<概要>
各種エネルギーを得るためには、エネルギー生産システムを構築する必要がある。このシステムの構築から終えんまでがシステムのライフサイクルであり、その期間中、呼吸に相当する排ガスを出している。ここでは発電システムを例にとり、そのライフサイクル、すなわち建設から、営業運転、廃棄までの期間の
温室効果ガスの環境への排出量を、電気事業用の実用プラント、石油火力、石炭火力、
LNG火力、原子力、水力、地熱発電について評価した。温室効果ガス排出抑制の観点からは、原子力、水力、地熱発電が優れているという結果が得られた。
<更新年月>
1997年03月 (本データは原則として更新対象外とします。)
<本文>
発電システムから出る温室効果ガスの環境への影響を考察する場合には、発電に係わる装置・プラントの製造・建設及び燃料等の原料採取。加工段階から、廃棄物の処分、物資の輸送まで一連のプロセスの中で、排出するガス量について生成するエネルギーとの関係を評価しなければならない(
図1)。
発電システムで発生する地球の温室効果ガスとしては、二酸化炭素、炭化水素、亜酸化窒素等があるが、二酸化炭素、炭化水素の一つのメタン以外は公害防止の観点から、放出を厳しく制限されているので、
地球温暖化効果ガス問題を解析する場合には、二酸化炭素のみを対象とし、対象とする発電システムは
表1の左欄に示す電気事業用の実用プラントで、石油火力、石炭火力、LNG火力、
原子力発電(
BWR、ワンススルー)、水力、地熱発電とする。また、設備の容量、利用率は
表1の値を採用し、設備の寿命を30年とした。
図2 は発電プラントの温暖化影響を分析した結果である。この図は、プラントの寿命30年間に発生するCO
2の量を、その間の発電電力量で割ったもので、発生電力量kWh当たりに発生する二酸化炭素量を比較したものである。このうちで、網目の部分は燃料から発生する二酸化炭素であり、白抜きの部分は、施設の製造、燃料の採掘、輸送、廃棄物処理等で発生したものである。
図2から、温室効果ガスの発生による地球温暖化への影響は原子力、水力、地熱発電が非常に少ない。この図は設備の寿命が30年の場合で比較したが、寿命がこれより長くなると、原子力の利点はより大きくなると思われる。
電力生産のためにエネルギーを投入する必要があり、投入エネルギーに対する電力生産量、すなわち
エネルギー収支比を各発電システムについて
図3 に示す。この比は水力がもっとも優れており、次いで地熱、原子力となる。原子力発電システムでプルトニウムリサイクルを実施すると、CO
2排出量は減り、地球温暖化傾向は緩和される。ウラン燃料の濃縮を
ガス拡散法から遠心分離法に置き換えると、原子力のエネルギー収支比は約3倍になり、CO
2排出量は約半分になる。一方、発電システムで発生する二酸化炭素固定化の技術開発も行われているが、現在のところ、具体的に地球温暖化抑制効果を評価できる段階にはない。
<図/表>
<参考文献>
(1) 内山洋司:発電システムのライフサイクル分析、研究報告Y94009、電力中央研究所研究報告、(財)電力中央研究所(1995年3月)