機構)の一員として、欧米寄りの立場をとる。一方、ロシア、コーカサス(カフカス)・中央アジア、バルカン・東欧、中東(アラブ、イスラエル双方)等周辺諸国との関係を重視している。なお、隣国ギリシャとの関係ではキプロス島問題、エーゲ海領海・資源問題、シリア・イラクとの間にはユーフラテス・チグリス川の水利権等の係争問題、アルメニアとの領有問題等が存在するほか、近年対イスラエル、対エジプト関係の悪化、シリアとのIS、難民問題で非常に緊迫する等、経済外交を中心に問題解消を図っているが、困難な問題も多い。1987年4月にECへの正式加盟を申請し、1995年3月にEUとの関税同盟協定に調印した(1996年1月1日、発効)。なお、2005年10月からはEU加盟交渉が開始されている。
 トルコの経済は、1980年代から市場開放と国際競争力の強化、輸出拡大および持続的成長を政策目標とした。しかし、公共投資主導の経済成長や公共部門合理化の遅れ、税制の不備、農業補助金等に起因する財政赤字が拡大した。2002年11月には穏健イスラム政党の公正発展党(AKP)が単独政権を樹立、以来安定した経済改革を推進している。2000年11月と2002年2月の2度にわたる金融危機の後、IMF等の国際金融機関の支援を受けつつ、財政赤字削減を中心とした経済構造改革を推進し、2002年〜2007年の経済成長率は年率6.8%に達した。リーマンショック後、世界的な金融危機の影響を受けたが、2010年以降内需に牽引され、国内経済は回復した。その後、経常収支、物価上昇等の経済指標を改善、輸出牽引型の緩やかな成長により2014年には2.9%の経済成長率を達成した。
2. エネルギー情勢
2.1 エネルギー需給
 トルコの国内エネルギー資源は水力と石炭以外は資源量が限られている。近年、トルコの一次エネルギー消費量の成長は著しく、1990年には石油換算で4007万トンであったが、2000年には5785万トン、2013年には8602万トンと年平均約3.38%で増加してきた。一方、一次エネルギー生産量は、1990年は石油換算で2581万トン、2000年には2586万トン、2013年には3235万トンと、年平均1%の増加にとどまる。需要が生産量を上回る石油、天然ガスなどの輸入は年々増加しており、2013年のエネルギー自給率(供給量に対する生産量)は27.8%と低く、今後もエネルギー生産量の飛躍的増加は期待できない。2013年の国内供給量の内訳は石炭27.9%、石油27.2%、天然ガス32.2%、水力4.4%、地熱等3.6%である、表1にエネルギー需給バランスの推移を示す。
2.2 エネルギー開発体制
 トルコのエネルギー政策担当機関はエネルギー・天然資源省(MENR:Ministry of Energy and Natural Resources)である。エネルギー・天然資源省は国家エネルギー政策・計画の策定・実施を行うほか、関連機関、その他公共・民間会社との調整、エネルギーおよび天然資源の探鉱、開発、生産、配分を管理し、監督する。省傘下に政策策定実施機関として戦略開発総務局とエネルギー総局がある。これらはエネルギー政策、エネルギー市場、再生可能エネルギー、化石燃料、エネルギー効率および環境に関する研究や、電力市場の自由化プログラムの調整に責任を負う。その他、エネルギー・天然資源省傘下には石油総局(石油天然ガスの採掘、生産に関する規制に責任を負う)、再生可能エネルギー総局、原子力計画局、石油パイプライン輸送局などが関連業務を扱う。
 また、トルコ開発省は、関係省庁および専門機関の協力を得て、5年ごとの5ヵ年開発計画を策定している。2013年7月に策定された第10次5ヵ年計画(2014〜18年)では、エネルギーについて、(1)エネルギーを消費者に継続的かつ安定的に最小コストで供給すること、(2)供給源の多様化、(3)競争力のあるシステムの設立、(4)国内の再生可能エネルギーの最大限利用、(5)原子力エネルギー技術の速やかな活用と省エネルギーの促進、(6)環境負荷低減による国際エネルギー取引市場での優位性の確保を主たる目的とすると述べられている。トルコは地理的に、豊富な石油、天然ガスなどエネルギー資源を抱える中東諸国やロシアと、消費地であるヨーロッパ諸国との中継地として、きわめて重要な立場を有する。
2.3 エネルギー資源
 トルコのエネルギー資源には、無煙炭、褐炭、アスファルタイト、瀝青質頁岩、原油、天然ガス、ウラン、トリウム、水力、地熱、その他再生可能エネルギーなどがある。図1にトルコの主な鉱工業地域図を示す。エネルギー・天然資源省傘下の鉱物資源探査・採掘総局(MTA:General Directorate of Mineral Research and Exploration)が、トルコの天然資源の調査研究および採掘を扱う。
(1)石油
