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<概要>
 高温工学試験研究炉(HTTR)の炉内構造物は相互に結合された黒鉛ブロックの積層構造となっており、炉心を所定の位置に維持し、その荷重を支持している。これらの構造物は地震時に大きな荷重を受けるため、その耐震性を解析に加え実規模の縮尺モデルを用いた実証振動試験によって確認している。
<更新年月>
2006年01月   

<本文>
 高温ガス炉原子炉内部は大部分が黒鉛構造物で構成されている。燃料(ブロック又はペブル)、制御要素、反射体等の炉心の型式、燃料体装荷取り出し方法、冷却材流路構成などで設計は異なるが、黒鉛ブロックの積層構造が炉内構造物の基本となる。高温工学試験研究炉(以下、「HTTR」という。)においても、原子炉内部は各種の黒鉛ブロックで構成されている。このうち炉内黒鉛構造物は六角柱状のブロックからなる炉心を外側から支持し炉心を所定の位置に保持するためのもので、図1に示すように、その構造は相互にキー結合された多角柱状または円柱状の黒鉛ブロックの積層構造となっている。
 原子炉の構造安全性を確保する上で重要なのは、これらの炉内黒鉛構造物の耐震性であり、地震時に受ける様々な加重に対して、一般に制御要素の挿入性、冷却流路などの機能が確保されることが要求される。HTTRにおいては、地震学的及び工学的見地に立脚し、歴史的観点から最も大きいと想定される設計用最強地震を上回る設計用限界地震が起こったとしても、これらの構造物の健全性が確保されるよう設計がなされている。
 HTTRの炉内黒鉛構造物のうち、炉心部からの垂直荷重を支持している炉床部構造物は、原子炉の耐震設計上重要である。図1及び図2に示すように、炉床部構造物は黒鉛製の高温プレナムブロック、キー及びサポートポストで構成され、六角柱状の高温プレナムブロックどうしは相互にキー結合され、炉心部の重量をサポートポストに伝える。円柱上のサポートポストは、炉心重量及び高温プレナムブロック重量を支持している。地震時には、炉心部及び炉内黒鉛構造物が振動し、キー結合部に水平荷重、サポートポストに垂直荷重を受け、しかもキー結合部間、サポートポスト間で異なる荷重が負荷される。このため、炉床部構造物の耐震設計においては、これらの荷重と荷重分布に対して、高温プレナムブロックキー溝部及びサポートポストの構造健全性に考慮が払われている。
 HTTR炉床部の地震時構造健全性は、前述した設計用限界地震が起こったとして負荷される最大荷重に対して、構造解析により確認されている。また、同地震を入力とした以下の炉床部振動試験によっても安全性が実証されている。
 炉床部耐震試験では、当該部を模擬した1/5及び1/3縮尺模型によって試験が実施された。構造解析による健全性評価の妥当性を確認するとともに、炉床部の耐震性を実証試験によりするものである。1/3縮尺模型による振動試験の条件を示す。
  (1)加振方向    水平一次元、
           水平一次元+垂直方向同時加振
  (2)加振波     掃引正弦波(2〜30Hz、最大540Gal)
           設計用最強地震(S1)
           設計用限界地震(S2)
 試験の結果、サポ−トポスト及びキ−溝部に作用する荷重の分布を得るとともに、これらの構造部の地震時健全性が実証できた。
<図/表>
図1 原研の高温工学試験研究炉(HTTR)の原子炉炉内構造説明図
図1  原研の高温工学試験研究炉(HTTR)の原子炉炉内構造説明図
図2 HTTRの原子炉床部構成要素の構造説明図
図2  HTTRの原子炉床部構成要素の構造説明図

<関連タイトル>
高温ガス炉概念の特徴 (03-03-01-02)
高温工学試験研究炉(HTTR) (03-04-02-07)
通常運転時および事故時の黒鉛構造物の酸化損傷 (06-01-04-03)

<参考文献>
(1)日本原子力研究所:高温工学試験研究の現状1993年、平成5年11月
(2)日本原子力研究所:大洗研究所原子炉設置許可申請書(高温工学試験研究炉原子炉施設の設置)、平成2年10月
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