<大項目> 海外情勢
<中項目> アフリカ各国
<小項目> 南アフリカ
<タイトル>
南アフリカの国情およびエネルギー事情、電力事情 (14-09-01-02)

<概要>
 南アフリカ共和国は、北東部のドラケンスバーグ山脈を中心に金、ダイヤモンド、プラチナ、ウラン、鉄鉱石、石炭、銅、クロム、マンガン、石綿を産出する世界有数の鉱物資源国である。また、豊富に産出される安価な石炭を利用したアフリカ大陸最大の工業国で、アフリカ大陸唯一の原子力発電所を運転している。近年、海外資本の流入や活発な国内消費を背景に電力需要が増加し、2007年以降電力の不足が深刻化している。
 2010年10月、長期的、総合的、かつ統合的な電源開発計画として「電力統合資源20ヵ年計画(IRP2010)」を発表した。環境保護に優れたエネルギー構造への転換を目指し、地球温暖化防止への取り組みの観点から、再生可能エネルギー(太陽熱、太陽光、風力)の開発及び原子力発電の推進と、石炭火力発電設備の低炭素化が盛り込まれている。
<更新年月>
2012年11月   

<本文>
1.国情
 アフリカ大陸の最南端に位置し、ナミビア、ボツワナ、ジンバブエ、モザンビーク、スワジランドと国境を接し、レソトを四方から囲む共和制国家である。南西部は南大西洋に、南部から東部にかけてはインド洋に面する。人口約4,999万人(2010年:世銀)、面積122万km2(日本の約3.2倍)の領土を有している。国土全体が平坦な高地で、北西部はナミブ砂漠の延長部、東部にはドラケンスバーグ山脈が連なる。首都機能をプレトリア(行政府)、ケープタウン(立法府)、ブルームフォンテーン(司法府)に分散させている。
 南アフリカ共和国(以降、南アフリカ)は、1948年に人種差別を法制化し、以後「集団地域法」「強制移住法」「隔離施設留保法」「人種登録法」などアパルトヘイト政策を強力に推進してきた。しかし、1980年代後半になると国際社会からの非難や経済制裁、反アパルトヘイト運動の激化を受け、撤廃に向けての改革が進展し、1991年に関連法が全廃された。1994年全人種の参加による初の総選挙が行われ、アパルトヘイト撤廃を推進したアフリカ民族会議のマンデラ議長が大統領に就任し、アパルトヘイト政策は撤廃されている。
 南アフリカは19世紀後半にダイヤモンド、金が発見されて以降、鉱業主導で成長した。これによって蓄積された資本を原資として製造業及び金融業が発展するなど、アフリカ経済を牽引してきた。金鉱山開発によって成立したヨハネスブルグは、現在でも周辺地域で多くの金鉱山が操業しており、商業及び金融でアフリカではカイロに次ぐ第2位の都市である。近年では鉱業の比率が減少を続けている一方、金融・保険の割合が拡大し、先進国同様、第三次産業の割合が高くなっている。貿易構造は、鉱物資源輸出への依存が高く、輸入は先進国からの機械類の比率が高い。
 2.エネルギー事情
 北東部のドラケンスバーグ山脈を中心に金、ダイヤモンド、プラチナ、ウラン、鉄鉱石、石炭、銅、クロム、マンガン、石綿を産出する世界有数の鉱物資源国である(図1参照)。2009年における国内エネルギー生産量は1億6,064万石油換算トン(toe)に対して一次エネルギー供給量は1億4,404万toe、エネルギー需給率は112%で、1970年代後半から100%をこえて上昇傾向にあったが、2000年に133%とピークを迎えた後減少傾向にある。
 一次エネルギー供給量は2000年から2007年の7年間におけて平均年率3%で増大した。1970年代以降の石炭は高い自給率を示し、2011年には石炭が73.5%を占めている。最終エネルギー消費量は2006年〜2009年にかけて平均年率4%で増大し、2009年の最終エネルギー消費量は、産業(32%)、輸送(25%)、家庭(25%)の3部門が全体の約82%を占め、産業部門の消費量の減少が目立つ。産業別には鉄鋼、鉱業が全体の50%、ついで化学、非鉄、窯業と、エネルギー多消費型の産業が占める。表1にエネルギー需給バランスを示す。
2.1 石炭資源
 石炭生産は北東部のムプマランガ州(Mpumalanga)を中心にWitbank Coalfield(ウィットバンク炭田)やHighveld Coalfield(ハイヴェルド炭田)で無煙炭及び瀝青炭を主に算出する。南アフリカの石炭可採埋蔵量は301.56億トンで、世界の可採埋蔵量8,609億トン(無煙炭・瀝青炭は4,047億トン)の3.5%を占める世界第9位である。無煙炭・瀝青炭では7.4%の世界第6位の石炭資源保有国である。
 2011年の生産量は2億5,509万トンで世界の生産量の3.6%を占め、中国、米国、オーストラリア、インド、インドネシア、ロシアについで世界第7位である。Anglo Coal South Africa(金・白金)、Sasol(石油・天然ガス)、BHP-Billiton(マンガン)、Kumba Resoruces(鉄鉱石)、Eyesizwe(石炭)、Xstrata(銅)の6社が石炭生産のおよそ77%を占めている。Anglo Coal South Africa社はAnglo American社(世界最大級の資源企業)の完全子会社で、同国の電力公社Eskomへ石炭を供給している。
