<大項目> エネルギーと地球環境
<中項目> 日本のエネルギー情勢
<小項目> 日本のエネルギー需給
<タイトル>
日本の最終エネルギー消費構成と推移 (01-02-02-06)

<概要>
 日本の最終エネルギー消費は、高度経済成長期、および1980年代半ば以降と2度にわたって大幅に増大したが、2000年以降はほぼ横這いで推移している。部門別に見ると、高度経済成長期には、産業部門の消費比率が大きく、特に製造業が全体の6割以上を占めていた。しかし、近年は輸送部門と民生部門の消費が著しく増大してきており、現在では産業部門の比率は全体の半分以下にまで低下した。かつては生産目的のエネルギー消費が多かったが、現在では利便性、快適性を高めるための消費が増加しつつあることを示している。燃料別には、1980年代半ば以降も石油製品の構成比が全体の6割程度で推移しており、石油への依存が相変わらず大きいが、その中味は輸送用燃料にシフトしてきている。電力の消費は一貫して増加しており、2005年度には最終エネルギー全体の約24%を占めている。家電機器の省エネ化も進んでいるが、全電化住宅も急速に増加しつつあり、クリーンで利便性の高い電力への依存率の増加傾向は今後とも続くものと予想される。
<更新年月>
2008年01月   

<本文>
1.エネルギー消費全体の推移
 一次エネルギーのうち、エネルギー転換部門(石油精製や発電)におけるロスと自家消費を除いたものが、産業部門、輸送部門、民生部門に供給される。これらの部門ではそれぞれ生産用、輸送用、民生用(主として人間の生活環境づくり)に、エネルギーを利用する。この最終段階のエネルギー利用を、最終エネルギー消費と呼ぶ。無論、物理法則ではエネルギーは保存されるものであり、「最終消費」によってなくなるものではない。厳密に言えば、エネルギー消費とはエネルギーの価値(工学的にはエクセルギー(*1)という概念で表されることもある)を消費するものである。
 エネルギー消費は経済活動や生活様式と密接に関係している。また、エネルギーは様々な形態で生産、消費されるが、それぞれ市場で取引される商品であり、価格を持っている。エネルギー価格もまたエネルギー消費の動向に大きな影響を与える。
 日本におけるエネルギー関連指標と最終エネルギー消費量のこれまでの推移を図1に示した。人口は、1980年代に入って伸びが鈍化し、最近ではほとんど横這いになっている。各年10月1日現在で表した人口統計によると、日本の人口は2004年にピークに達し、その後はわずかながら減少に転じている。経済活動の規模を表す実質GDPは1973年の石油危機を契機に伸びが減少したが、1980年代後半には再びかなり高い伸び率となった。1990年代初頭のバブル経済崩壊以降は名目GDPはほとんど増えておらず、経済規模の停滞感が強いが、デフレ(物価の下落)も進行しているので実質GDPは徐々に増大してきている。原油価格(ここでは円建て実質価格)は、1973年と1979年の2度にわたる石油危機の後に高騰したが、1980年代後半には大幅に下落し、1990年代にはほぼ第一次石油危機以前の水準にまで戻った。しかし、2000年以降再び急激に価格が上昇し、名目では第2次石油危機当時をはるかに超える水準で高止まりしている。この価格高騰は、突発的な要因(イラク戦争、産油国の内紛問題、ハリケーンによる米国石油施設の被害など)を契機として始まったが、投機的資金が大量に流入する中で、中国を中心としたアジア諸国における石油需要の急増などに基づく先高感が市場を支配していることが高価格水準が持続する要因となっている。
 こうした社会、経済情勢の変化の中で、最終エネルギー消費量は1973年までは急増したが、その後1980年代半ばまではほぼ横這い、それ以降は再び大幅に増大し、そして1990年代後半以降は安定した水準で推移している。1973年までのいわゆる高度経済成長期には、エネルギー多消費型の素材産業が急速に拡大したため、経済成長を上回る速度で、エネルギー消費量が増大した。しかし、第一次石油危機で石油の供給が量的にも、価格面でも不安定となり、省エネと産業構造の大幅な転換が図られた。これによって、ある程度の経済成長を維持しながらも、エネルギー消費を抑制し続けることができた。
