<大項目> 原子力発電
<中項目> 原子力発電所の事故・故障
<小項目> わが国の原子力発電所の事故・故障・トラブル
<タイトル>
美浜発電所2号機蒸気発生器伝熱管損傷事象の概要 (02-07-02-04)

<概要>
 関西電力(株)美浜発電所2号機(加圧水型、定格出力50万キロワット)は、定格出力で運転中のところ、平成3年2月9日13時40分、復水器空気抽出器ガスモニタの警報が発信したため出力を降下させたところ、13時50分原子炉が自動停止するとともに、非常用炉心冷却装置が作動した。蒸気発生器伝熱管の損傷による一次冷却材流出によるものであった。なお、周辺環境への放射能による影響は認められなかった。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.事象の概要
(1) 関西電力(株)美浜発電所2号機(加圧水型、定格出力50万キロワット、 図1 )は、平成3年2月9日、定格出力で運転中、13時40分警報盤において復水器抽出器ガスモニタの警報が、続いて13時45分にはブローダウン水モニタの警報が発信した。原子炉を停止するため13時48分に出力降下を開始したが、13時50分「加圧器圧力低」の信号により原子炉が自動停止し、引き続き「加圧器圧力低と加圧器水位低の一致」の信号により非常用炉心冷却装置(ECCS)が自動作動した。
(2) このため、A−蒸気発生器( 図2 、損傷側蒸気発生器)の隔離、加圧器補助スプレイによる一次冷却系の減圧操作等を経て、平成3年2月10日2時37分、冷態停止状態に移行した。
(3) なお、微量の放射性物質が外部に放出されたが、発電所敷地内外に設置されている放射線監視装置の指示値は通常と変化なく、外部に対する放射能の影響はない。
(4) その後の調査の結果、損傷蒸気発生器の第6管支持板上端部で、低温側の伝熱管1本が完全に破断し分離していることが確認された。
2.事象の経過と考察
(1) 事象の経過(平成3年2月9日)
  ・13時40分:復水器抽出器ガスモニタの警報発信。
  ・13時45分:蒸気発生器ブローダウン水モニタの警報発信。
  ・13時47分:原子炉を停止すべく出力降下を開始
  ・13時50分:「一次冷却系加圧器圧力低」の信号により原子炉が自動停止、タービン、発電機も自動停止。約7秒後「一次冷却系加圧器圧力低と加圧器水位低の一致」の信号により非常用炉心冷却装置が自動作動した。
  ・14時2分:損傷側蒸気発生器の主蒸気隔離弁の完全閉止を確認できなかったため、運転員が現場で同弁の増締めを実施。
  ・14時2分頃から14時17分頃まで:健全側蒸気発生器の主蒸気逃がし弁を開操作し、一次冷却系を冷却。
  ・14時10分頃から14時25分頃まで:加圧器逃がし弁の手動開操作を試みるも、2台ある加圧器逃がし弁がいずれも開不能。
  ・14時34分:加圧器補助スプレイによる一次冷却系の減圧操作を開始。
  ・14時37分:加圧器水位の回復等を確認の上、高圧注入ポンプ2台を停止。
  ・14時48分:一次冷却系の減圧操作を完了(一次冷却系圧力と損傷側蒸気発生器二次側圧力が一致)、二次側への漏洩停止。
(2) プラントの応答状況に対する考察
  ・12時40分頃までに、損傷側蒸気発生器の伝熱管の損傷に伴う一次冷却材の蒸気発生器二次側への微小な漏洩が発生し、13時45分頃からこの伝熱管の損傷が急激に拡大し破断し、分離したものと推定。
  ・健全側蒸気発生器の一次冷却系回路(健全側ループ)の高温側冷却材温度は、13時50分以降もその圧力に応じて沸騰する飽和温度を下回っており、炉心は冠水し、除熱機能が確保されていたものと判断。
  ・蒸気逃がし弁の開放による冷却等により、健全側ループの高温側冷却材温度が14時2分から14時34分までの間順調に低下している。
  ・一次冷却系の圧力の低下に伴い一次冷却材の損傷側蒸気発生器二次側への流出量が減少及び非常用炉心冷却設備作動による注入により、14時35分、加圧器水位が計測範囲内に回復している。
(3) 事象の分析評価
 1) 今回の事象の模擬解析結果
  ・損傷側蒸気発生器二次側への一次冷却材流出量:約55トン
  ・安全注入量:約50トン
  ・損傷側蒸気発生器主蒸気逃がし弁からの蒸気放出量:約1.3 トン
  2) 安全注入量と一次冷却材流出量
   破断管からの一次冷却材流出量等による一次冷却材の圧力変化に応じ、高圧注入ポンプは設計どおり作動し、炉心の冠水は維持されていた。
(4) 環境への影響評価
  1) 環境への放射能放出量の評価
   放射性希ガス:約2.3E10ベクレル(約0.6 キュリー)、放射性よう素:約3.4E8ベクレル(約0.01キュリー)、液体状の放射性物質:約7.E6ベクレル(約0.0002キュリー)であり、これらの値は当発電所が定めた年間放出管理目標値を十分に下回るものである。
  2) 周辺公衆の受ける実効線量当量評価
   約0.01マイクロシーベルト(自然界から放射線によって1年間に受ける実効線量当量(1ミリシーベルト)の約10万分の1で、周辺公衆に対し影響を与えるものでない。)
  3) 環境放射線モニタリングの結果
   環境放射線モニタリングの測定値によると今回の事象に起因する有意な変化はなく、放出放射能による周辺環境への影響は認められない( 表1図3 及び 図4 参照)。
(5) 安全委員会等の対応
   安全委員会では、独自の立場から調査審議を行っていて、その結果を踏まえ、この事故に関する見解を発表しており、定期点検の強化、安全審査指針の見直し等、安全確保の一層の充実を行なうこととしている。資源エネルギー庁では、特別調査委員会を設置して調査審議を行ない報告書をまとめる一方、加圧水型炉を保有する電力会社に対して再発防止対策の実施等の指示を行なっている。
  なお、日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)では、この事故に対する事故事象解析及び模擬実験を行なっている。
<図/表>
表1 美浜発電所2号機事故時の空間線量率の連続監視データ
図1 美浜発電所2号機系統概要図
図2 蒸気発生器構造の概要
図3 空間線量等測定地点
図4 空間線量等測定地点(サイト近辺)

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<関連タイトル>
美浜発電所2号機蒸気発生器伝熱管損傷事象の原因調査 (02-07-02-03)
美浜発電所2号機蒸気発生器伝熱管損傷事象の再発防止対策 (02-07-02-02)
軽水炉蒸気発生器伝熱管の損傷 (02-07-02-14)

<参考文献>
(1)原子力安全委員会(編):平成4年版 原子力安全白書、平成5年2月
(2)通商産業省資源エネルギー庁公益事業部原子力発電安全管理課(編):原子力発電所運転管理年報 平成4年版、平成4年8月
(3)通商産業省資源エネルギー庁:関西電力(株)美浜発電所2号機蒸気発生器伝熱管損傷事象について、平成3年11月
(4)安濃田 良成ほか:ROSA-4 LSTFによる美浜2号蒸気発生器伝熱管損傷事象模擬実験のRELAP5/MOD2コードによる解析 JAERI-M93-008 (1993)
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