<大項目> 国際協力・原子力関連機関
<中項目> 核をめぐる動向と保障措置・核物質防護
<小項目> 保障措置
<タイトル>
核物質転用分析 (13-05-02-06)

<概要>
 核物質転用分析とは、転用経路分析とも言われ、個々の施設に適用する保障措置の手法を設計する際に、考慮されるワークの一つで、施設で転用が行われる可能性のある転用経路を分析するものである。転用経路の要素には、核物質の形態、量および場所、報告されない物質の持ち出し又は持ち込み経路などの転用手段、転用の速さおよび用いられる隠ぺい手段がある。なお、統合保障措置では、未申告核物質および未申告原子力活動も保障措置適用の対象となるため、転用経路の分析も含めて、入手経路分析と言われる。
<更新年月>
2006年08月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.転用
 「転用」とは、有意量の核物質を平和的な原子力活動から核兵器など核爆発装置の製造や不明な目的のために用途を変えることをいう。保障措置の目的を達成するために、原子力施設に適用する保障措置の手法を設計する必要があるが、その際には、IAEAの探知目標(有意量、探知確率、探知時間等)を満足するように、施設の設計情報、施設の核物質の取扱方法、転用戦略等が考慮される。この中で重要なのが、施設においてどのような転用の方法、経路があるかを検討することであり、これが転用分析である。
2.転用戦略(転用の策略)
 「転用戦略」とは、IAEA保障措置の適用を受けている核物質の転用を行うために一国の中で採用されうる可能な策略のことである。保障措置の計画作成のために仮定される転用戦略の例としては次のようなものが考えられる。
  −保障措置を受けている施設からの核物質の報告されない持ち出し。
  −保障措置を受けている施設への核物質の報告されない持ち込み。
  −施設内における親物質からの核物質の組成の報告されない変更(例:プルトニウムの生産)又は核物質の申告値以上の濃縮。
  −申告されていない施設での転用された核物質の使用。
3.転用経路とその要素
 転用経路とは転用戦略によって実施される転用の具体的な内容であって、次のような要素から成り立っている。
(1)転用手段
 転用手段とは、転用に際して、どの場所から、どれ位の量で、どのような形態の核物質を、どのような物理的手段を用いて、どのように転用(申告外の持ち込み、持ち出しおよび核物質組成の変更)するかを指している。転用手段を検討する際には、施設の封じ込めおよび監視の状況、取扱い核物質の形態と量、取扱方法、適用される計量管理法等を考慮することが重要となる。
(2)転用速度(転用の早さ)
 転用速度とは、一定の時間内に転用されると想定される核物質の量を言うが、大きく分けて一括転用と分割転用の二つのケースがある。一括転用とは、短い時間内に有意量又はこれを超える多量の核物質を一括して転用するケースであり、分割転用は、有意量の核物質を1年間にわたり少量ずつ何回にもわたって転用することである。
(3)隠ぺい手段
 隠ぺい手段とは、転用が保障措置手段によって探知されるのを妨げようとして転用側が採る手段である。したがって、どのような保障措置が適用されるかが仮定されていなければならない。隠ぺい方法の代表的な例として以下の方法がある。
  −IAEAの封じ込めおよび監視手段(例:封印やカメラ)又はIAEAの計量活動(例:試料採取)に対する妨害、もしくはIAEAの測定に対して干渉すること。
  −在庫の減少(例:払出し又は廃棄)の過大申告、実在庫の過大申告、在庫の増加(例:受入れ又は生産)の過少申告又は虚偽の施設運転データの提示により、記録、報告およびその他の文書を偽造すること。
  −在庫差(MUF)を不正操作すること、例えば“MUFへの転用(不明物質量としてしまう)”又はMUFに関連した測定の不確かさを水増しすること。
  −探知の可能性を減少させるため、例えば困難さを装うことにより、合意された区域へのIAEA査察員の接近を制限すること。
  −転用された核物質又は他の不明になった資材を、同時には査察されそうにない他の施設又は場所から借り受けた核物質又は資材もしくは報告されない物質で置き換えること。
  −転用された核物質又は他の不明になった資材をより戦略的価値の低い物質又は資材(例:模擬燃料集合体又は燃料要素)で置き換えること。
4.転用分析
 転用(経路)分析とは、取扱う核物質のタイプとそれが取扱われる施設の特徴(物理的構造、核物質の移送経路、核物質の取扱設備等)を関連付けて、転用が発生する可能性があるケースを仮定し、さらに、この事実を隠ぺいするために取られる方法を考慮し、それらの違反行為がどのような事象として現れてくるかを分析するものである。一般的にいって転用経路手段には数多くのものが考えられるが、この分析の完全性を高めるため、系統的な分析法が開発されている。また、転用の物理的あるいは技術的困難さ(難易度)を評価し、適用される保障措置手段が非合理的なものとならないよう、工夫されている。なお、統合保障措置では、未申告核物質および未申告原子力活動も保障措置の対象となっており、転用経路の他に、未申告核物質の入手およびその未申告原子力活動による核爆発装置用核物質への転換を含む分析が行われている。この分析は、入手経路分析と呼ばれている。
<関連タイトル>
保障措置のための目標と技術的手段 (13-05-02-04)
保障措置に用いられる手法の設計 (13-05-02-05)

<参考文献>
(1)(財)核物質管理センター:IAEA/SG/INF/1 IAEA保障措置用語集
(2)(財)核物質管理センター(訳):IAEA/SG/INF/3 IAEA保障措置 −核物質の国内計量管理制度の指針−
(3)(財)核物質管理センター(訳):IAEA/SG/INF/6 IAEA保障措置 −核燃料サイクル施設における実施−
(4)(財)核物質管理センター:保障措置用語の概念の解説(平成2年)
(5)(財)核物質管理センター:核物質管理センターニュース、核物質管理センター発行の月刊ニュース
(6)原子炉等規制法
(7)国際規制物資の使用に関する規則
(8)核兵器の不拡散に関する条約第3条1及び4の規定の実施に関する日本国政府と国際原子力機関との間の協定(略して、「日・IAEA保障措置協定」)並びに当該協定への追加議定書
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