 1980年代半ばからのエネルギー消費の増大には幾つかの要因がある。経済成長率が高まったこと、石油価格が低水準で安定したこと(国際市場での価格低下と円高による円建て価格水準の低位での推移)、輸送用、民生用のエネルギー消費が増えてきたことなどである。この中で、エネルギー消費の部門構成が変化してきたことが特に重要である。
 主要国の最終エネルギー消費の部門構成の推移(表1)をみると、先進諸国では第一次石油危機以降、今日に至るまで概ね産業部門の構成比が低下し、輸送、民生のいずれか、または双方が増大している。日本の場合には特に産業部門の低下と、輸送、民生部門の増大が顕著である。
 この部門構成は、無論、国ごとの固有の条件に影響されるものであり、例えば欧米諸国に比べて温暖なわが国では暖房用エネルギーの潜在的需要はより小さい。また、平野部の人口密度が高く、一人当たり道路面積が狭いことが、自動車輸送のエネルギー需要の増加に対する抑制因子となっている。しかし、生活様式やオフィス環境の変化を背景に、民生部門では2000年以降もエネルギー消費量は徐々に増加してきており、エネルギー消費の増加に歯止めをかけるためには省エネへの取組を一層強めることが必要とされている。
 なお、表1によると経済発展の著しい中国とインドではむしろ産業部門の比率が高まりつつある。これは、先進諸国が1950年代〜1960年代に経験したように、これらの諸国の経済が現在、重化学工業を中心とした高度成長段階にあることを示している。将来的に国内の社会資本整備が進み、基幹産業が素材系から加工組立系、さらにサービス系へと変化していくと、現在の先進諸国と同様に産業部門の比率が低下し、輸送と民生部門の比率が相対的に高まっていくと考えられる。
2.エネルギー消費の構造的変化
 わが国の最終エネルギー消費の推移を部門別にみると(図2および図3)、1973年までの高度経済成長期には、産業、民生、輸送の各消費がほぼ比例的に増大していた。ただし、製造業だけで全体の6割を占めており、エネルギーは主として生産目的に使用されていた。しかし、1973年の第一次石油危機以降、産業部門のエネルギー消費は横這い、ないし減少に転じ、シェアは急速に減少した。民生、輸送部門でも伸率は大幅に鈍化したが、貨物輸送を除けば、石油危機後も消費量が増加を続けた。
 しかし、この傾向は1980年代半ばから変化した。産業部門のエネルギー消費は再び増加し始め、輸送、民生ではそれ以上に増加傾向が強まった。産業部門の消費増大は、低コストの省エネ技術が概ね普及した時期に石油価格が下落し、省エネをさらに推進する経済的メリットが小さくなったこと、世界的な好況とエネルギーコストの低下で素材産業の生産水準が上昇したことなどが挙げられる。一方、輸送部門では輸送量の増加に加えて、自動車輸送へのシフト、車両の大型化などが増加要因となった。また、民生部門では、利便性、快適性を追求した生活様式の変化が、消費増大の主たる要因となっている。
 以上のエネルギー消費構造の変化について言えるのは、非生産目的の消費が相対的に増加してきたことである。高度経済成長期以来、経済規模が拡大し、個人所得が増大する中で、当初はモノの消費が豊かさの中味であったが、1980年代半ば以降は物質的な充足の進展とともに、利便性、快適性の向上、いわば生活の質を高めることへの支出が増大してきた。個人消費においては、エネルギーは永らく倹約の対象であったが、最近ではエネルギー支出の効用(満足感)が高まっている。これは、今後のエネルギー消費の動向を見通す上で、重要な因子である。
 最終エネルギー消費の推移を燃料別にみると(図4および図5)、高度経済成長期には石油製品の消費量が急増したが、2度にわたる石油危機によって1980年代半ばまでは消費量が横這い、ないし減少となった。その後、石油消費量は再び増加傾向に転じ、1990年代末にようやく増加が頭打ちとなった。最近は減少傾向をみせているが、現在でも消費量は未だに石油危機当時を上回る水準にある。構成比でみると、1973年には全体の7割近くを占める高い比率であったが、その後徐々に低下し、1980年代以降は概ね60%程度で推移してきた。2000年以降は60%を切る水準で低下を続けている。なお、このように石油製品全体としては消費量、構成比ともに大きく、最終消費における基幹的なエネルギーであることは変わっていないが、その中身は産業構造の転換や自動車輸送によるエネルギー消費の増大を反映して、重質油からガソリン、軽油へと大きくシフトしてきている。
