<大項目> 原子力発電
<中項目> 原子力発電所の立地・建設・運転・保守
<小項目> 原子力発電所の運転・保守
<タイトル>
世界初PWR炉内構造物の一体取替え工事(CIR) (02-02-03-19)

<概要>
 三菱重工業(株)(MHI)は、四国電力(株)伊方発電所1号機において、世界で初めて、加圧水型原子炉(PWR)の炉内構造物(CI;Core Internals)を一体で取り替える工事を完了した。さらに、引き続いて九州電力(株)玄海原子力発電所第1号機、および伊方発電所2号機において同一の取替工事を実施した。本取替工事は、高燃焼度燃料の採用に伴う制御棒増設への対応と、CIを構成するボルト(バッフルフォーマボルト)の海外での損傷事例を受けた予防保全対策および信頼性向上のために実施した。
 ここでは、CI一体取替え(全体取替え)の工法、設計、製作の概要について述べる。
<更新年月>
2007年08月   

<本文>
1.炉内構造物の取替えについて
 運転開始後約20年を経過して放射線量の高い炉内構造物(旧CI)、すなわち上部炉心構造物(UCI;Upper Core Internals)および下部炉心構造物(LCI;Lower Core Internals)を気中にて一体で専用鋼製保管容器に収納し撤去した後、最新の標準型2ループプラントを基本として設計を行った炉内構造物(新CI)(図1図2)を既存の原子炉容器(RV;Reactor Vessel)に高精度で据え付け、初期プラント建設時と同等の設置状態に復元した。
 CI全体取替えの事例は、沸騰水型原子炉(BWR)では国内外でいくつかの事例があるが、PWRではCI全体を取り替えた事例はなく、今回、MHIが世界で初めて実施した。電力会社の高燃焼度燃料の導入に伴い、UCIに制御棒クラスタ案内管を4体増設するための構造変更と、併せてCIの長期信頼性、並びに発電所の安定運転を確保するための予防保全対策として、CI一体取替え(全体取替え)を実施した。
2.旧CI一体撤去搬出工法と旧CI保管容器の製作
 CIをRVから撤去するため、効率的な(被ばく量を抑えて工事期間の短い)撤去・搬出・運搬の方法、並びに旧CIを保管する容器を新たに開発した。
 旧CIの取扱いに際し効率的な工法には、旧CIを分割・切断する工法よりも、UCIおよびLCIを一体かつ気中にてRVから吊り上げ、これらを丸ごと保管容器に収納する工法が有効であった。この旧CI一体撤去搬出工法は、さらに原子炉格納容器(CV;Containment Vessel)の機器搬入口(EH;Equipment Hatch)を通す新旧CIの搬出入技術、CV内特設クレーンによる旧CI保管容器(約450t)の吊上げ・横倒し技術(図3)、並びに作業員が接近せずに遠隔操作により旧CI収納後の保管容器下蓋を閉止する技術などにより構成した。旧CI保管容器は、CVから搬出後最終的に発電所内の蒸気発生器保管庫に保管された。
 旧CI保管容器は、世界初で前例がなく、放射線遮へいのため板厚約28cmを要し、全長約12m、外径約3.8mで、旧CIを一体収納するため全長に渡り高精度で製作した。さらにその構造に、CIR工法手順における取扱い様態を詳細に反映した造りこみを行った。
 旧CI一体撤去搬出工法を実機工事へ適用することにより、旧CIを分割・切断する工法に比べ工事全体(旧CI撤去〜新CI据付まで)で約1/2〜1/3の短工期(約70日)を実現し、工事総線量(作業員の被ばく量の合計)も、旧CI分割工法に比べ、約1/10の低い線量となった(いずれもMHI比)。
3.新CIの設計製作と高精度据付け
 新CIは、最新の標準型2ループプラントのCI設計に基づき、次の改良を施し設計製作した。主な改良点は、制御棒クラスタ案内管の増設(上記の高燃焼度燃料導入の対応)、上部炉心支持板の構造変更(円筒胴付鋼製円板の採用)、バッフル構造の変更(角バッフルの採用、バッフルフォーマボルトの構造変更)、および熱遮へい体の変更(円筒型から分割型)である(図4)。特に、バッフルフォーマボルトについては、ボルトの長尺化、冷却孔の設置により応力の低減と使用環境の改善を行い、応力腐食割れに強い構造とした。
 新CIは、既存のRVの中に高精度で据え付ける必要があるが、RVが高線量のためプラント建設時のように作業者がRV内に入って隙間調整を行うことができない。このため、新たに開発した水中遠隔操作による高精度計測装置を用いて両者間の実機の隙間を計測し、その結果を基に工場で加工した部品を新CIに取り付けて、新CIを所定の隙間と位置に設置する工法を適用した。この新CI据付工法により、外径約3m、全長約8m、重量約100tの新LCIは、プラント建設時と同等の極めて高い精度の据付状態に復帰した(初期プラント建設時と同等の据付状態となった)。
<図/表>
図1 PWR炉内構造物(PWR原子炉容器、および炉内構造物(上部炉心構造物、および下部炉心構造物)の全体構造)
図2 新CI(UCI)のRVへの据付状況
図3 CV内特設クレーンと旧CI保管容器(旧CI一体撤去搬出工法と旧CI保管容器の典型的な全体図)
図4 新CIの改良点(取り替え前後の炉内構造物の構造の比較)

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<関連タイトル>
沸騰水型軽水炉(BWR)の炉心シュラウド交換 (02-02-03-12)
原子力発電所の高経年化対策の現状 (02-02-03-18)

<参考文献>
(1)内山純一、大内博史、安食和英、西岡嘉生、玉置廣紀、短工期・低被ばくで完遂した世界初PWR炉内構造物の一体取替え工事(CIR)三菱重工技報、VOL.43 NO.1(2006)
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