 南東部ハーカリー盆地周辺に石油の埋蔵量が確認されているが、小規模な油田しか発見されていない。石油消費量は天然ガス消費量の増加に伴い、エネルギー比率に占める石油の割合は減少する傾向にある。石油供給の9割は輸入に依存し、貿易相手国はサウジアラビア、イラン、イラク、アラブ首長国連邦(UAE)、リビア、アルジェリア、シリア、エジプトである。石油公社(TPAO)は、環カスピ海油田開発の企業主体であるAIOCに出資し、中央アジアでの石油開発に参画している。
(2)天然ガス
 天然ガスの消費量は産業用および発電用を中心に増加しているが、98%を輸入に依存している。2010年時点でトルコが長期契約している天然ガスの輸入量は約510億m3で、パイプラインを通じて、全体の58%をロシアから、19%をイランから、13%をアゼルバイジャンから輸入し、残りの10%をアルジェリアとナイジェリア(LNG)から輸入することとなっている。
(3)石炭
 石炭は資源的にはかなり恵まれ、トルコの主たる燃料源で、発電や鉄鋼、セメント製造に使われている。BP統計によると埋蔵量は、瀝青炭3.2億トン、亜瀝青炭・褐炭83.8億トンで、炭質は全般的に悪く、熱量が低いうえ、硫黄分、灰分などが多く含まれる。瀝青炭は北西部の黒海に面したゾングルダック県に、褐炭は全国的に賦存するが、約40%はアナトリア南東部アフスン・エルビスタン地区に集中する。その消費量は過去10年間ほぼ横ばいで、総エネルギー消費量の約3分の1程度である。
(4)地熱資源
 トルコでは1960年代から鉱物資源探査・採掘総局MTAにより地熱資源調査が行われており、これまでに186の地熱地点の存在が確認されている。トルコ国内に湧出する温泉、冷泉および掘削された坑井の総計は1,500箇所にのぼり、これらの多くが北アナトリア断層や中部〜東部アナトリア火山帯に関連する地溝帯に位置する。湧出する温泉・冷泉および掘削された坑井に基づき算出されたトルコの地熱資源量は4,078MWtであり(湧出温度を一律に35℃とした場合)、未確認地熱資源を含めると31,500MWtと見積もられている。
2.4 電力
 トルコの電力需要は1970年代中頃から毎年平均7.3%で上昇し、電力需要は2023年まで年平均6〜7%で増大すると見積もられている。経済成長に伴って急増する電力需要への対応が急務であり、電力の安定供給が重要な課題となっている。また、トルコはEU加盟を目指して電力市場改革を行うとともに、EU型の電力自由化を進めている。
2.4.1 電力事業の改革
 トルコの電力供給は1970年から2000年までの間、国によって管理され、トルコ電力庁が発電、送電、配電の全てを担ってきた。しかし、EU加盟を目指すトルコは、電力事業の民営化、電力市場の自由化を進めている。1993年にはトルコ電力庁をトルコ配電会社(Turkish Electricity Distribution Co.:TEDAS)とトルコ発送電会社(Turkish Electricity Generation Transmission Co.:TEAS)の2社に分割した。
 2001年3月には、電力市場法(Electricity Market Law)を施行し、市場開放と自由化をより推し進めた。TEASは、送電会社(Turkish Electricity Transmission Co.:TEIAS)、発電会社(Electricity Generation Co.:EUAS)、電力売買契約会社(Turkish Electricity Trading and Contracting Co.:TETAS)の3社に分割された。その後、TEDASも含めてこれら4社の業務は順次民営化されている。こうした自由化の流れを受け、国の役割は電力庁時代の「投資/運営/監査」から、エネルギー市場規制庁による「規制」のみとなった。図2に電力事業体制の概要を示す。
2.4.2 電力供給
 2012年のトルコの発電電力量は前年比4.4%増の2,395億kWh、消費量は5.2%増の2,424億kWhだった(表2参照)。発電電力量の43.6%は天然ガス(大部分はロシアからの輸入)で、28.4%が褐炭・輸入石炭、24.2%が水力、2.8%が地熱および風力(RE)となっている。発電設備容量は、2002年の3万1,846MWから2012年末で5万7,058MWまで増加した。発電設備の43%をEUASおよび同子会社が、16%を民営化されたもと国営企業が、残り39%を民間企業と自家発電が所有する(表3参照)。
 トルコの電力消費量は、2023年までに年間6%増加すると予測されており、エネルギー・天然資源省の試算によると、電力の安定供給のため、2023年までに1,200億〜1,300億ドルの投資が必要だという。同省は、2023年までにトルコの電力需要が5,000億kWhまで増加すると予測し、これに応じて発電設備容量を倍増させる必要があるとして、以下のような目標を掲げた。