 コークスは大部分が製鉄用に使われるため、粗鋼生産の規模に応じて消費量が変動するが、1979年の第二次石油危機以降、わが国の粗鋼生産量が1億トンを前後する中で、消費量はほぼ横這いで推移している。ただし、ボイラ・工業炉等に使用する石炭(一般炭)は、窯業土石、紙・パルプ部門などで石油代替エネルギーとしての利用が増加してきている。なお、最終エネルギー消費量全体が増加してきたため、構成比率は近年低下傾向にある。都市ガスは民生用の需要が堅調に伸びてきているほか、工業用の需要も急速に伸びているため、消費量および構成比率ともに増大しつつある。最終消費全体に占める比率は2005年度時点で7.8%である。
 電力の消費も増加がきわめて顕著であり、最終エネルギーに占める構成比率が石油危機以降一貫して増加し続けている。2005年度の構成比率は23.7%である。産業構造の転換(素材型から加工組立型へ、さらに第二次から第三次へ)、民生部門のエネルギー消費の増大がその主な要因となっている。また、石油危機を経て、原子力、LNG火力などの代替電源への切り換えが進み、供給力、価格ともに安定していることが、電力エネルギーへの信頼を高め、電力依存度を高める要因ともなっている。家電機器の省エネ化も進んでいるが、全電化住宅(*2)も急速に増加しつつあり、利便性、快適性を求める生活様式や高齢化が進む中で、最終消費エネルギーの電力シフトがさらに大きくなることが予想される。
[用語解説]
(*1)エクセルギーとは、ある温度、圧力に置かれた単位量の物質を環境状態まで変化させる時に取り出しうる最大仕事量のことで、有効エネルギーとも呼ばれる。エネルギーには、熱、電気、力学的エネルギーなど、多様な形態があるが、エネルギー量は同じでも形態や状態(温度、圧力等)によって質が異なり、有効な仕事として取り出せる割合は異なっている。このエネルギー総量のうち有効に取り出しうる仕事量がエクセルギーである。閉じた系を考えた場合、エネルギーは熱力学第一法則により保存されるが、エクセルギーは不可逆的な状態変化やエネルギー変換過程によって減少する。
(*2)全電化住宅とは、給湯、冷暖房、調理など、生活に必要なエネルギーのすべてを電気で賄う住宅のこと。オール電化住宅とも呼ばれる。
(前回更新:2004年1月)
<図/表>
表1 主要国の最終エネルギー消費量と構成比の推移
図1 エネルギー関連主要指標と最終エネルギー消費量の推移
図2 日本の部門別最終エネルギー消費の推移
図3 日本の最終エネルギー消費の部門別構成
図4 日本の燃料種別最終エネルギー消費の推移
図5 日本の最終エネルギー消費の燃料種別構成

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
日本の一次エネルギー供給構成と推移 (01-02-02-05)
日本の部門別エネルギー消費(産業部門およびエネルギー転換部門) (01-02-03-06)

<参考文献>
(1)(財)日本エネルギー経済研究所計量分析部(編):EDMC/エネルギー・経済統計要覧2007年版、(財)省エネルギーセンター(2007年2月15日)
(2)資源エネルギー庁エネルギー情報企画室:平成18年度 エネルギーに関する年次報告書(エネルギー白書)、(平成19年5月25日公表)
(3)総務省統計局:平成18年10月1日現在推計人口(平成19年3月22日公表)、http://www.stat.go.jp/data/jinsui/2006/index.htm#2006-a
JAEA JAEAトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