<本文>
平成2年度における放射性同位元素等に係る事故は、紛失3件であった。また、周辺公衆への影響はなかった。
(1)平成2年度における放射性同位元素等に係る事故は、愛知県の名古屋大学理学部及び兵庫県の灘神戸生活協同組合におけるガスクロマトグラフの所在不明、東京医科大学病院における密封小線源の所在不明の計3件であった。これらについては、立入り検査等が実施れさ、所要の措置が指示された。
(2)東京大学医学部附属病院問題について
研究、治療の目的で実施している同病院において、平成元年11月に実施した科学技術庁(現文部科学省)の立入検査の結果、放射性同位元素等の管理不備が判明し、37項目の指摘がなされた。また、その後同病院敷地内の土壌において
自然放射線のレベルより高い
放射線が測定され、放射性同位元素によって汚染されていることが判明した。
これらの管理不備については、全ての指摘事項の改善が完了した。
また、汚染土壌については、平成3年5月20日までに撤去、復旧を完了し、同病院の
保管廃棄設備において保管廃棄されている。
放射線障害防止法令に基づき科学技術庁(現文部科学省)に報告のあった
放射性同位元素取扱施設の事故・故障(平成2年度) |
発生年月 | 態様 | 事業所名 | 概 要 |
2. 6.28(判明) | 紛失 | 名古屋大学理学部 | 平成2年6月28日、立入検査の結果、所持しているはずの63Ni(ECD収納ケース)370MBqが所在不明であることが判明した。
調査の結果、当該線源を装備したガスクロマトグラフ1台が今後の使用予定がないものとして、理学部不要品投棄場所に投棄され、鉄屑回収業者に売り払われた。 |
3. 2.12(判明) | 紛失 | 灘神戸生活協同組合 | 平成3年2月28日、同組合から63Ni(ECD収納ケース)370MBqが紛失したとの報告があり、翌日の立入検査でも確認された。
調査によると、使用頻度の落ちた当該線源を装備したガスクロマトグラフ1台を倉庫に入れたところ誤って不要機器として処分され、神戸市の不燃ゴミ処分場へ廃棄された。 |
3. 3.26(判明) | 紛失 | 東京医科大学病院 | 同病院で所有している60Co密封小線源の在庫確認を指示していたところ、許可数量より少ないとの報告があった。このため詳細調査を求めていたところ当該線源2本(針37MBq、管370MBq)が紛失していることが平成3年3月26日に判明した。
当該線源は、昭和20年代後半から治療に使用されていたが、昭和36年以降は使用を中止し、貯蔵箱に貯蔵していた。その後、目視による確認は実施していたが、そのうちの2本については容器のみで、線源自体は紛失していた。 |
〔注:ECD=エレクトロン・キャプチャ・ディテクタ〕
<関連タイトル>
放射性同位元素等取扱事業所における事故等の年度推移(1998年度まで) (03-05-04-01)
放射性同位元素 (08-01-03-03)
放射性同位元素等取扱施設からの放射線(能) (09-01-02-07)
<参考文献>
(1)原子力安全委員会(編):「平成2年度の放射性同位元素取扱施設の事故・故障(放射線障害防止法に基づき報告があったもの)」、平成3年度版 原子力安全白書、76、331、(1991).