<大項目> エネルギーと地球環境
<中項目> 世界のエネルギー情勢
<小項目> エネルギー貿易と市場
<タイトル>
原油スポット価格の推移 (01-07-04-05)

<概要>
 原油価格は、19世紀末からメジャーが独占的に決定していたが、1960年以降はOPECが発言権を強めた。第1次、2次石油危機を経て、中東の混乱と非OPEC産油国の増産もあり、原油は商品として、米ニューヨーク・マーカンタイル取引所、英ICEフューチャーズ、ドバイ金融商品取引所等で売買されるようになった。実勢価格は仕向地ごとに、WTI原油、ブレント原油、ドバイ・オマーン原油のスポット価格や先物価格を指標にして決められている。原油価格は、地政学的リスク、開発途上国の経済開発、中国の経済的台頭、資源ナショナリズム等の多くの影響で高下している。
<更新年月>
2009年02月   

<本文>
1.原油価格の歴史
 1960年に結成されたOPEC(石油輸出国機構)が原油価格と産油量を決定するようになるまで、メジャーと呼ばれた国際石油企業がそれらを決めていた。1973年の中東戦争による第1次石油危機、1978年のイラン革命と1980年のイラン・イラク戦争による第2次石油危機以降は、石油の高騰に対応してOECD(経済協力開発機構)諸国の技術・経済基盤は変り石油需要は徐々に低下した。一方、開発途上国の経済発展が始まり、石油消費が増え石油価格も上昇した。この間に、非OPEC産油国が増産を進めOPECはシェアを減らし、石油は独占的な物ではなくなった。1987年以降に石油が商品としての新しい市場が成立し、米ニューヨーク・マーカンタイル取引所、英ICEフューチャーズ、ドバイ金融商品取引所等で取引され、スポット市場や先物市場の新しい価格の決定方式と取引形態を生んだ。しかし、図1にあるように、中東が石油資源の62%を有することから、OPECが石油価格に及ぼす影響は大きい。
2.先物価格とスポット価格
 原油価格は、需要と供給のバランスから決まるが、その指標になるのは、主に米国のWTI原油(米West Texas Intermediate)、英国のブレント原油(英国)および中東のドバイ・オマーン原油の価格である。
 スポット価格は契約の度に当事者間で決定される価格である。ターム(期間)契約価格は、仕向地毎に上記の指標価格、その他の複数の因子から算式で導出される(フォミュラ価格方式)。日本の輸入は8割がターム契約価格である。図2は2006—07年の各指標原油のスポット価格の変化である。価格は以下の3.に示すような原因で高下するが、一般に、ガソリン分が多く硫黄が少ない軽質油は高値で取引され、硫黄が多い重質油はやや安い。
3.原油価格変動の原因
 石油は以下のような多くの原因で価格が変動する。
(1)開発途上国の経済開発:第2次石油危機以降は、アジア、アフリカ等の開発途上国の経済が目覚しい躍進を遂げた。経済の発達に石油等の燃料資源は不可欠である。
(2)地政学的リスク:大きな石油資源がある中東やアフリカ新興国には、宗教対立、部族紛争等による武力衝突や政治的緊張が生じることが多い。
(3)中国の経済的台頭:1993年に石油輸出国から輸入国になり、2003年には日本を追い越して世界第二の石油消費国になった。
(4)資源ナショナリズム:産油国は国際石油企業などに課税を強化、さらに企業を排除して増産投資が低下している。産油国の生産効率の低下は石油の高騰に繋がっている。
(5)コスト高による開発投資の低下:石油の高騰は新油田の開発に向かう筈が、投資のリスクを避けて他社の買収が増え、増産に繋がっていない。
(6)イージーオイルの減少:容易に開発できる油田の発見が少なくなっている。
(7)生産余力の低下:産油国の技術投資の遅滞は、供給不安を生み原油価格の高騰になる。
(8)その他:OPEC等の生産調整、投機、大規模な自然災害など
4.原油価格の推移
 図3は1980年代からの米国WTI原油のスポット価格の推移である。原油は経済の基幹物資であり、価格は上述のように様々な原因で高下する。以下に世界情勢と石油需給の変遷等を述べる。
・1980年代にスポットの割合が5%から30%に増加
・1980年、第二次石油危機(イラク・イラン戦争)、先進国の需要減、非OPEC国の増産、以降の価格低下(安定化)
・1985年、サウジアラビアは公式販売価格を止め、市況から価格を逆算するネットバック方式を採用、原油価格の低下
・1988年、イラク・イラン戦争終る。スポットにタームを連動するフォミュラ方式始まる
・1998—99年、アジア通貨危機、日本は緊縮財政、タイと韓国の影響大、石油の需要減
・1990年代、旧ソ連の石油減産
・1990年8月、イラクのクエート侵攻
・1991年1月、第1次湾岸戦争(多国籍軍のイラク攻撃)、12月ソ連崩壊
・2000年、以降は開発途上国の経済は大きく発展
・2001年、9.11米国の同時多発テロ事件
・2003年、第2次湾岸戦争(イラク戦争)、中国の石油消費は日本を越え世界第二位
・2003—04年、中国の驚異的な需要増(15%)、米ハリケーン被害
・2008年6月、サブプライムローン問題後の資金の流入で石油価格の暴騰
・2008年12月、サブプライムローンによる金融危機で石油需要の減少、価格低下
(前回更新:2004年2月)
<図/表>
図1 産油国の資源量
図2 主要原油スポット価格とOPECバスケット価格
図3 ニューヨーク・マーカンタイル取引所、WTIのスポット価格(月平均)

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
エネルギー資源小国・日本 (01-07-04-01)
湾岸危機後のOPECの対応 (01-07-04-07)

<参考文献>
(1)新日本石油、原油価格の動向

(2)資源エネルギー庁、エネルギー白書2008、第1部、第1章、原油価格高騰の要因およびエネルギー需給への影響の分析
(3)
資源エネルギー庁、エネルギー白書2008、第1部、第2章、第2節、一次エネルギーの動向、pp.169−172
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