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<概要>
 日加原子力協定は、旧協定が1960年に締結され、カナダ産ウランの輸入が行われてきたが、その後、核不拡散の面からカナダ政府が核物質の輸出規制強化政策を打ち出したため協定改正の必要が生じた。1974年に始まった改正交渉は一時はウランの対日供給を停止する等、難航したが、3次にわたる交渉の結果、1980年9月に新協定が発効した。その後、カナダ政府の事前同意を包括化する書簡の交換が行われ、カナダ産ウランを含む使用済燃料再処理に際し、1件ごとに事前同意を得る必要がなくなった。
 本協定下で実際に行われている協力としては、カナダの鉱山で産出された天然ウランはカナダで精錬、転換された後、米国、フランスで濃縮され、日本へ輸送されていることが挙げられる。また今後は、一部のウランは直接日本へ輸送され、六ヶ所村等、日本国内で濃縮されることになる。
<更新年月>
2003年03月   

<本文>
1.日加協定の締結に至る経緯
 わが国は、1960年7月にカナダとの間で原子力協定を締結し、これにもとづきカナダ産ウランの輸入を行ってきたが、1974年5月のインドの核実験に使用されたプルトニウムが、カナダ製原子炉から生じたものであったことに衝撃を受けたカナダ政府は、1974年12月、原子力資材等の輸出に関する規制を強化する政策を表明し、各国との間の原子力協定を、供給国の規制権を強化する方向で改正することとした。
 これを受けて日加間でも協議が開始されたが、カナダは1977年1月、同協議の進捗に不満を示し、一方的にウランの対日供給を停止するに及んだ(ユーラトム諸国およびスイスに対してもカナダは同様の措置をとった)。1978年1月、3次にわたる協定改正議定書の仮署名がなされ、カナダはウランの対日供給停止を解除した。
 その後、同年8月、東京において、同議定書は本署名され、両国の国内手続終了後(わが国では1980年5月に国会で承認された)、1980年9月、発効した。
 1983年4月には、日加原子力協定上のカナダ政府の事前同意を包括化するための書簡の交換がオタワにおいて行われたことにより、カナダ産ウランを含む使用済燃料の再処理等に際し、1件ごとに同国政府の事前同意を得る(個別同意)必要がなくなった。このため、わが国の核燃料サイクル活動は、一層円滑に進展することとなり、日加間の原子力協力はより強固なものとなった。
 この書簡により、
(1) 再処理、貯蔵、移転等が、現在のおよび予定中の日本国の原子力計画の表の枠内で行われること
(2) 第三国へ移転される特定物質(日加原子力協定の対象となる物質)が、カナダと当該第三国との間の原子力協定の対象となること
−−などの条件を満足すれば、
 (a) わが国管轄内における再処理、プルトニウムの貯蔵、および再処理のための特定物質の管轄外への移転に対して、カナダ政府の事前同意が包括的に与えられること
 (b) わが国から移転された特定物質の第三国での再処理、および当該特定物質の再処理後のわが国への再移転ができること−−がカナダ政府により確認された。
2.日加合同作業委員会の開催
 改正議定書署名と同時に取り交わされた交換公文にもとづき、毎年1回合同作業委員会が開催され、わが国内に存在する協定対象核物質量の確定作業その他、原子力協力に関する協議が行われてきており、1991年7月にも東京で第9回協議が開催され、協定の実施状況、両国の原子力政策および原子力分野における多国間協力等の諸問題につき、率直かつ有意義な意見交換が行われた。
3.協力の態様
 わが国はカナダとの間に、原子力協力協定を締結して以来、カナダ産ウランの輸入を主として長期契約により行ってきた。
 輸入の形態としては、カナダが国内に濃縮施設を有していないため、カナダの鉱山で産出された天然ウランは、カナダでの製錬、転換等濃縮前の所要の段階を経て、米、フランス等に輸送され、ここで濃縮されたあと、わが国に輸送されることとなっている。しかし、一部のウランについては、直接カナダよりわが国に輸送され、国内で濃縮されることとなる。
 カナダは、世界有数のウラン資源保有国であるとともに、その西側先進国としての政治的、経済的安定度を考慮すれば、カナダは長期にわたって最も信頼できる安定的なウラン供給国の一つであるといえる。
4.協定での規定内容の概要
 協定での規定事項と内容概略を、 表1−1 および 表1−2 に示す。
<図/表>
表1−1 日加原子力協定での規定事項(2000年5月)(1/2)
表1−1  日加原子力協定での規定事項(2000年5月)(1/2)
表1−2 日加原子力協定での規定事項(2000年5月)(2/2)
表1−2  日加原子力協定での規定事項(2000年5月)(2/2)

<関連タイトル>
日本の原子力に関する国際協力 (13-03-03-01)

<参考文献>
(1) (社)日本原子力産業会議(編集発行):原子力年鑑 平成4年版(1992年11月)
(2) 外務省原子力課(監修):原子力国際条約集、(社)日本原子力産業会議(1993年6月10日)p.18−21
(3) 科学技術庁原子力局(監修):原子力ポケットブック1994年版、(社)日本原子力産業会議(1994年3月)
(4) 原子力委員会(編):原子力白書 平成5年版、大蔵省印刷局(1993年12月)
(5) (社)日本原子力産業会議(編集発行):原子力平和利用に関する二国間協力、第11章国際協力の推進、原子力ポケットブック2002年版(2002年11月8日)p.382−387
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