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<概要>
 1964年、放射線利用の拡大に伴い連邦議会の認可のもとに非営利団体「米国放射線防護審議会(NCRP:National Council of Radiation Protection and Measurements)が設立された。NCRPの任務(Mission)は、放射線の防護および放射線の測定方法についての調査、研究開発等であり、その成果は、NCRP Reportにまとめられ連邦政府や社会に提供される。NCRPは100名の審議会委員で構成されている。NCRPの科学委員会には6分野の分野別プログラム委員会(PAC)がある。その下に、2008年には20の委員会があり、各審議会委員はそれぞれ専門の委員会で活動する。委員会の審議結果は厳しい査読を経てNCRPレポートとして発表されており、レポートの信頼度は高い。
<更新年月>
2009年01月   

<本文>
1.任務
 米国の放射線防護の組織的な活動は、1929年の「X線とラジウム防護諮問委員会(The Advisory Committee on X−ray and Radium Protection)」の創設から始まる。1964年には、放射線利用の拡大に伴い連邦議会から非営利団体の「米国放射線防護審議会(NCRP:National Council of Radiation Protection and Measurements)」と認められた。
 NCRPは、放射線の防護および放射線の測定方法について調査し検討する。その成果は、NCRP Reportにまとめられ連邦政府や社会に提供される。
 NCRPの憲章で、その任務(Mission)は以下のようになっている。
(1)放射線の防護方法と、特に放射線の防護に関する放射線量と単位、放射線計測法に関する重要な情報と勧告を集め、解析し、解説して公知を図る。「情報の公知」
(2)放射線防護、放射線量と単位、放射線計測の科学などを研究する機関が、情報、施設や装置の利用と協力を進め、業務の活性化を図る方途を提供する。「研究協力」
(3)放射線量と単位、放射線計測の基礎的考え方、およびその考え方の利用、また放射線防護について明らかにする。「基礎研究」
(4)国際放射線防護委員会(ICRP)、連邦放射線審議会(FRC)、国際放射線単位・測定委員会(ICRU)、そのほか、放射線量と単位、放射線測定法および放射線防護に関連する連邦機関と国際機関、州政府と民間に協力する。「国内外の協力」
2.組織
 図1は組織の概要を示す。審議会委員(Council Members)は100名で、委員は審議会の理事を選ぶので「選挙人」とも呼ばれ、任期は6年で、毎年約14人が交代する。委員は、11名の理事会員を選挙で選び、理事会の任期は1年となっている。
 審議会委員のほかに名誉会員(Distinguish Emeritus Members)、協力会員(Consociate Members)、補助会員(Adjunct Members)がある。
 審議会の業務は事務局員を別にして、審議会委員が勤める。業務の中心は科学委員会で、科学委員会には分野別プロブラム委員会(PAC:Program Area Committee)があり、科学委員長(Scientific Vice Presidents)が夫々の委員会を運営する。
 管理運営委員会は、財務委員会、交代する審議会委員の候補者推薦委員会、年会プログラム委員会を運営する。
3.科学と諮問に関する業務(2008年)
(1)分野別プログラム委員会(PAC)
 各々のPACの下に課題の6〜10名の審議会委員で構成される下記の委員会がある。
PAC 1:標準、疫学、放射線生物学、放射線リスクの分野
 電離放射線による甲状腺ガン、宇宙飛行士の放射線被ばく、短期の月世界飛行の放射線防護、放射線療法によるガンの再発と心肺への影響、ラドンのリスク
PAC 2:職業被ばくの安全性の分野、およびPAC 3:原子力と放射線の安全・保安の分野
 原子力テロの影響に対する方策決定に必要な情報、イメージガイドによる医療放射線利用の安全技術、被ばく量の自己評価プログラム、
PAC 4:医療の放射線防護の分野
 放射性物質により汚染した人の管理、原子力事故や放射性物質事故のモニターと汚染除去、電離放射線による胎児などの危険性、
PAC 5:環境放射線および放射性廃棄物の分野
 有効な流体や環境モニタリングプログラムのデザイン
PAC 6:放射線計測および線量測定の分野
 米国民の放射線被ばく量、内部被ばく量計測法の確実性、放射線量再評価の基本原則
(2)対国民政策と放射線リスク情報に関する活動
・公知助言パネル(Advisory Panel on Public Policy):
 科学委員会の活動に含まれないが、放射線に関する情報の公知の任務は当審議会の憲章第一項に記載されている。この課題については、2006年に標記パネルが創られた。当パネルでは、放射線防護審議会(NCRP)は行政府の方策を検討し、助言し科学的根拠と情報を与えるが方策決定に参加しない。
・非電離放射線助言パネル(Advisory Panel on Nonionizing Radiation):
 当該放射線の生態への影響、計測法、人の健康影響、基礎と利用などに関して検討し、報告書が出版されている。
4.成果の公表
 科学委員会の業務は、最終的には報告書の草稿の作成となっている。この草稿は「報告書作製委員会(Scientific Report−writing Committee)」を経る。
 報告書作製委員会では、草稿はまず特任グループの査読(Critical Review)を経る。次いで、全審議会委員と関連機関の査読を経てコメントによる加筆訂正の後に、満場一致で査読は終了する。
(前回更新:2004年2月)
<図/表>
図1 放射線防護審議会(NCRP)の主要な構成(2008年)
図1  放射線防護審議会(NCRP)の主要な構成(2008年)

<関連タイトル>
米国原子力規制委員会(NRC) (13-01-02-06)
国連科学委員会(UNSCEAR) (13-01-01-19)
国際放射線単位測定委員会(ICRU) (13-01-03-11)
国際放射線防護委員会(ICRP) (13-01-03-12)

<参考文献>
(1)米国放射線防護審議会 NCRP ホームページ:About NCRP、Our Mission、Members、Current Program、http://www.ncrponline.org/
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