<大項目> 国際協力・原子力関連機関
<中項目> 核をめぐる動向と保障措置・核物質防護
<小項目> 核をめぐる国際動向
<タイトル>
原子力関連機器の輸出に関する規制 (13-05-01-04)

<概要>
 核兵器の拡散を防止するための核拡散防止条約(NPT)を補完するものとして、原子力供給国会合(Nuclear Suppliers Group:NSG)の合意による原子力関連資機材の輸出規制が1977年から行われている。イラクによる核兵器開発問題を契機として、1992年には原子力汎用品・技術の輸出を規制するNSG part2が創設され、核不拡散のための輸出規制の枠組みが強化された。日本においては、外為法及び関連政令等により、原子力関連資機材、原子力汎用品・技術の輸出が規制されている。
<更新年月>
2006年01月   

<本文>
1.はじめに
 国際社会の安全に脅威を与えるおそれのある様々な兵器の開発、製造に使われ得る資機材や技術を供給する能力のある先進工業国は、安全保障の観点から、一定のルールを定め、関係各国が協調して輸出規制政策を行っている。大量破壊兵器である核兵器、生物兵器、化学兵器に関わるこのような国際輸出規制の枠組みとして、核不拡散条約(核兵器不拡散条約、NPT)、生物兵器禁止条約、化学兵器禁止条約がある。また、大量破壊兵器の運搬手段となるミサイルに関わる資機材、技術についても大量破壊兵器に準じた輸出規制がなされている(図1参照)。
 冷戦時代、欧米16か国と日本は、共産圏諸国を対象として軍事技術、戦略物資の輸出規制を行うため、対共産圏輸出統制委員会(Coordinating Committee for Multilateral Export Controls, Coordinating Committee for Export to Communist Areas;COCOM:ココム)を設立し、大量破壊兵器、通常兵器等に関わる資機材、技術の厳格な輸出規制を行っていたが、冷戦の終結を受けて、ココムは1994年3月に廃止された。現在は、対象国を特定せず、通常兵器と軍事転用可能な汎用技術等合計約110品目を規制の対象とする緩やかな枠組みであるワッセナー・アレンジメント(Wassenaar Arrangement、新ココムとも呼ばれる;1996年7月発足)がある。これらの国際安全保障に関わる輸出規制の概要を表1に示す。核不拡散関係年表を表2に示す。
2.原子力関連資機材輸出規制の経緯と概要
(1) 原子力供給国会合(NSG)の経緯と概要
 1970年に発効し、1995年に無期限延長された核不拡散条約(Treaty on Non−Proliferation of Nuclear Weapons:NPT)は、非核兵器国が核兵器を保有する権利を自ら放棄し、国際的な合意に基づく核不拡散の枠組みをつくるものである。NPTは、条約参加の非核兵器国(条約発効時に核兵器を保有していた米国、ソ連(現、ロシア)、イギリス、フランス、中国の5か国を除く各国)への核兵器の移転を禁止し、これらの国々に国際原子力機関(International Atomic Energy Agency:IAEA)の保障措置を受け入れを義務づけるとともに、参加国が非核兵器国に核物質等の原子力資機材を移転する際には、当該核物質等に保障措置が適用されることを条件としている。
 しかしながら、NPTの発効から4年後の1974年5月、NPT非加盟国であるインドが、IAEA保障措置下にあるカナダ製研究用原子炉から得た使用済燃料再処理して得たプルトニウムを使用して核爆発実験を行った。この出来事は、NPTによる核不拡散体制がその実効性において不十分なものであることを示し、核爆発装置の製造につながる資機材の国際的な流通を規制することの必要性を認識させる契機となった。このため、翌1975年4月から、日本、アメリカ、ソ連、イギリス、フランス、西ドイツ、カナダの7か国が実効性のある原子力関連資機材の輸出規制に関する協議を開始した。NPTのような国際条約に基づく、受領国も合意の上での核不拡散体制ではなく、核兵器開発に用いられる資機材、技術を供給する能力のある、いわゆる原子力供給国が協調して輸出管理を行い、実態として核兵器の拡散を防止しようとするものである。これが原子力供給国会合(Nuclear Suppliers Group:NSG)であり、ロンドンで会議が開かれたことからロンドンクラブとも呼ばれた。1977年9月にはNSGガイドライン(法的拘束力のない、いわゆる「紳士協定」:公開文書)が合意され、1978年1月に公表された。なお、この時点までに参加国は15か国となった。
