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<概要>
 国際連合大学(United Nations University:UNU)は、1969年に発表されたウ・タント国連事務総長の構想に端を発し、その後、国連とユネスコの協議を経て、1973年12月の国連総会において採択された国連大学憲章に基づき設立された。東京都に大学本部が設置されたのは1975年9月である。現在、わが国には大学本部の他、高等研究所がある。国連大学の方針は24名から成る理事会が決定する。財政は各国政府などからの拠出金で賄われ、2002年の歳入は約43百万米ドルである。人員は約250名であり、本部の他、世界各地の研究・研修センターにおいて活動している。主要な活動は「平和とガバナンス(統治)」と「環境と持続可能な開発」に集約される研究活動と大学院レベルの研修による能力育成である。
<更新年月>
2004年06月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.設立の経緯と目的
(1)ウ・タント国連事務総長の構想と国連大学の設立
 1969年9月15日、第24回国連総会への年次報告において、ウ・タント国連事務総長(当時)は国際連合大学設置の構想を明らかにした。この構想では、設立されるべき大学は「国連憲章が定める平和と進歩のための諸目的に合致し、多くの国々から集まった教授陣と学生から成り、学生たちが国際的な雰囲気の中で学ぶことによっていっそう理解しあえる場」とされた。ウ・タント構想では国連大学は伝統的な従来の大学と異ならなかったため、ことに先進国政府を中心に少なからぬ反対の声が上がった。一方、発展途上国の多くは同構想に肯定的であった。その理由は、1960年代の第一次開発10年計画以来、途上国における国連の評価が相対的に高かったことと途上国が自国の学術水準の向上に国連大学が寄与すると考えたことによる。
 ウ・タント構想以降、国連と国際連合教育科学文化機関UNESCOによる準備期間を経て、1973年12月に国連総会は国連大学憲章を採択した。設立が決定した国連大学は、当初のウ・タント構想とは異なり「研究、大学院レベルの研修および知識の普及に携わる、学者・研究者の国際的共同体(国連大学憲章第1条)」とされた。この目的を達成するため、国連大学は国連とUNESCOの共同の支援のもとに、企画および調整のための中枢機構ならびに先進国および開発途上国におかれる研究・研修センターおよび研究・研修プログラムのネットワークを通してその機能を果たす(同第1条)。
 具体的な活動は、次の四つの機能を果たすことによって地球規模の諸問題の解決に研究と能力育成を通じて寄与することである。
  1)学者の国際的共同体としての機能
  2)国連と国際学術社会との架け橋としての機能
  3)国連全体のシンクタンクとしての機能
  4)能力育成を支援する機能
(2)国連大学本部の設置までの経緯
 上記の設立構想が採択されると、日本政府は大学本部の東京誘致を呼びかけるとともに、大学基金への1億ドルの拠出、首都圏に本部施設ならびに研究研修センター施設の提供の意向を表明した。これを受けて国連は国連大学本部の東京設置を決め、1975年9月、東京都内に暫定的本部施設を開設した。現在の本部施設は東京都より無償貸与された土地に日本政府の予算で1992年6月に建設された。大学基金への1億ドルの拠出は1986年6月までに終了した。研究研修センター施設も東京都の支援により1995年に完成、国連大学高等研究所(UNU/IAS)として1996年4月に発足した。なお、UNU/IASは2004年4月より横浜みなとみらい21地区に移転した。
2.組織・機構
 図1は国際連合機構図である。国連大学は国連組織の中で国連人権高等弁務官事務所などと同様、総会および経済社会理事会のもとで活動している。
 国連大学の原則ならびに方針は、国連大学理事会が決定する。理事会は国連事務総長とUNESCO事務局長が共同で任命する24名の理事から成る。理事の任期は6年で、理事は出身国を代表するのではなく、個人の資格で理事会に出席する。国連事務総長、UNESCO事務局長、国連訓練調査研修所(UNITAR)所長の3名が職務上の理事として理事会に加わる。国連大学の学長も理事会のメンバーである。
 図2は国連大学の本部および研究・研修センターのネットワークを示す。わが国に設置されている大学本部および高等研究所の所在地は以下のとおりである。
 本部:150-8925 東京都渋谷区神宮前5-53-70
 高等研究所:220−0012 横浜市西区みなとみらい1-1-1
       パシフィコ横浜会議センター 横浜国際協力センター内
 国連大学は幹部職員として学長、上級副学長、副学長、学長特別顧問を擁する。2004年4月現在の幹部職員およびその担当分野は次のとおりである。
  学長:ハンス・ファン・ヒンケル(ユトレヒト大学前総長)
  上級副学長:ラメシュ・タクール、「平和とガバナンス(統治)」担当
  副学長:安井 至、「環境と持続可能な開発」担当