○総発電設備容量を現在の57GWの倍以上となる125GWとする。
○総発電電力量に占める再生可能エネルギー(RE)の割合を30%にする。
○送電網の全長を60,717kmにする。
○送電ロス、盗電比率を5%に低減し、スマートグリッドを普及させる。
○天然ガス貯蔵能力を現在の26億m3から50億m3まで増強する。
○炭鉱地域に総設備容量18,500MWの発電所を建設する。
○民間を主力に水力発電の設備容量を倍増させる。
○風力発電の設備容量を20GWにする。
○地熱発電の設備容量を600MWまで増強する。
○太陽光発電の設備容量を3,000MWまで増強する。
○発電におけるガス火力依存を現在の5割弱から3割以下にまで引き下げる。
原子力発電所2基(5,000MW)に400億ドルを投じて、2023年までに稼働させる。
2.4.3 電力需要
 トルコの電力需要は、経済危機に陥った2001年こそ増加率が鈍くなったものの、一貫して増加傾向にある(図3参照)。部門別で見ると、工業用の需要の増加量が最も大きく、次に家庭用、商業用が続いている。こうした電力需要の増加を受け、プラントの新設や既存プラントの拡張が課題とされてきた。また、資金を円滑に確保するため、BOT(Build Own and Transfer:建設・操業・移転)やBOO(Build Own and Operate:建設・操業)、既存発電施設の操業権譲渡スキームを認め、国内外の民間企業による発電市場への参入を進めている(表3参照)。なお、不足分に関しては、グリッドを連携しているブルガリアやグルジア、アゼルバイジャン、イランなどから輸入することで対応している(図3参照)。
<図/表>
表1 トルコのエネルギー需給バランスの推移
表2 トルコにおける発電電力量の推移
表3 トルコの発電設備容量の推移(送電端)
図1 トルコの主な鉱工業地域図
図2 トルコにおける電力事業体制の概要
図3 トルコにおける消費電力量と輸入電力量の推移

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<関連タイトル>
世界の原子力発電の動向・中東(2005年) (01-07-05-03)
世界の原子力発電の動向・中近東(2011年) (01-07-05-16)
トルコの原子力開発 (14-07-04-01)

<参考文献>
(1)海外電力調査会:海外諸国の電気事業 第二編2010年版(2010年3月)、トルコ
(2)日本原子力産業協会:トルコの原子力発電導入準備状況、http://www.jaif.or.jp/data/data-oversea/turkey/
(3)日本外務省:http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/turkey/data.html
(4)トルコ共和国外務省:
(5)テキサス大学:Turkey:Economic Activity From Atlas of the Middle East(1993)、http://www.lib.utexas.edu/maps/atlas_middle_east/turkey_econ.jpg
(6)日本貿易振興機構(ジェトロ):欧州・トルコのエネルギー政策と企業動向、2014年2月、https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/report/07001581/07001581.pdf
(7)みずほ情報総研株式会社:平成25年度エネルギー需給緩和型インフラ・システム普及等促進事業(再生可能エネルギー及び省エネルギー等技術・システムの事業可能性調査)トルコ国における地熱発電事業可能性調査 調査報告書、平成26年3月、http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2014fy/E003926.pdf
(8)TEIAS:TURKISH ELECTRICAL ENERGY 10−YEAR GENERATION CAPACITY PROJECTION(2008−2017)、2008年7月
(9)TETAS:2013 YILI SEKTOR RAPORU、2014年5月、http://www.enerji.gov.tr/File/?path=ROOT%2f1%2fDocuments%2fSekt%c3%b6r+Raporu%2fTETA%c5%9e+2013+SEKT%c3%96R+RAPORU.pdf
(10)国際エネルギー機関(IEA):Turkey Balances for 1990〜2013
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