 ガイドラインでは、核原料物質、特殊核分裂性物質、原子炉その他の設備などを規制品目として掲げ、供給国は、核爆発装置につながる使い方をしないとの受領国の確約を得た場合にのみ対象品目の移転を許可すべきこと、供給国は、受領国においてIAEA保障措置が適用される場合にのみ対象品目の移転すべきこと、受領国において核物質防護が実施されるべきことなどの要件を示している(表3参照)。NPTにおいて保障措置の対象となる原子力資機材に加えて重水等を規制品目としたこと、濃縮、再処理、重水製造設備に関連した技術の移転も規制の対象としたことなどが特徴となっている(表4参照)。
(2) NSG part2の経緯と概要
 1991年の湾岸戦争後のIAEAの査察により、イラクの核兵器開発計画が明らかにされたが、そこで使われていた資機材の多くが、英、米、独、日等、NSGメンバーを中心とした先進国から輸出されたものであった。当時、核原料物質や重水等の原子力開発に特有の資機材については、NPTやNSGにより国際的な輸出規制が行われていた。しかしながら、イラクはこれらの輸出規制対象資機材を密かに調達する努力を行うとともに、自らウラン濃縮技術やプルトニウム生産技術を開発していた。そしてそこに用いられたのが、先進国から輸入された一般の資機材(汎用品)であった。この事件により、もっぱら原子力専用資機材を規制の対象としてきた既存の核不拡散体制は再びその実効性に疑問が投げかけられる事態となった。これを受けて、1977年のガイドライン合意以来開催されたことがなかったNSGの会合が、1991年、オランダの呼びかけにより、13年ぶりにハーグで開催された。そして翌1992年4月には、原子力汎用品の規制を行うNSG part−2のガイドラインと規制対象リストが合意された。
 ガイドラインは、輸出許可手続き、移転を許可するための統一的条件、再移転の同意等、包括的なものとなっている。また、規制対象のリストは65品目(現在は64品目)となった。
 このNSG part−2の創設を受けて、各国がそれぞれの国内法制を整備し、原子力汎用品の輸出規制を実施している。日本においても、1992年12月に輸出貿易管理令等関係法令が改正され、輸出規制が実施されている。NSG参加国は、2004年6月、中国、エストニア、リトアニア、マルタの4カ国、2005年7月にクロアチアが新たに加わり45カ国となった。なお、インド、パキスタン及びイスラエル等のNPT非締約国やイランは参加していない。
 ガイドライン(表5参照)においては、目的(第1項)及び基本原則(第2項)で、付属リストの対象品目の輸出規制が核兵器の拡散の防止を目的とすることを明らかにすると同時に、核爆発活動又は非保障措置核燃料サイクル活動に寄与する場合のみを対象とするものであって、それ以外の一般的な活動を妨げるものではないことを明らかにしている。
 輸出許可手続き(第4項)においては、輸出を許可するかどうかを検討するにあたって考慮に入れるべき事項を示している。なお、これらの要素は考慮事項であり、移転のための条件(第5項)のように、満たすことが輸出の絶対条件ではない。
 移転のための条件(第5項)においては、供給国が、移転を許可する前に、最終需要に関する誓約書等を取得すべきであると定めている。
 付属リストは現在64品目からなっており、産業機械、材料、ウラン同位体分離機器、重水製造プラント関連機器、内爆システム開発機器、爆発物及び関連機器、核実験機器、その他の8分野にカテゴリー分けされている(表6参照)。付属リストには注釈がついており、リストに関連したすべての技術を輸出規制の対象とする旨定められている。したがって、NSGにおける輸出規制の対象は、規制対象品目である貨物に限られず、それらに対応する技術情報を提供することも含んでいる。これを受けて、日本の輸出規制においても、技術の移転を規制対象としており、例えば、日本国内で外国人に対象技術を教えることも規制されている。
 なお、上記ガイドライン及び付属リストのほかに、参加国間の了解覚書があり、参加国への輸出には、ガイドラインに示された輸出手続を簡略化することができる、ガイドラインに基づき輸出を拒否した場合には、その内容を他の参加国に通知するとともに、他の参加国は少なくとも3年間、輸出拒否国との協議なしに同じ輸出案件を許可してはならない。また最低年1回の会合により、参加国間の情報交換を行うなどの内容が取り決められている。
