<大項目> エネルギーと地球環境
<中項目> エネルギー政策
<小項目> 石炭政策
<タイトル>
日本の石炭エネルギー政策 (01-09-02-01)

<概要>
 石炭エネルギーは、その供給安定性および経済性から石油危機以降世界のエネルギー需要を上回る高い伸びを示し、今後も石炭需要の増加傾向が続くと考えられている。しかし、二酸化炭素の排出原単位が高いなど、近年関心が高まっている地球環境問題は、石炭利用拡大の大きな制約要因となっている。環境負荷低減の技術開発を一層推進して、石炭利用の効率化を図るとともに、途上国への石炭開発・利用、環境対策の援助等、わが国の国際的貢献が強く求められている。
<更新年月>
2004年02月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 日本の石炭需要は近年増勢に転じ、1次エネルギー供給を上回る伸びを示している(表1参照)。
 これは、二度にわたる石油危機を契機に、わが国の極めて脆弱なエネルギー需給構造の改善を図るため、積極的に推進してきた石油代替エネルギーの開発・導入の中で、石炭の供給安定性、中長期的経済性が見直され、石油代替エネルギーの重要な柱として利用の推進が図られてきたためであり、すでに建設が進められている石炭火力発電所向け等を中心として、当面、需要は増加傾向で推移すると見込まれる(表2)。しかしながら、CO2排出原単位が高いなど、環境負荷低減の観点からは制約要因が多いため、石炭利用の効率化を図る一方で、利用を一層拡大するに当たっては、環境負荷の抑制を図ることが必要となっている。
1.今後の石炭安定供給対策の方向と課題
 今後、アジア・太平洋地域においては、電力用一般炭を中心とした石炭需要の飛躍的増大が見込まれることに加え、域内産炭国の採炭条件が悪化傾向にあることなどを考慮すれば、環境負荷低減に配慮しつつ、域内の石炭資源の開発を推進し、その利用の効率化を図ることは、わが国の石炭の安定供給上、重要な課題である。このため、
(1)石炭資源の開発・輸入支援および探査活動への協力や、
(2)海外炭鉱における技術者の育成や海外産炭国に適合した石炭生産技術の共同開発、
(3)石炭利用にともなう環境負荷の低減や多目的利用を推進するための技術(クリーン・コール・テクノロジー)の開発促進および積極的な海外移転・普及促進等が、引き続き必要である。
2.アジア・太平洋地域における石炭利用の拡大と環境問題
 近年の経済の急速な発展を背景に、中国をはじめとするアジア・太平洋地域では、エネルギー需要が大きな伸びを示し、この中でとりわけ石炭需要の増大が顕著である。今後もこの傾向が続くものと考えられている(図1)。この結果、同地域では1975年から1987年までの12年間だけでもSOx排出量が1800万tから2900万tに、NOx排出量が900万tから1500万tにと、いずれも1.6倍に増加しており、現在も環境への負荷は増大している。発展途上国においては一般に環境対策が遅れている結果、中国を中心に各地で深刻な酸性雨の問題が発生し、農作物への影響、森林被害、金属腐食等が生じているとの報告もある。今後の動向次第では、酸性雨の問題は国境を越えた広がりを示す懸念もある。このようなSOx、NOxの発生、その影響の現状等を踏まえると、アジア・太平洋地域における環境対策の実施は緊急の課題である。
3.石炭利用の推進と技術による環境負荷の克服
 わが国は、1960年代以降の急速な工業化による経済・成長の過程で、煤塵、SOx等の深刻な公害問題に直面したことから、国や地方自治体においてSOxの総量規制等環境問題の解決に向けた規制の強化が行われた。こうした厳しい規制に対応すべく、煤塵対策として電気集塵機等の導入が進められ、またSOx、NOx対策として、低硫黄炭の利用とともに、効率のよい脱硫・脱硝装置、流動床ボイラー等の環境対策機器の開発・導入が行われて以来、技術開発が行われている。
 鉄鋼業ではコークス生産に伴い硫黄分(硫化水素)を含むコークス炉ガスが発生するが、このコークス炉ガスについても湿式脱硫装置等を用いた脱硫処理が行われてきた。
 また、石炭のもつデメリットであるハンドリングの問題の克服のため、CWM(Coal Water Mixture)、COM(Coal Oil Mixture)、CCS(Coal Cartridge System)等の開発・導入努力が行われ、現在では一般産業、電気事業の一部においてCWM、CCS等の導入・利用が行われている。さらに、石炭の経済性の向上のため、ボイラの大型化、加圧流動床ボイラの開発等の石炭利用機器の高効率化に向けての努力が行われ、石炭火力発電所においての発電端効率が、他の先進国と比較してもきわめて高い水準で向上している。
4.海外炭安定供給の確保と国際石炭需給安定化への貢献
