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<概要>
 原子力発電所立地市町村は、その建設から運転さらに廃炉後までを含めて恒久的な地域振興策の確立を目指している。昭和49年(1974年)に電源三法制度(電源開促進税法、電源開発促進対策特別会計法、発電用施設周辺地域整備法)が創設されて以降、電源地域振興施策が順次強化されてきた。電源三法交付金による発電所立地地域の産業基盤の整備に伴い、雇用の創出や地場産業の振興などの経済的波及効果も大きい。発電所運転開始以降は、固定資産税を始めとする事業税や住民税、原子力関連事業者特有の核燃料税、核燃料物質等取扱税などが長期間にわたり地域財政の税収となる。
<更新年月>
2002年01月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.税金の種類
 税金は国、都道府県、市町村が行政サービスの提供する上で貴重な財源であり、全国同一負担となる国税と各地方公共団体により負担が異なる地方税に大別される。地方税はさらに道・府・県税と市町村税に分けられる。
 国税には、所得税、法人税、相続税、贈与税、地価税(平成10年度以降課税対象外)、消費税、酒税、たばこ税、たばこ特別税、揮発油税、地方道路税、石油ガス税、航空機燃料税、石油税、登録免許税、印紙税、自動車重量税、日本銀行券発行税、関税、とん(噸)税(港湾料または交通税の一種)、特別とん税、電源開発促進税がある。
 また道・府・県税には、普通税(税の使いみちが特定されていない一般税)である道・府・県民税、事業税、地方消費税、不動産取得税、たばこ税、自動車税、鉱区税、狩猟者登録税、核燃料税(法定外普通税)、固定資産税、ゴルフ場利用税と、目的税(税の使いみちが特定されている税)である自動車取得税、軽油引取税、入猟税、法定外目的税がある。ここで目的税とは、自動車取得税の場合は流通税の一種で、道路の建設・補修の費用に充てられるものであり、入猟税は鳥獣の保護や狩猟に関する費用に充てられる。
 市町村税には、市町村民税(個人・法人)、固定資産税、軽自動車税、鉱産税、特別土地保有税、市町村たばこ税、都市計画税、共同施設税、水利地益税、宅地開発税、国民健康保険税、事業所税、入湯税がある。
 税金は、納税者と税負担者が同一である直接税と納税者と税負担者が実質的に異なる間接税に分けられる。

2.電気事業における税金の割合
 電気事業者である電力会社は、株式会社として一般の税制にもとづく国税、地方税を負担するほか、電源開発促進税、また核燃料税といった電気事業特有の税を負担している。負担税額(水利使用料、道路占有料を含む)は年々増大し、売上高に対する割合も、昭和49年度(1974年)は法人税込みで4.9%(税額で約1,812億円)であったが、平成10年度(1998年)は、9.2%(税額で約1兆4,004億円)に増大した。 図1 に売上高(電気事業営業収益)に対する租税公課比率を、 図2 に電気事業の租税公課負担推移を示す。
 また、電気事業の税負担率をその他産業と比較すると、平成7年度〜9年度の売上高に対する租税公課の割合は、全産業平均が1.9%〜2.1%であったのに比べ、電気事業は8.8%〜9.3%と極めて高水準になっている。

3.恒久的地域振興策の確立と税金の見直し
 原子力発電所立地市町村は、その建設から運転さらに廃炉後までを含めて恒久的な地域振興策の確立を目指している。地域振興施策に関する立地自治体の検討事項としては、電源三法制度に則った交付金運用の強化、核燃料税の立地市町村への定率配分および税率の見直し、原子力発電施設に係る固定資産税の改善、原子力発電施設等立地地域長期発展対策交付金の弾力的運用、電源地域産業育成支援補助金の海外研修事業の弾力的運用などとなっている。
3.1 固定資産税課税の改善
 固定資産税課税に関する主な改善点は(1)汽力発電設備と同じ税制上の耐用年数15年を実態に即した年数に延長すること(現行償却資産価値は5年で2分の1になる、 図3 参照)、(2)償却資産による頭打ち制度の撤廃、(3)課税期間を解体撤去まで延長、の3項目である。
3.2 核燃料税の税率見直し
 立地市町村は、装荷核燃料の価格の100分の7に相当する核燃料税を発電用原子炉の設置者(電力会社)に課税しており、5年ごとに自治省(現総務省)の認可を得ている。昭和51年(1976年)度に福井県で始めて導入され、現在では原子力発電所が立地する12都道府県で実施されている。費用は原子力発電所の立地および周辺地域の安全対策、民生、生業の安定対策などに充てられている。 表1-1表1-2 に核燃料税の現状を示す。
 なお、福井県では福井県核燃料税条例が平成13年9月(2001年)公布され、課税率が100分の7から100分の10に増加した(福井県条例第四十六号)。
3.3 原子力発電所以外の原子力事業所を立地する地域の課税
 茨城県は原子力発電所以外にも数多くの原子力事業所が立地しているにもかかわらず、現行の核燃料税がこれらの事業所に課税できる仕組みになっていないことから、原子力事業所の立地に伴う各種の財政需要に応える財源の不足を補う新たな法定外普通税が平成11年4月(1999年)に新設された( 表2 参照)。
 同様の法定外普通税には、平成3年(1991年)3月に創設された青森県の核燃料物質等取扱税があり、日本原燃のウラン濃縮工場、再処理工場、低レベル放射性廃棄物埋設センター高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターの4施設を課税対象としている。ただし、青森県では2001年9月28日の期間更新(期間5年)にあたり核燃料物質等取扱税の税率引下げを行った。条例改正後の税率は、次のとおりである。
 ・製品ウラン:1キロ当たり1万6200円(旧条例:1万6900円)
 ・使用済燃料:(核分裂前のウラン重量)1キロ当たり2万3800円(旧条例:2万4800円)
 ・低レベル放射性廃棄物:1立方メートル当たり2万900円(旧条例:4万3700円)
 ・高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体):1本当たり63万円(旧条例:65万7000円)
 核燃料物質等取扱税の税率・金額は、施設立地に伴う道路・港湾整備、安全対策費など向こう5年間の財政需要額を基に必要な税収見込み額を算出し、県税務課が逆算して決めるもので、改正理由は、青森県六ヶ所村への使用済燃料など課税対象の搬入総量について、2001年9月28日から5年先までと同年9月27日までの過去5年間を比較すると過去5年間の約2倍と試算されたからであった。
<図/表>
表1-1 核燃料税の現状(1/2)
表1-1  核燃料税の現状(1/2)
表1-2 核燃料税の現状(2/2)
表1-2  核燃料税の現状(2/2)
表2 核燃料等取扱税の概要
表2  核燃料等取扱税の概要
図1 売上高(電気事業営業収益)に対する租税公課比率
図1  売上高(電気事業営業収益)に対する租税公課比率
図2 電気事業の租税公課負担推移
図2  電気事業の租税公課負担推移
図3 原子力発電所に関する固定資産税収入
図3  原子力発電所に関する固定資産税収入

<関連タイトル>
電源地域に対する電源立地交付金とそのメリット (02-02-01-04)
東海村、廃炉にも固定資産税を課税 (10-07-03-01)

<参考文献>
(1) 全国原子力発電所所在市町村協議会(発行):全原協「30年のあゆみ」(1998年10月)
(2) 電気事業連合ホームページ(2002年1月15日)
(3) 茨城県ホームページ(2002年1月15日)
(4) (株)原通:原通 第3305号(2001年7月9日)
(5) 全国原子力発電所所在地市町村協議会ホームページ(http://www.zengenkyo.org/index.html)(2002年1月15日)
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