 原子力汎用品を対象とするNSG part2の成立により、原子力専用資機材を対象とする従来のNSGは、以後NSG part1と呼ばれるようになったが、その内容についても、従来、輸出の際の条件として求められるIAEA保障措置の対象が、当該輸出資機材に係る原子力活動に限られていたものを、輸出先国内におけるすべての原子力活動を対象とする包括的保障措置(Full Scope Safeguard:FSS)に拡大し、その適用範囲を現在のみならず将来の活動をも含むものとするなど、抜本的強化が図られた。
3.日本の原子力関連資機材輸出規制
 わが国の輸出規制は、外為法(外国為替及び外国貿易法)に基づき実施されている。具体的には、外為法に根拠を持つ輸出令(輸出貿易管理令)等に規制対象の資機材等が規定され、それらを輸出する場合には、経済産業大臣の許可又は承認が必要とされている。実際の輸出にあたっては、税関が必要な許可等を受けているかどうかをチェックし、不正な輸出が行われないことを確保するしくみとなっている。
 日本は、1975年にNSG協議が開始された時からのメンバーであり、part2創設の協議にも積極的に参加した。part2創設後はその事務局(Point of Contact:POC)を引き受け、1995年からはpart1の事務局もつとめるなど積極的な役割を果たしている。
 NSG part2の創設を受けて、1992年12月に、輸出令及び外為令(外国為替令:外為法のもとで役務取引を規制する政令)が改正され、それぞれにNSG part2の規制対象品目が追加された。これにより、現在の輸出令及び外為令には、NPT、NSG part1及びpart2の規制対象品目のすべてが掲げられている。なお、1992年7月には、通産省(現、経済産業省)が「大量破壊兵器関連貨物・技術の輸出管理について」という通達を出し、輸出の際に、最終用途の誓約を最終需要者から取得すべきこと等のルールを明らかにしている。具体的には、原子力汎用品の輸出にあたって調査すべき事項を16項目にわたって示しており(表7参照)、さらに、輸出許可申請にあたって、取得・提出すべき書類や誓約書を定めている(表8参照)。
 なお、1996年12月、日本の電子機器メーカーH社と商社R社が核兵器の開発、製造に利用可能で、NSG part2の規制品目である精密光学測定装置18台を通産大臣の許可を得ないで韓国経由で中国に輸出した事件が、日本におけるNSG輸出規制に関わる外為法違反の最初の事例である。また、この他の原子力関連の外為法違反事例として、1986年から1987年にかけてP社が、原子炉の制御棒素材として用いられることから、当時のココムに基づき輸出が規制されていたハフニウムを、無承認で東ドイツに輸出した事件がある。
<図/表>
表1 各国際安全保障輸出規制の概要
表2 核不拡散関係年表
表3 NSGガイドラインの主要部分(NSG part1)
表4 NSGガイドラインの規制品目(NSG part1)
表5 NSG part2ガイドラインの主要条文
表6 NSG part2ガイドラインの規制品目
表7 原子力関連資機材の輸出にあたって調査すべき事項
表8 輸出許可の申請にあたって取得・提出すべき書類と誓約書
図1 大量破壊兵器、ミサイル、通常兵器及び関連物資等の軍縮・不拡散体制の概要

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<関連タイトル>
核兵器不拡散条約(NPT) (13-04-01-01)

<参考文献>
(1) 国吉 浩:原子力関連輸出規制と違反事例、日本原子力学会誌、Vol.41 No.8 p.9?19(1999)
(2) 国吉 浩、神田啓治:核不拡散輸出管理体制の強化と将来の課題、日本原子力学会誌、Vol.40 No.10 p.33?41(1998)
(3) 朝日新聞社発行:知恵蔵、69 (2000)p.860
(4) 外務省ホームページ:軍縮・不拡散、http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/hosho.html
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