<大項目> 海外情勢
<中項目> ヨーロッパ各国
<小項目> フランス
<タイトル>
フランスにおける原子力発電所の寿命延長 (14-05-02-13)

<概要>
 フランスでは、原子力発電所の寿命(運転期間)は設置許可などの法的措置では規定されておらず、会計上の減価償却期間である耐用年数として40年、また、設計上の寿命として40年とされているに止まる。
 フランスで現在運転中の原子力発電所の80%(5,000万kW)は、1980年〜1990年の10年間に集中して建設された。そのため、原子力発電所を一元的に運転するフランス電力(EDF)は、これらの原子力発電設備を将来、廃止・建替えする場合、その時期を平準化したい考えで、基本的には40年以上運転することを目標として、各原子炉の寿命延長を図る方針である。
 具体的にはEDFは、(1)2020年〜2040年の20年間、あるいは(2)2020年〜2050年の30年間をかけて設備の建替えを行うことが現実的な選択肢と考えており、(1)の場合には炉の寿命を平均44年、(2)の場合には平均48年と試算している。
<更新年月>
2007年01月   

<本文>
1.法定寿命
 フランスでは、原子力発電所の寿命は、設計上の寿命として40年と評価されている。また、会計上の減価償却期間としての耐用年数は40年と定められている。しかし、いわゆる法定寿命は存在せず、原子力発電所の設置許可を定める政令にも寿命(運転期間)は規定されていない。フランスでは、「原子力施設に関する1963年12月11日付け政令」により、10年毎に詳細な点検(「10年検査」と呼ばれる)を行うことが義務付けられており、その検査をクリアすればさらに10年間の運転が許可される。クリアできなければ設置許可が取り消される可能性もある。
2.寿命延長の背景
 フランスでは、1970年代の石油危機を契機として、大規模な原子力発電開発が行われ、2006年末現在、原子力発電設備は59基6,602万kWと米国に次ぐ世界第2の原子力発電国となっている。
 この大規模開発に際しては、加圧水型軽水炉(PWR)への一本化および炉型の標準化という基本路線が敷かれた。現在運転中の58基(6,588万kW)のPWRのうち、90万kW級34基は4つの炉型、130万kW級20基は2つの炉型、145万kW級4基は1つの炉型に標準化されるとともに、集中的に発注された。特に1980年〜1990年の10年間には、現有設備の80%に相当する5,000万kWが建設された。
 2006年現在、これら原子力発電所の平均運転年数は、90万kW級で24年、130万kW級で17年、145万kW級で8年であるが、EDFは、これまでに得られたフランスおよび外国での知見、および1980年代から行われている寿命・経年劣化に関する研究開発計画などの結果から、目標として、フランスの原子炉全体の寿命(運転期間)を40年、また、少なくとも一部の原子炉についてはそれ以上の年数の寿命を設定することは現実的と考えている。
 しかし、前述の集中的な発注・建設の結果、フランスでは、将来の廃止についても、ほぼ同時期にこれらの原子炉が寿命を迎え、集中的な廃止措置が必要となることが大きな課題となっている。
 また、フランス政府は、2005年制定の「エネルギー政策指針法」により、将来の電源について原子力発電の比率を高い水準に維持すること、また、2020年頃と予想される建替えに際しての炉型モデルとして、欧州加圧水型炉(EPR)を1基、2015年を目途に運転開始することが規定されている。このように、フランスでは将来、既設の原子力発電所を同じ原子力で建替えることが国家エネルギー政策として確認されているわけであるが、この建替えも短期間に集中する可能性がある。
3.EDFの廃止・建替え計画と炉の寿命
 EDFは、この既設炉の廃止と建替えを、20年〜30年の長期間に平準化することが経済的、財政的、技術的観点から望ましいと考えており、2003年に行われた次期炉EPRの導入を巡る国会での議論の中で、EDFは3つの建替えシナリオを提示している。寿命延長も、この廃止と建替えの平準化の中で最適化を図るという観点から検討が行われている。
 ちなみに、EDFはこれらのシナリオを想定する上での前提として、2040年におけるフランスのベース負荷用電源を7,000万kWとし、その70%の5,000万kWを原子力発電設備によるものとしている。
 第一のシナリオは、2020年〜2050年の30年間にわたって、5,000万kWの設備の建替えを行うシナリオで、既設炉の寿命は平均48年(短い炉で40年〜42年、長い炉で50年)と想定されている。建替えに際して建設される炉は、次期炉EPR(「第三世代+炉」と呼ばれる)と第四世代炉がそれぞれ半分を占める。
 ちなみに、EDFは現在、米国、日本、フランスなどが参加する国際的な枠組みで研究開発が行われている第四世代炉については、2012年〜2015年に実験炉、2025年に実証炉、2035年に商業炉がそれぞれ運転を開始すると想定している。
 第二のシナリオは、第一のシナリオより10年短い2020年〜2041年の20年間で建替えを行うシナリオで、既設炉の寿命は、同じく第一のシナリオより若干短い平均44年(短い炉で40年、長い炉で50年)と想定されている。建設される炉はEPRが中心となる。
 第三のシナリオは、第四世代炉が商業化される2035年以降に建替えを行うシナリオで、既設炉の寿命は55年〜60年と想定されている。
 EDFは、第三のシナリオは、既設炉の寿命が他のシナリオに比べて大幅に長くなること、および第四世代炉の開発日程に不確実性が残ることなどから、適当なものではないと評価しており、第四世代炉への「繋ぎの炉」としてのEPRが確実に利用できるという観点から、第一、第二シナリオのほうがより確実と考えている。EDFは第一、第二のシナリオでは、十分達成可能と考えられる45年〜50年という平均寿命の中で、各炉の状況に応じて、平準化、分散化されたスケージュールに基づき廃止と建替えが可能としている。
 実際の寿命延長計画は、今後、主要コンポーネントの経年劣化、安全レベル、経済性(競争力)を勘案して各炉毎に策定されるが、EDFはすでに例外的保守(コンポーネントの経年劣化解析、フィジビリティ・スタディ、予防的な取替えなど)として、現在、年間2億ユーロ(1ユーロ=約155円)の支出を行っている。また、大規模な保守・取替えが「10年検査」時に実施される(10年検査時の保守・取替え費用は90万級1基で約3,000万ユーロ)。さらに、EDFは寿命延長計画(経年劣化メカニズムの定期的な見直し、関連のR&Dなど)として、年間4,200万ユーロの支出を行っている。
(前回更新:1995年3月)
<関連タイトル>
ブラッドウェル2号機原子力発電所の寿命延長の検討 (14-05-01-10)
フランスの原子力政策および計画 (14-05-02-01)
バーセベック原子力発電所廃止をめぐる動き (14-05-04-08)

<参考文献>
(1)(社)海外電力調査会:エネルギー政策指針法の概要(フランス)、「海外電力」2005年9月号、p.21−27
(2)原子力産業協会:世界の原子力発電開発の動向2005、2006年、p.4、p.39−40、p.100−105
(3)野村證券株式会社:フランス電力新株式発行届出目論見書(2005年11月)p.245−246、p.301、p.381−382
(4)Office parlementaire d’evaluation des choix scientifiques et technologiques : Rapport sur la duree de vie des centrales nucleaires et les nouveaux types de reacteurs, le 13 mai 2003, p.7−96、p.257−284, p.341−350
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