<解説記事ダウンロード>PDFダウンロード

<概要>
 (1)原子力人材問題の対応では、原子力関係研究者、技術者等については、大学等を人材養成の中核機関とし、原子力発電等の技術者、技能者については、民間が措置を講ずる。国は活動の支援に努め、政府関係研究機関における人材の養成と確保に加え、多様な研修活動を推進する。人材の養成と確保については、原子力に対するイメージの向上を図り、原子力の幅広い可能性に挑戦し、若い人に夢と希望を与えるような原子力研究開発を展開する。また、青少年の原子力に関する学習機会の確保等青少年期における原子力知識の普及活動を充実、強化していく。(2)資金については、長期計画に基づき1994年度から2010年度までを集計すると約9兆9千億円となる。この他、民間が独自に行う研究開発経費は約2兆円、軽水炉原子力発電所および商業用核燃料サイクル施設建設に必要な経費は約10兆円と試算される。本稿は原文を掲載する。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
第3章 我が国の原子力開発利用の将来計画
10.原子力開発利用の推進基盤の強化
(1) 原子力人材
1) 原子力に関係する人材問題への対応
 若者の科学技術離れ、生産年齢人口の減少等の傾向の中で、原子力開発利用の安全確保の一層の充実や関連する先端的技術開発の着実な推進を図っていくためには、その担い手となる優秀な人材の養成と確保にたゆまず努力することが不可欠です。
 このため、原子力関係研究者、技術者等については、大学等を人材養成の中核機関として、原子力発電所等の技術者、技能者については、民間が所要の措置を講じることにより、その養成と確保を引き続き計画的に推進することが望まれます。
 国においては、これらの活動の支援に努めるとともに、政府関係研究開発機関における人材の養成と確保に加え、多様な研修活動を推進していきます。
2) 人材の養成と確保
 原子力に関係する人材の養成と確保が円滑に行われるためには、多くの人が原子力を職業としてやりがいのあるものと捉え、またその将来性について理解するようになることが望まれます。このため、原子力に対するイメージの向上を図るとともに、原子力の幅広い可能性に挑戦し、若い人に夢と希望を与えるような原子力研究開発を展開することが重要です。
 とりわけ、多くの若者が原子力に対して客観的な判断力を持つことが大切であり、このことはひいては今後の人材の裾野の拡大につながることにもなります。このため、青少年の原子力に関する学習機会の確保等青少年期における正しい原子力知識の普及活動を充実・強化していきます。
 なお、学校教育においては、学習指導要領に基づき、原子力を含むエネルギーに関して児童・生徒の発達段階に応じ、適切に指導することとされています。この学習指導要領の趣旨を踏まえ、各学校において原子力を含むエネルギーに関する教育の一層の充実が望まれます。
 また、大学等の研究者や学生が政府関係研究開発機関の研究設備・機器を利用する機会の拡大、強化を図るなど人材養成面における関係機関の連携の推進を図ります。
 原子力の研修は、政府関係研究開発機関等において、多様な目的で広範囲に実施されており、今後、研修に対する様々なニーズに柔軟に対応しつつ、その充実を図っていきます。その際、我が国の原子力関係研修が全体として効率的かつ整合性のとれたシステムとなるよう、研修機関の連携を進め、総合的な研修体制の整備を図ることが重要です。
 一方、原子力研究開発の国際化が進展する中、原子力平和利用先進国として、諸外国の研究者、技術者等の積極的な受け入れを図るとともに、我が国として必要な国際的人材を養成するため、人材養成プログラムの強化等に取り組んでいきます。

(2) 資金
 長期計画に基づき原子力開発利用が進められた場合の所要資金については、施策の具体化にあたり、さらに検討を要する部分が多くあり、また、今後の諸情勢の推移により大きく左右されますが、現時点で試算した1994年度から2010年度までの所要資金の大略の見込みを集計すると約9兆9千億円となります。この内訳は、新型炉開発その他原子力発電関係約3兆6千億円、核燃料サイクル関係約2兆2千億円、核融合及び放射線利用約1兆7千億円、その他基礎研究等(研究開発機関の運営費を含む。)約2兆4千億円となっています。なお、この他現時点での大略の見通しとして民間が独自に行う研究開発に必要な経費は約2兆円、軽水炉原子力発電所及び商業用核燃料サイクル施設建設に必要な経費は約10兆円と試算されています。
 資金の確保にあたっては、多様な手段を用いることによりその確実な確保を図っていくとともに、また限られた資金の重点的、効率的、効果的な活用を図る必要があります。また軽水炉の高度化・建設、核燃料サイクルの事業化等の進展に伴い、原子力開発利用における民間が担うべき役割が大きくなっていることなどを踏まえて、個々の計画の開発段階を十分に考慮し、国と民間のそれぞれの役割分担に対応した適切な資金分担を図る必要があります。さらに、計画の推進にあたっては、適切な時期に各研究開発課題について厳正な評価を行い、計画内容の見直しを弾力的に行うことにより資金の効率化に努めることにします。
<関連タイトル>
原子力開発利用の基本方針(平成6年原子力委員会) (10-01-03-03)
原子力科学技術の多様な展開と基礎的な研究の強化[その1](平成6年原子力委員会) (10-01-04-12)
原子力科学技術の多様な展開と基礎的な研究の強化[その2](平成6年原子力委員会) (10-01-04-13)
原子力開発利用の推進基盤の強化[その2](平成6年原子力委員会) (10-01-04-16)

<参考文献>
(1)原子力委員会(編):21世紀の扉を拓く原子力 −原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画− 大蔵省印刷局(平成6年8月30日)
(2)原子力委員会(編):原子力白書 平成6年版 大蔵省印刷局(平成7年2月1日)
(3)日本原子力産業会議:原子力産業新聞 第1754号(1994年8月11日)
JAEA JAEAトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