  学長特別顧問:横田洋三
 また、UNU/IASではA.H.ザクリ所長の下、持続可能な開発に向けて戦略的アプローチに重点を置いた研究研修が行われている。
3.財政・人員
 国連大学の財政は国連大学憲章第9条に規定されているように自発的に供与される拠出金、またはそれからの収益に基づく。すなわち、資本費用および経常費用は、a)各国政府から直接に、または国連、専門機関および国際原子力機関のいずれかを通じて寄せられる拠出金、b)財団、大学および個人を含む非政府財源から寄せられる拠出金によって賄われる。2002年の実績では、収入が約43百万米ドル、支出が約32百万米ドルである。表1および表2は、各々、国連大学の収入および支出の内訳を研究・研修センターあるいはプログラム別に示す。表3−1表3−2および表3−3は、各国政府およびその他の機関・団体の拠出金と関連プログラムを示す。
 国連大学の人員は総計約250名で、わが国にある本部と高等研究所の人員の合計は約150名である。人員数の内訳を各センターあるいはプログラムごとに表4に示す。
4.主要な活動
 国連大学の学術活動は大学本部と世界各地にある研究・研修センターおよびプログラム、あるいは提携・協力関係を結ぶ各国の学術機関や研究者を結ぶネットワークを通じて展開される。現在、諸活動は「平和とガバナンス」および「環境と持続可能な開発」の二つのテーマに集約されている。
 「平和とガバナンス」では、紛争の本質、原因、発生のメカニズム、紛争に使われる手段および紛争がもたらす結果などを解明し、紛争の防止、処理、解決の方法を分析し、持続可能な平和と正しい統治の促進に寄与することを目的にしている。
 「環境と持続可能な開発」では、人間活動と自然環境との相互作用と、それが天然資源の持続可能な管理に及ぼす影響に焦点をあてている。天然資源の管理、水問題、地球全体の環境ガバナンス、および持続可能な都市と産業の開発という四つの研究テーマの中で、自然科学、社会科学両面から多領域的アプローチを行っている。
 国連大学の機能の一つである能力育成については、大学院レベルの研修によって学術研究者の知識拡充、応用、普及に寄与する能力を増進する活動を行っている。その主眼は学術面における途上国の能力強化にある。研修プログラムとしては、上級専門研修プログラム(短期研修、長期研修、学位関連プログラムなど)、ネットワーク作りを通じた能力育成などがある。ネットワーク活動では、食糧・栄養ネットワーク、乾燥地域の総合的土地管理、淡水資源、持続可能な山岳開発、バイオテクノロジーなどがある。
 その他、国連大学は多くの国連諸機関と提携関係を結び、目標に向けた諸活動を実施するとともに、出版やIT活動によって知識の普及に努めている。
 表5は国連大学研究・研修センターの活動の概要を示す。
 国連大学全般に関するニュースが掲載されているインターネット・ニュースレターも毎月内容が更新され、内容を知るのに有益です。
<図/表>
表1 国連大学の歳入(2002年)
表1  国連大学の歳入(2002年)
表2 国連大学の支出内訳(2002年度)
表2  国連大学の支出内訳(2002年度)
表3−1 各国政府およびその他の機関・団体からの拠出金(2002年)(1/3)
表3−1  各国政府およびその他の機関・団体からの拠出金(2002年)(1/3)
表3−2 各国政府およびその他の機関・団体からの拠出金(2002年)(2/3)
表3−2  各国政府およびその他の機関・団体からの拠出金(2002年)(2/3)
表3−3 各国政府およびその他の機関・団体からの拠出金(2002年)(3/3)
表3−3  各国政府およびその他の機関・団体からの拠出金(2002年)(3/3)
表4 国連大学の職員数(2002年12月31日現在)
表4  国連大学の職員数(2002年12月31日現在)
表5 国連大学の研究・研修センターの活動の概要
表5  国連大学の研究・研修センターの活動の概要
図1 国際連合機構図:国連の主要機関
図1  国際連合機構図:国連の主要機関
図2 国連大学研究・研修センターのネットワーク
図2  国連大学研究・研修センターのネットワーク

<関連タイトル>
エネルギーに関する国際的取り組み (01-01-01-01)
国際原子力機関(IAEA) (13-01-01-17)
国連科学委員会(UNSCEAR) (13-01-01-19)
国連食糧農業機関(FAO) (13-01-01-20)
世界保健機関(WHO) (13-01-01-21)

<参考文献>
(1)国際連合大学:国際連合大学ホームページ
(2)国際連合大学広報部:国際連合大学年次報告書2002
(3)United Nations University、 Annual Report2002、United Nations University、(2003)
(4)国際連合大学公報部:「人間の安全保障と発展に学術面で寄与する国際連合大学」
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