 わが国では国内石炭鉱業の構造調整が進展し、国内炭の生産規模は段階的に縮小してきている一方、石油危機以降国内の石炭需要は大きく拡大し海外炭輸入の増加が著しい(表3-1表3-2)。2000年度のわが国の海外炭輸入量は約1億4930万tに達し、わが国の石炭需要約1億5230万tの約98%を占めるに至っており(表2)、引き続き海外炭の安定供給確保が重要な課題となっている。一方、特に発展途上国においては中長期的には今後の経済発展にともなう大幅なエネルギー需要の伸びが予想されることから、石炭需要は国際的にも増大していくものと予測されている。世界第1位の石炭輸入国であるわが国としては、石炭分野での国際協力の推違等を通じ国際的な石炭需給の安定化のための貢献を図っていく必要がある。
5.今後の石炭利用の位置づけ
 エネルギーの需要が再び増大傾向を強め、また、石油需要が中長期的に逼迫するものと見込まれる中で、わが国の脆弱なエネルギー供給構造を改善、強化していくためには、エネルギーの最適な需給構造の実現をめざし石油代替エネルギーの利用をいっそう推進していくことが必要不可欠である。石炭は、その供給安定性、中長期的経済性の観点から、石油代替エネルギーの中で今後とも重要な役割を担い続けるものと考えられる。酸性雨、地球温暖化等の地球環境問題への適切な対応は、石炭利用を進めていく上で、最も重要な課題の一つといえる。従来、石炭の公害問題については積極的に対処してきたところであるが、今後は、環境負荷低減へのより積極的な対応が望まれており、この点に十分留意してその利用を図るべきである。地球温暖化問題については、世界が一体となって取り組むことが必要不可欠な問題であり、現在、国内外において広範な見地からさまざまな議論、検討が積極的に行われているところであることから、石炭利用サイドとしても基本的にはその動向を注視しつつ種々の検討、対応を行っていくことが望まれている。ここでは、石炭利用サイドとして当面積極的に対応すべきと考えられる事項について述べる。
(1)技術的対応
 酸性雨については、脱硫、脱硝装置の設置や炉内脱硫が行える流動床ボイラーの導入等を進めることにより技術的には十分対応可能であり、技術レベルおよび装置導入実績の両面でわが国は世界最高の水準にある(石炭火力発電所における脱硫、脱硝装置の設置率はそれぞれ約92%、約68%「出力ベース」)といっても過言ではない。もちろん、現状に甘んじることなく、今後とも、より効率的かつ経済的な技術の開発へ向けて努力していくことは重要である。地球温暖化問題については、その要因の一つとされている二酸化炭素の発生について、燃焼設備における熱効率の改善により、単位発生エネルギー当たりの石炭使用量を減少させることを通じて二酸化炭素発生量を相当程度抑制することが可能である。わが国は、石炭利用の熱効率の面でもすでに世界的に高い水準にある(石炭火力発電所における平均発電端効率は39%)が、いっそうの効率改善に向け積極的な技術開発を行っていくことが重要である。さらに、より抜本的な技術的対応策の一環として、二酸化炭素の固定化に関する技術開発を進めていくことも必要である。このような観点から、石炭利用技術(クリーン・コール・テクノロジー)(表4)の開発を進め、同テクノロジーの国際的普及基盤整備を推進する。
(2)環境協力を通じた国際的貢献
 地球環境問題を論ずる際、一次エネルギー消費に占める石炭依存度が高く、今後エネルギー需要の大幅な伸びが見込まれる中国をはじめとするアジア・太平洋地域における石炭を含むエネルギー需給の動向および利用のあり方に対し十分な考慮を払うべきであると考えられる。わが国としては、効率的かつクリーンな石炭利用が世界的に拡大することが地球環境問題を解決する上での鍵になることから、わが国のもつ優れた環境対策技術、ノウハウを、これらの石炭多消費国、発展途上国への経済協力、技術協力を通じて広めていくことが重要である。また、今後とも、わが国が効率的かつクリーンな形で石炭利用を進めていく中で、改善される技術の移転に努めていくことが重要である。
<図/表>
表1 わが国の一次エネルギー供給構造の推移
表2 産業別石炭需要の推移
表3-1 わが国の供給国別石炭輸入量の推移(1/2)
表3-2 わが国の供給国別石炭輸入量の推移(2/2)
表4 主なクリーン・コール・テクノロジー
図1 アジア地域の一次エネルギー需給見通し

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<関連タイトル>
主要国の石炭政策 (01-09-02-03)

<参考文献>
(1)資源エネルギー庁(監修):1999/2000資源エネルギー年鑑、通産資料調査会(1999年1月)、p.400-432
(2)資源エネルギー庁(編):エネルギー2004、(株)エネルギーフォーラム(2004年1月21日)
(3)資源エネルギー庁資源・燃料部(監修):コール・ノート2000年版、資源産業新聞社発行(2002年3月)
(4)資源エネルギー年鑑編集委員会(編):2003/2004資源エネルギー年鑑、通産資料出版会(2003年1月)
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