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<概要>
 昭和41年、わが国最初の商業用原子力発電の営業を開始した日本原子力発電東海発電所は、平成10年3月31日に運転を停止した。使用済燃料の冷却・搬出の後、原子炉の解体撤去作業に入る。東海村は運転停止後も固定資産税(償却資産)の課税を継続することを決めた。課税期間は各法令上の規制が解除される電気工作物の変更(廃止)の届出提出までとすることが、妥当とされている。
<更新年月>
2000年02月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.東海発電所の運転停止と廃止措置
 日本原子力発電(原電)東海発電所(炭酸ガス冷却炉、16.6万kW)は、昭和41年(1966年)7月に商業用原子力発電の営業運転を開始した。発電単価が軽水炉の約2倍(20円/kWh)、また国内唯一の炉型であることから、保守費、燃料サイクル費が割高であるなどの理由で、保有燃料を使い切る平成10年(1998年)3月31日に31年8ヶ月に及ぶ営業運転を停止した。この間、総発電電力量は約290億kWh、発電時間は21万5,320時間、平均時間稼動は77.5%で、日本における商業炉のパイオニアとして実績を積み重ねた。そして平成10年(1998年)5月から、約3年半をかけ使用済燃料約1万6,000本を炉内から取り出し、イギリスの再処理工場へ搬出後、平成13年度から安全貯蔵を経て解体撤去作業に入る予定である。廃止措置の経過を 図1 に、廃止措置スケジュールを 表1 に示す。

2.恒久的地域振興策の確立
 原子力発電所立地市町村は、その建設から運転さらに廃炉後までを含めて恒久的な地域振興策の確立を目指している。地域振興施策に関する立地自治体の検討事項としては、電源三法制度に則った交付金運用の強化、核燃料税の立地市町村への定率配分および税率の見直し、原子力発電施設に係る固定資産税の改善、原子力発電施設等立地地域長期発展対策交付金の弾力的運用、電源地域産業育成支援補助金の海外研修事業の弾力的運用などとなっている。
2.1 固定資産税課税の改善
 固定資産税課税に関する主な改善点は(1)汽力発電設備と同じ税制上の耐用年数15年を実態に即した年数に延長すること(現行償却資産価値は5年で2分の1になる)、(2)償却資産による頭打ち制度の撤廃、(3)課税期間を解体撤去まで延長の3項目である。原電東海発電所の廃炉で固定資産税改善の早急な見直しが生じた。
2.2 固定資産税課税に対する茨城県および東海村の見解
 茨城県および東海村は東海発電所の固定資産税課税に対して次のような見解を示した。
 原電東海発電所の発電施設は、平成10年3月31日に営業運転を停止したが、原子炉から使用済燃料を全て排出するまではその冷却・保管を行い、かつ放射線管理など施設及び環境の安全管理についてはこれまでと同様に実施する。
 課税の取扱いにあたっては、
(1) 原電は、電気事業法上の卸電気事業者また核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律上の原子炉設置者として、原子炉施設及び環境の安全を確保することも当然その事業の一つであることから、東海発電所の営業運転停止以降も当該施設は原電の事業用資産と認められる。
(2) 当該施設について、法人税法の固定資産税として運転停止以降も申告が継続される。
 などの理由により、当該施設について固定資産税(償却資産)の課税客体となり得るものと判断する。
 また、課税できる期間としては、各法令上の規制が解除される電気工作物の変更(廃止)の届出を提出するまでとすることが、妥当と思われる。
 東海村では、運転停止前から、固定資産のうち土地・家屋以外の事業用の償却資産も課税継続を検討し、使用済燃料取り出しのための冷却など、安全確保のための一部の機器の運転も「事業」に当たるとみなしていた。上記見解に従がい、原電が使用済燃料搬出を終えて解体届・電気工作物の変更(廃止)届を提出する2001年度まで固定資産税として課税が継続されることを決定した。
2.3 核燃料税
 立地市町村は、装荷核燃料の価格の100分の7に相当する核燃料税を発電用原子炉の設置者(電力会社)に課税しており、5年ごとに自治省(現総務省)の認可を得ている。核燃料税は法定外普通税(地方団体が地方税法で定められた税目のほかに実情に応じて設けた新規税目)の一種で、1976年に福井県で始めて導入され、現在では原子力発電所が立地される12都道府県で実施され,立地および周辺地域の原子力安全対策、民生、生業の安定対策などを図るための費用に充てられている。 表2-1表2-2 に核燃料税の現状を示す。
2.4 茨城県における新法定外普通税「核燃料等取扱税」の導入
 茨城県は原子力発電所以外にも数多くの原子力事業所が立地しているにもかかわらず、現行の核燃料税がこれらの事業所に課税できる仕組みになっていないことから、原子力事業所の立地に伴う各種の財政需要に応える財源の不足を補う新たな法定外普通税を平成11年4月に新設した( 表3 参照)。同様の法定外普通税は平成3年に創設された青森県の核燃料物質等取扱税で、ウラン濃縮低レベル放射性廃棄物の埋設、高レベル放射性廃棄物の管理等を課税対象としている。
<図/表>
表1 東海発電所の廃止措置スケジュール
表1  東海発電所の廃止措置スケジュール
表2-1 核燃料税の現状(1/2)
表2-1  核燃料税の現状(1/2)
表2-2 核燃料税の現状(2/2)
表2-2  核燃料税の現状(2/2)
表3 核燃料等取扱税の概要
表3  核燃料等取扱税の概要
図1 東海発電所の廃止措置の経過
図1  東海発電所の廃止措置の経過

<関連タイトル>
電源地域に対する電源立地交付金とそのメリット (02-02-01-04)
東海発電所(GCR)の廃止措置計画 (05-02-03-14)
原子力発電所立地市町村における原子力施設への課税 (10-07-03-02)

<参考文献>
(1) 通商産業省:総合エネルギー調査会研究部会報告書「商業用原子力発電施設の廃止措置に向けて」、1997
(2) 日刊工業出版プロダクション:日本原子力発電・東海発電所−わが国初の商業用原子炉廃止措置へ−、原子力eye、44(5)、p.26-27、1998
(3) 全国原子力発電所在市町村協議会(発行):全原協「30年のあゆみ」、1998年10月
(4) 茨城県ホームページ(および
(5) 茨城県自主税財源充実研究会ホームページ
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