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<概要>
 2005年3月末に総合資源エネルギー調査会において長期エネルギー需給見通しを改定した。それに伴い、現行の石油代替エネルギーの供給目標(以下、「供給目標」という)も改定された。経済成長見通しの下方修正等を反映して、石油代替エネルギー全体の供給数量は前回(2002年3月)に比して減少(3.3億kl→3.1億kl)した。一方、産業部門の回収エネルギーの有効活用による供給量の増加を見込んだこと等により、一次エネルギー供給に占める石油代替エネルギーの割合は増加(55.0%→55.6%)した。供給目標の改定は、「石油代替エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律」(1980年5月)により閣議決定を経ることとなっており、また4月28日に閣議決定される予定の「京都議定書目標達成計画」の基礎となっていることから、同計画と同時期に閣議決定されたものである。
<更新年月>
2005年07月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.石油代替エネルギー供給目標
「石油代替エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律」(1980年5月)第3条第4項においては、石油代替エネルギー供給目標を閣議において決定することとされているが、同目標の改定に当たっては、従来より、閣議決定に先駆けて総合エネルギー対策推進閣僚会議を開催して、了承を得ることとなっている。1980年11月に最初の目標が決定されて以降、今回で8回目の改定となる。
 今回の供給目標の改定に当たっては、閣議決定に先駆けて総合エネルギー対策推進閣僚会議に諮っており、4月15日(金)に開催された第29回総合エネルギー対策推進閣僚会議にて了承されている。
(1)前回の改定
 2001年7月に総合資源エネルギー調査会において長期エネルギー需給見通しが改定されたことに伴い、本供給目標を改定し、2002年3月の「地球温暖化対策推進大綱」の決定と同時期に閣議決定(2002年3月22日)。
(2)今回の改定
 2005年3月末に総合資源エネルギー調査会において長期エネルギー需給見通しを改定。本供給目標は、閣議決定される「京都議定書目標達成計画」の基礎となっていることから、同計画と同時期に改定について閣議決定する必要があり、事前に総合エネルギー対策推進閣僚会議に諮り了承をえている。2010年度における石油代替エネルギーの供給数量の目標は表1に示すとおりである。
2.その他石油代替エネルギーの供給に関する事項
(1) この目標は、民間の最大限の理解と努力、政府の重点的かつ計画的な政策の遂行及び官民の協力の一層の強化を前提としたものであり、環境の保全に留意しつつこれを達成するものとする。なお、原子力に係る供給目標を達成するため、核燃料サイクル政策を推進することを国の基本的考え方とし、プロセスの一つ一つに着実に取り組んでいくこととする。
(2) この目標は、エネルギーの需要及び石油の供給の長期見通し、石油代替エネルギーの開発の状況その他の事情の変動のため、必要があるときは、これを改定するものとすると述べられている。
3.総合資源エネルギー調査会の長期エネルギー需給見通し
 上述したように、この改訂は、総合資源エネルギー調査会の長期エネルギー需給見通しを受けたものである。長期エネルギー見通しのうち、2010年エネルギー需給構成及びCO2 排出量の見通しは以下のとおりである。
(1) 見通しの概要
イ. エネルギー起源CO2排出量の見通し(図1
(現行の2010年の見通し)
 2010年度エネルギー起源CO2排出量は、
レファレンスケースで1,181百万t−CO2、現行対策推進ケースで1,115百万t−CO2 の見通し。したがって、レファレンスケースで+13%(132百万t−CO2)、現行対策推進ケースで+6%(67 百万t−CO2)の超過の見通しとなり、京都議定書の目標達成には、所要の対策を講じて更なる排出の抑制を図る必要がある。
(追加対策ケース)
 追加対策の実施により、試算によれば、電力分野のCO2排出原単位改善に向けた取組で約17百万t−CO2、新エネルギー追加対策で約7百万t−CO2、省エネルギー追加対策で約37百万t−CO2の削減がなされることとなる。これにより、2010年度におけるエネルギー起源CO2排出量を概ね+0.6%程度に抑制できる可能性があるが、これを実現するためには、追加対策の着実な実施とそれに応じ産業界、国・自治体、国民等各層の行動が求められることに留意する必要がある。
