<本文>
1.海外における石油自主開発の意義
1973年および1979年の2度にわたる
石油危機を経て、産油国の事業参加が強まり、石油開発はきわめて厳しい環境となったが、中東地区、OPEC国を対象の中心とした開発でなく、多地域での石油開発が求められるようになった。また、近年、石油価格の高騰に伴い、採算面から深海、北極海等での開発へと対象が広がり、開発リスクは高まる状況にある。わが国のエネルギー需要に大きなウェイトを占めている石油エネルギーは、99%以上を輸入に依存し、特に中東に依存しているが、この傾向は今後も基本的には変わらない(
表1)。
自主開発の意義については、(1)需給逼迫時においても相対的に供給の高い安定性が期待できること、(2)国際的な石油・天然ガス需給環境の変化の早期把握が可能なこと、(3)産油国との相互依存関係強化に寄与すること、等から政策的意義が高いとされている。一方、産油国・産ガス国から日本に対し、単に石油を輸入するのみならず、石油開発分野への参入が求められている。
2.基本政策と自主開発の位置づけ
わが国の石油の安定供給確保に係わる基本政策は、中期的な観点から、効率的な自主開発の実施、中東産油国との協力関係強化、
石油備蓄の活用等多様な手段を組み合わせつつ、安定的な量および価格両面でリスク低減を図っていくことである。
これまで石油開発事業の中核的母体として1967年に設立された石油公団は、民間企業の石油開発(および後に備蓄に対しても)に資金助成を行い、2002年度までに1兆407億円の出資および1兆1279億円の投融資等を行ってきた。その間、法律改正により、国のリスク負担比率を高める、関税や石油税の引き上げにより探鉱事業のリスク性に対応する、などの助成面での改善を行った。
石油審議会開発部会(現総合資源エネルギー調査会石油分科会開発部会)・基本政策小委員会は、2000年に、自主開発の政策の在り方について、石油・天然ガスの安定供給を図る上で自主開発を効率的に進めるには、(1)中核的企業グループを育成する、(2)その観点から石油公団の保有株を売却する、(3)企業の事業展開の選択肢を拡大する等の観点から生産油田等の資産買収に対する支援を拡充する、(4)天然ガス利用拡大に向けた支援を推進する、ことを報告で取りまとめた。
支援の具体化として、資金面の支援では、当面5年間は中核的企業グループの形成を促進し、その後の5年間で支援の重点化によって資金削減し、支援を絞り込むこととしている。また、石油公団等の保有株式の売却によって企業間の連携・統合を促進することを求めている。石油公団については採算の取れない事業等が多発したことから抜本的改革を行うこととなった。具体的には、2001年12月に閣議決定された「特殊法人等整理合理化計画」において、石油公団の廃止と金属鉱業事業団への統合が決定された。また、国家備蓄についても国の直轄事業として行うことと、国家石油備蓄会社の廃止と民間企業への委託が決まり、2002年7月には法が公布された。集約母体として、独立行政法人・
石油天然ガス・金属鉱物資源機構が2004年2月29日に発足した。
これらの政策を実施するための予算は
表2に示す額である。備蓄費に次いで開発費が多く、近年エネルギー・環境対策費が増えている。
3.海外各地における探鉱、開発プロジェクト
わが国の海外石油開発事業は、1985年のアラビア石油(株)の設立に始まる。2004年8月現在、海外で活躍している石油・天然ガス開発のプロジェクト数は103件ある。海外におけるわが国の石油開発プロジェクトのうち、生産と探鉱活動を行っている主要な国名は以下のとおりである。(1)インドネシア(2)タイ(3)中国(4)パプアニューギニア(5)オーストラリア(6)英国(7)オマーン(8)サウジ・クウェート(9)アラブ首長国連邦(10)アブダビ・カタール(11)コンゴ(旧ザイール)(12)米国(13)ノルウェー。
これら各国でのプロジェクトからの自主開発原油輸入量は、1998年度まで徐々に増加し、約39,026千キロリットル、わが国の原油総輸入量の15.3%に達した。しかし以後その量と割合は、価格変動の影響や脱石油政策により減少している(
表3)。これらを地域ごとの自主開発原油輸入量で見ると、
表4の推移となっている。中東への依存度が高いことはあまり変わらない。
<図/表>
<関連タイトル>
日本の石油開発プロジェクト (01-03-02-03)
日本の石油備蓄の現状と課題 (01-03-02-04)
<参考文献>
(1)資源エネルギー年鑑編集委員会(編):2005/2006 資源エネルギー年鑑、通産資料出版会(2005年4月)、p.331−361
(2)(株)石油通信社:平成17年 石油資料(2005年9月)、p.100、p.286−287