<概要>
Gentilly-1はグロス出力 260MWeで
天然ウランを燃料とした重水減速・軽水冷却の試験用発電炉でありケベック州に位置している。
原子炉は1967年に運転を開始し、1982年に停止されるまで断続的に発電が行われた。1983年に発電所を閉鎖することになり、工学的及び経済的な方面から原子炉の
廃止措置計画に関する検討がなされた。この結果、発電所内の幾つかの区域を再利用すること、
放射能が十分減衰する50年後まで最終的な
解体を遅延することなどを決定した。この決定に基づいて1984年4月から1986年3月に廃止措置のための作業が実施され、現在は密閉管理状態にある。
<更新年月>
2001年03月 (本データは原則として更新対象外とします。)
<本文>
[背景]
カナダでは重水減速・軽水冷却型のCANDU 炉を独自に開発してこれを発電用原子炉に使用している。これらのうち、1950年代後半から1960年代にかけて建設された試験炉は、約30年の運転期間を経てその役割を終了するものがある。このような炉のうちの一つGentilly-1発電所は必要な施設改造を行い、現在は約50年の密閉管理状態にある。カナダは国土も広くまた人工密度が希薄であるために、役割を終えた原子炉を高価な予算を投じてすぐに解体撤去する必要はない。このため、経済性を考慮して密閉管理の措置が選択された。今後廃止措置を講じる必要のある原子炉も同様な措置がとられるものと考えられる。
[Gentilly-1]
Gentilly-1の概略を
図1 に示す。Gentilly-1は、グロス出力 260MWeで天然ウランを燃料とした、重水減速・軽水冷却の商用規模の試験用発電炉(Candu BLWR)でありケベック州に位置している。原子炉は1967年に運転を開始し、1979年に修理作業のために停止されるまで、断続的に発電が行われた。この後、1979年から1982年まで炉は密閉管理状態にあった。しかし、現状の原子炉安全規制に適合させるためには、再起動前に広範囲の改造を行う必要がある旨カナダの規制当局(AECB)より勧告がなされたため、原子炉存続、廃止に関する検討の結果、経済的に再使用する価値がないことから、1983年に発電所を閉鎖することにした。また、工学的及び経済的両面から原子炉の廃止措置計画に関する検討を行い、発電所内の幾つかの区域を再利用すること、放射能が十分減衰する50年後まで最終的な解体を遅延することなどを決定した。この評価結果に基づいて、1984年4月から1986年3月(2年間)に以下に示す作業に関し廃止措置プロジェクトが実施された。
−維持保修費を大幅に削減する(年間経費を900万ドル(約10億8千万円)から100万ドル(約1億2千万円)以下にする)
−放射能を密閉エリア(原子炉建家)へ
封じ込める
−別目的に利用するために部分的な改修を行う
−商用発電炉解体に備えて経験を取得する
このGentilly-1炉の廃止措置作業はカナダ原子力公社(AECL)により実施され、また経済性の評価はAECLが独自に開発した廃止措置費用評価コードDECOMによって行われた。
[廃止措置の処置範囲と作業]
Gentilly-1廃止措置のための処置は以下の通りである。
−サービス建家内の
使用済燃料プールから使用済燃料を撤去した。また、特別に設計したコンクリートキャニスターで使用済燃料を
乾式貯蔵した。この作業により補修費用の多くが削減でき、使用済燃料プールを多目的に利用できるようになった。
−サービス建家内の機器、配管、電線、制御盤等の構成機器と発電機建家内の一部機器を撤去した。また、隣接するGentilly-2発電所を所有するハイドロケベック社へ施設を移管するために
除染作業を実施した。除染の基準は非固着汚染がなく、10μSv/h以上のβ汚染及び2.5μSv/h以上のγ汚染がない領域にすることである。
−使用済燃料プール、燃料架台及びその他の機器を除染した。
−発電機建家及びサービス建家内の原子炉接続配管、電線、ダクト等を切断し、原子炉建家から他の施設に放射能が拡散しないように密閉した。
−原子炉建家内部のすべての機器は、油、水を含めて排出し、乾燥状態にした。また、可燃性の薬剤も取り払った。原子炉建家内部のすべての系統を隔離し、品名札を取り付けた。こうして、
定期検査に利用する作業員出入口以外の出入口を永久に閉鎖した。
以上の作業により、原子炉建家を休止状態(
IAEAの定義ではStage1と2の中間)にし、少なくても40年から50年間定期的な検査をしながらこの状態を保つ予定である。
<図/表>
<関連タイトル>
海外主要国における発電炉の廃止措置の実績 (05-02-03-01)
カナダの原子力政策・計画 (14-04-02-01)