<解説記事ダウンロード>PDFダウンロード

<概要>
 地上から試錐井を通してウラン鉱体に水溶液(酸またはアルカリ溶液、または酸素と炭酸ガスを混入した水)を注入し、原位置(in situ)においてウランなどの有用金属を溶かして、溶液の形で試錐井から地上に回収する方法である。本手法は1970年代ごろからアリゾナ州の銅鉱山やテキサス州のウラン鉱床で本格的に開発が進められ、1980年代からロールフロントタイプの砂岩型ウラン鉱床を開発する主流採鉱法として普及したものである。
<更新年月>
2009年02月   

<本文>
 インシチュリーチング(ISL)法は、1970年代ごろからアリゾナ州の銅鉱山やテキサス州のウラン鉱床で本格的に技術開発が進められたもので、地上から試錐井を通して鉱体に水溶液(酸またはアルカリ溶液、または酸素と炭酸ガスを混入した水)を注入し、原位置(in situ)においてウランなどの有用金属を溶かして、溶液の形で試錐井から地上に回収する方法である(図1および図2)。最近、米国ではインシチュリカバリー(ISR)法と呼ぶ方が主流になっている。また、同手法は、かつてインプレースリーチング法とも呼ばれたが、この用語は現在では坑内において同様の方法で金属を回収する手法に用いるようになっている。
 ISL法は、鉱石を地上に掘り出さないため、通常の製錬施設が不要であり、ずりや鉱滓が発生せず環境への影響が小さく、生産コストも安く上がるなどの利点がある。ただし、ISLが適用されるためには、鉱体・母岩の透水性がよく、母岩の上盤・下盤が不透水層に囲まれており、鉱体・母岩が地下水位より下位に位置することが必要条件である。すなわち、注入した水溶液がすべて地上に回収され、溶出したウラン溶液が開発対象範囲から外側に漏れ出さないように操業できることが絶対条件である。
 ISL鉱山は、通常、数10孔の注入井と回収井群からなるWell Fieldのパターンを単位にして開発される(図3)。注入井と回収井の配置には様々なパターンが存在するが、一般に正方形や六角形のWell Fieldパターンが用いられている。注入井と回収井の間隔は20メートル前後であるが、鉱床毎の透水性によって差がある。ひとつのパターンのウラン回収は、通常1〜3年で完了し、資源量の70〜80%が回収される。ウラン回収が終了した後、WellFieldの地下水は回収開始以前の元の地下水と同様のレベルまで修復されることが必要である。修復に要する期間は、元の地下水の水質の程度によって大きな差がある。すなわち、南オーストラリアのように元の地下水の塩濃度が高く飲用に適さない場合は短期間ですむが、米国ワイオミング州のように飲用に使用されている場合には数年を要する。
 カザフスタン、ウズベキスタン、米国、オーストラリア等に存在する透水性が良好なロールフロントタイプの砂岩型鉱床のほとんどは、この方法により採掘されている。
<図/表>
図1 一般的なISLウラン抽出施設
図1  一般的なISLウラン抽出施設
図2 米国Smith Ranch ISL鉱山のウラン回収工程図
図2  米国Smith Ranch ISL鉱山のウラン回収工程図
図3 ISL Well Fieldのパターン例
図3  ISL Well Fieldのパターン例

<関連タイトル>
ヒープリーチング法 (04-03-01-04)
ウラン採鉱法とその特色 (04-03-01-01)
インプレースリーチング法におけるバクテリア利用 (04-03-01-03)

<参考文献>
(1)Stover,Smith Ranch;North American’s newest ISL uranium mine,Mining Magazine(1997),
(2)IAEA−TECDOC 1239,Manual of acid in situ leach uranium mining technology(2001),p.148
(3)WNA Website, In Situ Leach(ISL) Mining of Uranium(2008),http://www.world-nuclear.org/info/inf27.html
JAEA JAEAトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