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<概要>
 わが国のアイソトープ(RI)の利用に関する技術の向上および普及を図ることを目的として、アイソトープの使用者、研究者の団体として日本アイソトープ協会が、昭和26年(1951年)5月1日に発足し、昭和29年(1954年)には社団法人に改組した。その後、昭和46年に「日本アイソトープ協会」に改称した。協会は、理事会のもと、5つの部、および茅記念滝沢研究所、仁科記念サイクロトロンセンター、甲賀研究所の3つの研究施設で構成している。調査研究活動や教育訓練活動などのために、理工学部会、ライフサイエンス部会、医学・薬学部会、放射線取扱主任者部会の4つの部会および各種の委員会が設けられている。また、RIの供給や各種線源の製作、RI廃棄物の廃棄、小型サイクロトロンによるポジトロン核医学やPIXE分析の研究開発、放射線処理・加工に関する試験研究、講習会等の開催、広報誌や学術誌の発行などの活動を行っている。
<更新年月>
2009年02月   

<本文>
1.設立の経緯と目的
 わが国の放射性同位元素の製造と利用は、理化学研究所の仁科研究室に最初のサイクロトロンが建設された昭和12年(1937年)に始まるが、昭和20年の終戦とともにわが国のサイクロトロンは占領軍によって総て撤去され、中断した。
 この間に米国では、昭和17年(1942年)に初めて出現した原子炉により各種の放射性同位元素(通称ラジオアイソトープ、RI)の製造と供給が可能となり、原子力の利用が、科学、医療、産業に新しい発展をもたらした。
 わが国においては、まだ占領下にあった昭和24年(1945年)、仁科芳雄博士の尽力によって、米国からの原子炉で作られたRIの輸入の途が開き、昭和25年4月10日に、米国より仁科博士に寄贈された放射性同位元素(Sb−125,14.8MBq)の第一便が到着した。その後、対日援助資金の一部によりRIの輸入が開始した。
 このRIの使用についての全国の研究者から申請される書類の審査などの事務的処理は、総て当時の総理府科学技術庁(現文部科学省)行政協議会が行い、その配分、受渡しなどの実務は、理化学研究所仁科研究室が行っていた。
 昭和26年には、米国以外の国からの輸入も始まり、核種や数量も増大した。さらに、RIの輸入は、講和条約の締結に伴って政府間貿易から民間貿易に切り替わり、使用者も急激に増加し始めた。
 このため、RIの一括輸入による購入費の低廉化、その配分の実務、安全取扱のための技術訓練と啓蒙、および各分野における研究の相互連絡などを行う機関の設置が必要になり、昭和26年(1951年)5月1日、わが国の科学技術の振興に資するため、RIの利用に関する技術の向上および普及を図ることを目的として、RIの使用者、研究者の団体として日本放射性同位元素協会(Japan Radioisotope Association:JRIA)が発足した。当初は任意団体であったが、昭和29年(1954年)5月1日には社団法人に改組し、その後、日本アイソトープ協会に改称した。
2.組織
 協会は、図1に示すように、理事会のもと、事務的業務を担当する総務部と事業の推進を担当する学術部、環境整備部、アイソトープ部および医薬品部の5つ部、および茅記念滝沢研究所、仁科記念サイクロトロンセンターおよび甲賀研究所の3つの研究施設で構成している。
 また、協会は、研究者や技術者で構成される理工学部会、ライフサイエンス部会、医学・薬学部会および放射線管理者で構成される放射線取扱主任者部会の4つの部会、さらに、各種の委員会を随時設けている。
 協会の運営に係わる事務的業務は、事務局長が総括している。
3.主な事業の概要
3.1 部会・委員会における最近の活動
(a)理工学部会
 理工学分野におけるアイソトープ・放射線の利用促進を図るための検討、放射線施設における放射線防護用設備・機器に関する資料の企画、はじめてRIを使用する人を対象にした放射線教育の支援活動、中性子イメージングに関する調査、検討などを行っている。
(b)ライフサイエンス部会
 RIをトレーサとして用いる研究用機器に関する資料の収集と利用者への情報提供、分子生物学・バイオテクノロジ−・環境科学などの領域にRIの利用が拡大していることへの対応などの調査研究を行っている。薬学、薬理学分野におけるアイソトープ利用の検討、獣医療における核医学利用の調査・検討、食品照射についての調査・検討を行っている。
(c)医学・薬学部会
 放射性医薬品の施設内での取扱および核医学イメージングおよび検査技術の向上に関する検討、放射性医薬品の安全確保に資するための副作用事例調査の実施、イムノアッセイ検査の精度向上に資するための全国コントロールサーベイの実施、核医学検査における放射線管理上の諸問題に関する調査研究、放射線治療における新技術導入に係る諸問題の検討などを進めている。
(d)放射線取扱主任者部会
 全国7支部における研究会、勉強会、見学会および法定の教育訓練講習会を全国各地域で開催、RI事業所等からの依頼に基づく法定の教育訓練のための講師派遣などの事業を行っている。また、職種、専門分野ごとの管理技術情報の交換を図るため、横断的な組織化の推進などを進めている。さらに、関係法令に関する検討、関係方面への意見具申および主任者の地位向上に関する活動を行っている。
3.2 出版物の編集・刊行
 広報誌”Isotope News”と学術誌”RADIOISOTOPES”を定期的(月刊)に発行している。また、関係法令集、解説書、実務マニュアル、国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告・報告、訓練用ビデオなども発行している。
3.3 研究発表会、講演会、講習会の開催
 「アイソトープ・放射線研究発表会」(毎年)をはじめ、第1種および第3種放射線取扱主任者講習(文部科学省指定、毎年10回以上)、第1種作業環境測定士(放射性物質)(厚生労働省指定、毎年2回)、アイソトープ基礎技術入門講習会(年2回)、その他、学術講演会、見学会やRI取扱に関する講習会を開催している。また、RIおよび放射線利用に関する国際会議を隔年に開催している。
3.4 RIの供給や各種線源の製作
 国内で利用される精製RI、標識化合物および放射性医薬品の注文、輸入、加工、製造、頒布および医療、研究、産業分野で使用する各種の大・小密封線源、放射能標準体、比較線源などの作製・供給の窓口となっている。
3.5 RI廃棄物の廃棄受託
 RI使用施設(医療機関を含む)から発生するRI廃棄物の集荷をし、保管したRI廃棄物のうち医療用RI廃棄物については、協会の茅記念滝沢研究所においてRI廃棄物の保管と適切な処理を行っている。研究用RI廃棄物については、一部を(独)日本原子力研究機構に依頼して処理を行っている。
3.6 仁科記念サイクロトロンセンター
 仁科記念サイクロトロンセンターでは、小型サイクロトロンで製造されたポジトロン核種を利用したポジトロン核医学の検査・診断および研究、さらにイオンビームを利用した微小試料中の微量な元素を検出するPIXE分析を行っている。また、小型サイクロトロンを全国共同施設として開放している。
3.7 甲賀研究所
 放射線処理・加工など大線源利用の試験研究および研究開発を行うほか、医療用具の放射線滅菌における線量設定に伴う微生物試験および各種の試験照射を受託している。
(前回更新:2004年3月)
<図/表>
図1 日本アイソトープ協会の組織
図1  日本アイソトープ協会の組織

<参考文献>
(1)(社)日本アイソトープ協会(編):(社)日本アイソトープ協会(平成9年6月)
(2)(社)日本アイソトープ協会(編):Japan Radioisotope Association、日本アイソトープ協会
(3)(社)日本アイソトープ協会ホームページ:http://www.jrias.or.jp
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