Particle Induced X-ray Emission PIXEは、加速器で発生させたイオン(主としてプロトン)で励起される元素の特性X線を測定して分析を行う方法である。この分析法の特徴として、高感度な多元素同時分析法であること、非破壊分析が可能であること、比較的分析時間が短いことが挙げられる。様々な形態を取る環境試料を数多く分析する必要のある環境汚染研究において、これらの特徴を有するPIXE分析法は有利である。簡便な前処理で短時間に多くの元素分析が行えることは、時間的な変化を追跡したり、地域差を詳細に調べたりする環境モニタリングに最適な手法である。電子やX線励起による蛍光X線分析に比べ、X線スペクトルのバックグラウンドが低いことや、通常用いるSi(Li)検出器では、軽元素からのX線を検出しないことから、生物試料を構成する主要元素であるC、H、N、O等の軽元素マトリクス中の微量元素分析にもっとも適している。近年、励起源であるイオンビームをミクロンレベルに絞って照射を行えるようになり、微少領域の局所分析も可能になった。