<大項目> エネルギーと地球環境
<中項目> 地球環境問題
<小項目> 地球温暖化問題と対策
<タイトル>
カナダの温室効果ガス政策 (01-08-05-26)

<概要>
 カナダは京都議定書に従い、2010年の温室効果ガスの排出を240百万トン(MT)(二酸化炭素換算)削減する必要がある。一方、カナダ国民は、気候変動の影響と思われる異常現象を感じている。カナダの温室効果ガス政策は、3段階からなる行動計画として進められる。
 第1段階は、目標の3分の1(80MT)まで削減する行動計画。第2段階は、さらに100MT削減の戦略。第3段階は、残りの60MTの削減の行動計画である。これらは輸送、家庭及び商用/公共ビル、大規模産業排出者、再生可能エネルギー及びクリーンな化石燃料、中小企業及び一時的排出、農業及び森林と埋立て地並びに国際市場の7つの分野で進められる。
<更新年月>
2004年07月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 京都議定書においてカナダは、二酸化炭素排出量を2008−2012年間に年平均で、1990年水準の6%削減することになっている。これは、従来のまま推移した場合の2010年排出量から240百万トン(MT)(二酸化炭素換算)を削減することになる。
 カナダでは、気候変動の影響を以下の形で感じている:
・増大する熱波の頻度と厳しさ及び関連した健康問題
・五大湖の水位の低下
・魚の移動と極地の氷冠融解の変化
・ブリティッシュ・コロンビア州の森林での昆虫の群生
・主要な都市中心地の暑い夏と高レベルスモッグ
・大草原の干ばつ、カナダ東部の着氷性暴風雨、マニトバ、ケベック州の洪水のような多くの極端な気象事象
 このような気候変動関連事象がより頻繁に起きているので、それらは経済、健康及び生活の質にますます深い影響を持つであろうと考えている。
1.カナダの政策
 行動計画で概説される全体的なアプローチは、2002年10月28日の気候変動政策に関する声明に述べられており、州や準州政府によって示された原則−例えば、国中で利益と負担を共有する、カナダ独自のアプローチの重要さ、カナダのクリーンエネルギーの輸出継続の必要性、及び産業界による早期行動認識の必要性−を基本としている。
 行動計画は、年間240MT(百万トン)の温室効果ガス(GHG)を削減するカナダの気候変動目標を達成するために3段階のアプローチを設定している(表1表2)。
 第1は、全体削減量の3分の1(80MT)に向うまでの行動計画。
 第2は、さらに100MT削減のための明瞭な戦略。
 第3は、残りの60MTの削減に向かうことのできる多くの潜在的な行動計画。
 行動計画は、必要に応じ、時とともに変化しなければならない。新しい考えが出て、新技術が開発され、よりよいアプローチが提案されるとき、カナダ国民は排出削減を達成するために、資源を効果の少ない行動からより多くの可能性をもつ行動に柔軟にシフトしなくてはならない。
 行動計画は、国家的目標:カナダ国民が世界でエネルギーの最も卓越した効率的な消費者であり、かつ生産者であり、新しいよりクリーンな技術の開発における世界のリーダーとなる、を提案している。
 ゴールを達成するために、計画は5つの重要な手段を提案している:
(1)低排出の技術及びエネルギー源へのシフトの誘因をつくりだす規制あるいは財政的な裏付けをもつ契約を通して設立された、大規模産業排出者達への排出削減目標。一方では、排出取引、国内相殺や国際的な許可へのアクセスを通して排出者達へ柔軟性を用意すること。
(2)排出削減のコストを分担するパートナー基金、州及び準州政府市民、原住民、非政府組織、並びに民営部門と協同して、最も効果的な方法でエネルギー効率を増加させ排出を削減する。
(3)革新的な気候変動提案への戦略的基盤投資−都市交通プロジェクト、モーダル間の輸送施設及びCO2パイプライン等のような提案。
(4)カナダに気候変動政策の革新的可能性から充分な利益を与える。そしてカナダ技術パートナー関係(Technology Partnerships Canada)、産業研究援助プログラム(Industrial Research Assistance Program:IRAP)、持続開発技術カナダ(Sustainable Development Technology Canada)及び技術早期行動対策(Technology Early Action Measures:TEAM)のようなプログラムを作りあげる統合された革新的戦略。
(5)特定部門とプログラム分野で、気候変動目標を達成するのを助けるような、情報、誘因、規則及び税制を含む対策。
2.行動計画の主要分野
 これらの手段を使用して計画は、輸送、家庭及び商用/公共ビル、大規模産業排出者、再生可能エネルギー及びクリーンな化石燃料、中小企業及び一時的排出、農業及び森林と埋立て地、並びに国際市場の7つの幅広い分野で行動をする。
(1)輸送
 行動計画2000では、すでに適切な投資を講じており、さらに燃料効率を改善し、エタノールと他の低カーボン燃料の使用を拡大し、よりエネルギー効率の良い都市及び貨物輸送を促進するための手段を、特に以下の計画で設定している。
・自動車製造業者との2010年までに新車の燃料効率を25%改善する協同計画を更新し、消費者がより効率の良い車を要求することを奨励するようなステップを提案する
