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<概要>
 総理府(現内閣府)は、平成2年9月13日から23日に全国の20才以上の者5000人を対象として、調査員による面接聴取による、原子力発電の必要性についての認識、原子力発電の現状についての認識、原子力発電の安全性についての認識などについての世論調査を実施した。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 国民の原子力に対する意識を調査し、今後の国の政策の参考とするため総理府(現内閣府)によって、原子力に関する世論調査が次のように実施された。
調査時期  平成2年9月13日〜23日
調査方法  調査員による面接聴取
調査対象  全国20才以上の者、5000人(うち有効回答数3751人、回答率75%)
 以下に結果の概要を述べる。
1.原子力発電の必要性についての認識
(1) 原子力発電の必要性については、約65%の人が「必要である」と考えている。「今後のエネルギー需要の増大、石油供給の不安定化が予想されるので原子力発電が必要である」との意見についてどう思うかの問いに、
  そう思う   64.5%
  そう思わない 20.7%
(2) また、今後10年間で主力となっている電源を聞いたところ、前回調査(昭和62年8月)より減っているものの、「原子力」とした人が最も多く、
  原子力発電  50.5%
  太陽光発電  12.6%
  石油火力発電 11.8%
  水力発電    5.4%など
(3) さらに、原子力発電の増減の是非については、前回調査より減っているものの、慎重に増やしていくべきとした人が最も多く、「積極的に増やしていくべき」とあわせて全体の約5割が「増やしていくべき」としている。
  積極的に増やしていくほうがよい     4.8%
  慎重に増やしていくほうがよい     43.7% 増やす計48.5%
  これ以上増やさないほうがよい     30.2%
  現在よりへらしていくほうがよい     8.9%
  現在動いているものも止めたほうがよい  2.6%

2.原子力発電の現状についての認識
(1) 現在の主力電源として「原子力発電」として人が増加し、
  55年調査 56年調査 59年調査 62年調査 今回調査
   4.5%     7.0%  10.0%   17.3%   19.3%(2) また、省エネルギー、新エネルギーとの関連で見ると、次のような結果となった。
(原子力や原子力発電に対する次の意見に対してどう思うか)
  1)省エネルギーに努力すれば原子力に頼らなくても石油や石炭、天然ガスなど他のエネルギー源で十分賄える。
     そう思う   35.3%
     そう思わない 47.5%
  2)太陽エネルギーなどの新エネルギーはまだ不安定で、原子力発電の代わりには当分ならない。
     そう思う   59.3%
     そう思わない 22.6%

3.原子力発電の安全性についての認識
(1) 原子力発電の安全性については、「安全ではない」と考える人が「安全だと思う」人
より若干多い。
  安全だと思う    43.8%
  安全ではないと思う 46.8%
補足:
   安全だと思う理由は、日本の技術は優れている、日本では十分な安全対策がとられている、日本ではこれまで重大な事故がおきていないなどである。
   安全ではないと思う理由は、日本でも実際に故障やトラブルが起こっている、実際に海外で事故が起きている、人的ミスは起こり得るなどである。
(2) また、原子力発電に対して不安(心配)に思うことがあればその理由を聞いたところ、ほとんどの項目で不安(心配)に思う人の割合が上昇しており、主なものでは、
                         62年調査   今回調査
  放射線(能)が人体や子孫に影響を与える     39.4%  →  42.8%
  放射性廃棄物の管理や処理処分など        29.7%  →  38.6%
  事故や故障などの状況をよく知らされていない   24.5%  →  31.1%

4.原子力に対する情報源
(1) 原子力や原子力発電に関する認識を得たものを聞いてみると、
  テレビ・ラジオの番組や報道    78.6%
  新聞の記事            63.9%
  雑誌・週刊誌の記事        19.2%
  電力会社のパンフレットなど    12.1%
  政府広報・企業広告など       7.3%
  国・地方自治体のパンフレットなど  5.4%
  国などが主催した講演会など     3.5% など
(2) また、情報源に対する信用度を聞いてみると、
  テレビ・ラジオなどの報道     38.6%
  学者・専門家           34.7%
  新聞・雑誌などの報道       31.1%
  国・地方自治体          11.9%
  電力会社              8.1% など

5.まとめ
 今回の調査は、チェルノブイル事故に関する様々な情報が我が国に伝えられ、原子力反対運動が全国的に広がってから初めて行われたものであるが、不安(心配)は高まったが、その一方で約65%の人が原子力は必要だと思い、約5割が今後10年間での主力電源であると思っているなど、原子力に対する期待も高いとの結果になっている。
<関連タイトル>
平成2年度総理府原子力に関する世論調査(方法と規模) (10-05-01-02)

<参考文献>
(1)平成2年9月調査「原子力に関する世論調査」、(総理府)内閣総理大臣広報室
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