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<概要>
 原子炉を冷態停止状態にした後、損傷側蒸気発生器の水抜きにより、伝熱管が第6管支持板付近で損傷していることを確認し、また小型テレビカメラ等で伝熱管が破断し分離していることを確認した。引き抜いた破断伝熱管には、疲労破面を特徴づける明瞭な縞模様(ストライエーション)が認められた。また、損傷側蒸気発生器の状況をファイバースコープで観察したところ、伝熱管の振れ止め金具が設計どおりの範囲まで挿入されていないことが判明した。伝熱管の破断は、振れ止め金具の挿入が浅かったことによる振動によるものと推定される。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.伝熱管破断に関する原因調査
(1) 損傷位置確認の状況  表1 にX45列の伝熱管の損傷原因調査結果の概要を示す。
   原子炉を冷態停止状態にした後、A−蒸気発生器(損傷側蒸気発生器)点検のため平成3年2月11日22時34分から一次冷却系統の水抜きを開始し2月12日14時に完了した。これに伴い、蒸気発生器二次側の水位が下降し約59%(第6管支持板部付近)で水位下降が停止した。これから、伝熱管が第6管支持板付近で損傷していると推定された。2月12日21時から蒸気発生器一次側マンホールを開放し、2月13日11時50分開放を完了した。その後、蒸気発生器二次側の水位を若干上昇させ、蒸気発生器水室に取り付けたテレビカメラ等により点検したところ低温側の伝熱管1本(アドレスX-45、Y-14)に水の漏洩が認められた。さらにその後、当該伝熱管(破断管)にゴム施栓を行い、蒸気発生器二次側の水位を伝熱管頂部を超える位置まで水張りしたが、他の伝熱管に漏洩は認められなかった。
(2) 損傷状況調査
   破断管を小型テレビカメラ等で調査した結果、低温側第6管支持板上端部で破断し分離していることが確認された。また、周辺の伝熱管について、渦電流探傷検査、小型テレビカメラ等で調査した結果、過去に施栓した伝熱管の一部において施栓時の減肉の深さあるいは体積の増加を示す信号の変化、又は、新たな減肉信号が認められた。
(3) 金属調査
   引き抜いた破断管の破面観察により、疲労破面を特徴づける明瞭な縞模様(ストライエーション)が認められた。また、寸法検査等の結果、管支持板部において伝熱管のデンティングを示唆するような寸法変化は認められず、破面起点部近傍では破断に関係する応力腐食割れ、粒界腐食割れ、腐食減肉は認められなかった。
(4) 振れ止め金具に関する調査
    図1 にファイバースコープによる概略スケッチを、 図2 に渦電流探傷検査による振れ止め金具支持状態調査結果を、 図3 に美浜発電所2号機蒸気発生器伝熱管振れ止め金具概略図を示す。
  1) 挿入状況調査
   損傷側蒸気発生器の振れ止め金具(AVB)の状況をファイバースコープ等を用いて観察した結果、X44-X45 の間及びX45-X46 の間の振れ止め金具については、上下の振れ止め金具とも設計どおりの範囲まで入っていなかったこと、X43-Y23 の伝熱管がX44側に1列ずれていたと推定されることが判明した。
  2) 取り出し調査
   X44-X45 の間及びX45-X46 の間の上下の振れ止め金具を蒸気発生器から取り出し、調査を行った結果、上部振れ止め金具の長さはいずれも設計値より40cmから50cm程度短いこと、上下の振れ止め金具の形状は、いずれも設計形状から変形していること、部振れ止め金具の側面に設計とは異なる切断加工跡があることが認められた。
  3) 振れ止め金具が設計どおりの範囲まで挿入されなかった原因の推定
   振れ止め金具挿入の際、伝熱管と伝熱管との間に正確に挿入されなかったため、振れ止め金具が伝熱管によって挿入が妨げられ、設計どおりの範囲まで挿入されなかった。また、設計上の重要性の認識不足等から、振れ止め金具に設計とは異なる加工を施して振れ止め金具を挿入したものと推定される。
(5) 破断原因の推定
   破断管は、振れ止め金具に支持されていなかったことによる限界流速の低下、振れ止め金具挿入深さが浅かったことによる局所流速の増加等により、流速が限界流速を超えたため流力弾性振動が発生し、第6管支持板部で疲労破断したものと推定される( 図4 参照)。
2.その他の調査
(1) 加圧器逃がし弁不動作の原因調査
   加圧器逃がし弁は空気作動式であるが、運転員が当該空気元弁を加圧器逃し弁作動用空気系統の空気元弁と供用しているものとは考えず、予備の系統に供給する弁であり、通常使用していないものと考えて閉止したため、2台の加圧器逃がし弁に供給される空気が流れず、加圧器逃がし弁が動作しなかったものと判明した。
(2) 主蒸気隔離弁不完全閉の原因調査
   前回定期点検時に主蒸気隔離弁の弁棒に鏡面仕上げを実施したことから、グランドパッキンに用いられている黒鉛が付着し、弁棒のしゅう動抵抗が当該主蒸気隔離弁の閉弁力を上回ったものと推定される。
<図/表>
表1 X45列の伝熱管の損傷原因調査結果の概要
表1  X45列の伝熱管の損傷原因調査結果の概要
図1 ファイバースコープによる概略スケッチ
図1  ファイバースコープによる概略スケッチ
図2 渦電流探傷検査による振れ止め金具支持状態調査結果
図2  渦電流探傷検査による振れ止め金具支持状態調査結果
図3 美浜発電所2号機蒸気発生器伝熱管振れ止め金具概略図
図3  美浜発電所2号機蒸気発生器伝熱管振れ止め金具概略図
図4 伝熱管の破断・摩耗メカニズムの推定
図4  伝熱管の破断・摩耗メカニズムの推定

<関連タイトル>
美浜発電所2号機蒸気発生器伝熱管損傷事象の概要 (02-07-02-04)
美浜発電所2号機蒸気発生器伝熱管損傷事象の再発防止対策 (02-07-02-02)
軽水炉蒸気発生器伝熱管の損傷 (02-07-02-14)

<参考文献>
(1)原子力安全委員会(編):平成4年度 原子力安全白書、平成5年2月
(2)通商産業省資源エネルギー庁公益事業部原子力発電安全管理課(編):原子力発電所運転管理年報 平成4年版、平成4年8月
(3)通商産業省資源エネルギー庁:関西電力(株)美浜発電所2号機蒸気発生器伝熱管損傷事象について、平成3年11月
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