・公共の輸送の使用を増やし、乗車率が増える管理をするよう新しい投資をする
・10%のエタノール混合ガソリンの量を市場の35%まで増やし、州や準州と協同で、バイオディーゼル生産を5億リットルに増やす目標を設定する
・全ての貨物輸送の業務目標の改良と最善の基準、強化したインターモーダル基盤を提案する
(2)家庭及び商用/公共ビル
 国民は、彼らの住宅に関し、多くの基本的ステップを取ることによって、家屋のエネルギー効率をもっと良くし、かつエネルギーコストを低くする非常に多くのチャンスを持っている。以下のような、もっとくわしい情報に基づいた選択と行動がとれる状況を作る:
・家屋所有者のため、コスト分担した家屋のエネルギー会計監査の拡大
・消費者がエネルギー効率の良い器具と設備を購入するのを奨励するよう情報を提供
 行動計画は、以下の目標へ向けた政府の行動を提案している:
・2010年までに、住宅在庫の20%と商用/公共の建物在庫の20%にエネルギー効率的な改造
・全ての新築住宅は2010年までにR2000相当の基準で建設、新設する商用/公共ビルの最低25%までは2010年までに基準(Model National Energy Code)以上で建設
(3)大規模産業排出者
 大規模産業排出部門に、広範囲のアプローチを提案している。三方面からの戦略が、州、準州及び産業界と相談して開発されている:
・産業界、州、準州と相談の上、規制あるいは財政的な裏付けをもつ契約を通して設定された排出目標
・国内排出取引−相殺勘定(offsets)及び国際的な許可へのアクセスを含む
・以下のような多くの分野へコスト分担した戦略的投資:
 再生可能エネルギー、クリーン石炭実証プロジェクト、CO2パイプライン
(4)再生可能エネルギー及びクリーンな化石燃料
 再生可能エネルギー使用の増加及びクリーンな化石燃料に対する革新的な新技術の実証は、カナダの京都目標の達成に、そして、より長期の低排出量の軌道にカナダの産業部門を乗せることに貢献する。
 政府は:
・新生の再生可能資源から新発電容量の10%の目標を設定し;
・州と一緒に、地域の水力電気送電と発電容量新設の障害除去の方策を定め開発する;
・適切なクリーン石炭技術実証プロジェクト(改造/新プラント)への参加を考慮する;
・州と民間部門と共に、CO2の捕獲と貯蔵パイプラインの設立を調査する。
(5)中小企業及び一時的排出
 中小企業及び他の低排出事業は、自発的なエネルギー効率向上を通して気候変動目標を達成するために重要な役割を演ずることができる。行動計画は:
・カナダ産業エネルギー保存プログラム(CIPEC:Canadian Industry Program for Energy Conservation)を拡大し、中小企業を含める;
・コスト分担したものについてエネルギー効率を監査する;
・産業研究援助プログラムを通して、小さい製造業者が利用できる最高のエネルギー効率技術に関する情報と援助を提供する;
・廃棄ガスの燃やし(flaring)と排出の削減の実行を奨励する。
(6)農業及び森林と埋立て地
 これらは、排出を減らして、シンクを増やす分野で国内排出取引の中で潜在的相殺クレジットとなっている。これを達成するために、政府は:
・新しい農業と林業シンク(既存のシンクから30MTを超える)が排出権取引システムにおいて相殺されるような体制を確立する;
・新しい埋立ガスの吸収や燃やしからの排出削減を規制して相殺として売ることができるかどうか協議する。
(7)国際市場
 カナダは、国際的な排出取引市場問題で活発である。開発途上国が、低排出パス計画を作るのを支援し、一方でカナダの会社の有益なビジネスチャンスを引き起こす。
 政府は、民間部門と一緒に、発展途上国で効果的なプロジェクト実行のための機構を確立し、最低10MTの国際的許可の購入を考える。
3.コスト評価
 経済モデルは、これらの行動計画が燃料価格を極端に上昇させず、多くの行動は、より大きいエネルギー効率によって、低い燃料価格(事業と消費者にとって)に終わることを暗示している。
 全体的に、経済のモデリングは、気候変動に関して行動を起こすことの影響は処理可能であることを示唆する。
 最も起こりそうなシナリオでは、GDPは2010年に0.4%だけ減少する。言い換えると、従来、2002〜2010年間に18%成長するとしていたが、約17.6%成長することになる。雇用の増加は、132万人ではなく126万人となる。個人可処分所得は、影響を受けない。
 カナダの気候変動行動計画は、新たな指針と気力を要するもので、市民と科学者、革新者と企業家に最善を要求する。それは、カナダの経済の競争力とカナダ国民の生活の質を強化する機会であり、大国に値する国家プロジェクトである。
<図/表>
表1 3段階行動の概観
表2 第1及び第2段階の排出削減

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<関連タイトル>
IEAによるカナダのエネルギー政策のレビュー(2000年) (01-07-06-09)

<参考文献>
(1)Taking Action on Climate Change,
(2)Climate Change Plan for Canada(2002年11月21日)
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