ロ. エネルギー需要の見通し(表2および図2
(現行の2010年の見通し)
 産業部門は、エネルギー多消費産業の生産水準の安定化や日本経団連環境自主行動計画の着実な進捗により、エネルギー消費量の抑制が図られ、レファレンスケースで1990年度比10%(現行対策推進ケースも同じ)の増加にとどまる見通し。
 民生部門は、省エネ対策の効果が見込まれるものの、世帯数や床面積の増加や生活水準の向上(豊かさの追求)を主因とした潜在的エネルギー需要の増加によって相殺され、レファレンスケースで1990年度比42%、現行対策推進ケースで同37%と大きく増加する見通し。
 運輸部門は、貨物部門では輸送量の安定化・効率化等を背景に安定的に推移するが、旅客部門では省エネ対策の効果が見込まれる一方、輸送量の増加等も想定されるため、レファレンスケースで1990年度比27%、現行対策推進ケースで同20%増と相当程度増加する見通し。
(追加対策ケース)
 追加対策ケースでは、民生及び運輸部門を中心に追加的な対策が実施される前提である。この結果、民生部門では1990年度比29%の増加に抑制され、運輸部門では同17%の増加に抑制される見通し。
ハ. 一次エネルギー供給の見通し(表3および図3
(現行の2010年の見通し)
 エネルギー供給構成は、2000年度で、石油等のシェアが5割まで低減するなど、供給源の多様化は、この30年間でかなりの進展が見られた。2010年には、天然ガス、原子力、再生可能・新エネルギー等のシェアの増加に伴い、供給源の多様化に一層の進展が見込まれる。
 エネルギー源別動向を見ると、石油は、消費量は減少するが、依然として一次エネルギー供給で4割以上を占める重要なエネルギー源としての位置を占める。天然ガスはシェアが若干増加。石炭は消費量・シェア共に横這い。また原子力は、2010年度時点までの新規増設分として既建設中の3基が見込まれ、3,753億kWh となり、シェアは14%程度に達する見通し。再生可能・新エネルギー等は、現行対策の着実な実施により、若干のシェア増加が見込まれる。
(追加対策ケース)
 現行対策推進ケースと比較すると、供給サイドの追加対策により、原子力と再生可能・新エネルギー等のシェアは若干増加する。他方、化石エネルギーのシェアは、需要サイドの追加対策により若干減少する。
ニ. 発電電力構成の見通し(電気事業者)
(現行の2010年の見通し)
 発電電力量構成は、2000年度で、特定の電源の量の確保や価格変動に対する対応力という点で、かなりバランスの取れたものとなっていると評価できる。レファレンスケース及び現行対策推進ケースにおいても、同様の傾向が続くものとなっている。
(追加対策ケース)
 現行対策推進ケースと比較すると、電気事業者による追加的な対策及び省エネルギー対策の効果により、原子力発電のシェアが増加する一方、火力発電のシェアが低下する。(図4参照)
(注)石油代替エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律(抜粋)
第三条 経済産業大臣は、総合的なエネルギーの供給の確保の見地から、石油代替エネルギーの供給目標(以下「供給目標」という)を定め、これを公表しなければならない。 経済産業大臣は、供給目標を定めるときは、閣議の決定を経なければならない。
<図/表>
表1 開発及び導入を行うべき石油代替エネルギーの種類及びその種類ごとの供給数量の目標
表1  開発及び導入を行うべき石油代替エネルギーの種類及びその種類ごとの供給数量の目標
表2 最終エネルギー消費
表2  最終エネルギー消費
表3 一次エネルギー供給
表3  一次エネルギー供給
図1 エネルギー起源CO
図1  エネルギー起源CO
図2 部門別エネルギー需要の見通し(90年度=100)
図2  部門別エネルギー需要の見通し(90年度=100)
図3 一次エネルギー国内供給シェアの見通し
図3  一次エネルギー国内供給シェアの見通し
図4 発電電力量シェアの見通し
図4  発電電力量シェアの見通し

<関連タイトル>
日本の最終エネルギー消費構成と推移 (01-02-02-06)
日本の新エネルギー導入政策 (01-09-07-01)

<参考文献>
(1)「石油代替エネルギーの供給目標改定」について,
(2) 総合資源エネルギー調査会需給部会2030年のエネルギー需給展望(2005年3月),
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