2.2 ウラン資源
 アフリカ大陸の中でナミビア、ニジェールに次ぐウラン生産国で、2011年の年間ウラン生産量は582トン。資源の大部分は、ハウテン州のウィットウォーターズランド地域(Witwatersrand、ヨハネスブルグ周辺の盆地地帯)の石英中礫礫岩型金・ウラン鉱床及び火成岩型鉱床や砂岩型鉱床の一部が寄与している。現在、生産を行っている鉱山は3ヶ所でウィットウォーターズランド鉱床区の3施設、バールリバー鉱山とドミニオン鉱山、エズルウィニ鉱山が金の副産物として生産している(図1参照)。火成岩型鉱床であるブッシュフェルト鉱床区のパラボラ鉱山(Palabora)では銅の副産物として生産していた(2002年閉鎖)。OECD/NEA,IAEAの「Uranium2011」によると、コスト区分US$260/kgU 以下のウラン資源埋蔵量(確認資源量+予測資源量)は372,100トンUで世界第8位、未発見資源のうち予測資源量は110,300トンUで世界第6位、期待資源量は1,112,900トンUで世界第3位である(表2参照)。
(1)バールリバー鉱山(Vaal River)
 Klarksdorp金鉱床の一角を占める。南アのアングロ・ゴールド社(AngloGold Ashanti)が所有し、販売は英国籍のNufcor International社(AngloGoldとFirstRandが株主)が行う。ウランの平均品位は0.037%U、ウラン資源量は約69,000tUと推定される。
(2)ドミニオン鉱山(Dominion RiverまたはDominion Reef)
 カナダのSXR Uranium One社(Uranium One)が100%所有する。もともとAnglo American社が1880年代から金の生産を行っていたが、金の採掘終了後にUranium One社が取得し、2007年3月からウランを主とする生産を再開した。2011年までに生産規模を1,460tU/年に拡大する計画である。ウランの平均品位は0.08%Uで、ウラン資源量は約82,400tUと推定される。
(3)エズルウィニ鉱山(Ezulwini)
 カナダのFirst Uranium社は、ウィットウォーターズランド鉱床区のウエストランド金鉱床に位置し、2009年から生産活動を開始している。ウランの平均品位は0.074%Uで、ウラン資源量は約81,000tUと推定される。
(4)Buffelsfontein鉱サイ回収ウラン
 First Uranium社によるバールリバー鉱山の東側に隣接するBuffelsfonteinサイト(金鉱サイ堆積場)からの回収ウランを生産している。
2.電力事情
 南アフリカでは1991年の人種差別的立法であるアパルトヘイト法撤廃の議決を受けて以降、それまで批判的だった欧米諸国からの経済制裁が解除され、政府は民主化政策を推進、経済分野でも電力市場の自由化や新規参入による発電部門の競争、コスト削減を図った。しかし、国営企業である南アフリカ電力公社エスコム(ESCOM)に新規発電所の建設を認めなかったため、経済成長に伴った電力需要に発電・送電能力が追いつかず、2007年ごろから電力不足が深刻化している。2008年には政府が電力危機の非常事態を宣言するなど、電気料金の値上げや鉱山活動の操業停止等、経済への悪影響が懸念される状況である。これを解消するためESCOMは近隣諸国からの送電や発電所の増設を計画しているが、電力不足は2015年ごろまでは解消されない見込みである。
 2011年の総電力供給量は2,393億kWhで、電源別内訳は石炭火力発電が92%と圧倒的なシェアを占める。以下、原子力が5%、水力が2%となっている(表3参照)。発電電力量1kWhあたりのCO2排出量は912gと非常に高く、発電による総排出量は237Mtに上る。なお、石炭の産出地域が北東部のムプマランガ州を中心に偏在しており、石炭の輸送コスト等経済的な観点から石炭火力発電所は全て北東部に位置する(図2参照)。
 2010年10月にエネルギー省が発表した長期的、総合的、かつ統合的な国家電力資源計画「電力統合資源20ヵ年計画(IRP2010)」(2011年3月内閣承認済、IRP=Integrated Resource Plan)では、2030年までに56.539GWの発電設備を増設し、全体で89.532GWまで増加させることを目標としている。また、発電電力量の9割を占める石炭への依存から脱却し、電源の多角化を図り、2030年までに石炭火力の割合を65%にまで下げ、代替として再生可能エネルギーと原子力の割合をそれぞれ9%と20%へ引き上げることを目指すとしている。再生可能エネルギー分野では太陽光発電、風力発電の技術の導入、原子力分野では6基(960万kW)の新規原子力発電所の建設を検討している。また、電力供給量は2010年の260TWhから454TWhへ約1.7倍に増加するが、低炭素発電技術の原子力発電と再生可能エネルギーの導入により、温室効果ガス排出量は2010年の排出量の約1.1倍に抑えることができると予想している。発電電力量1kWh当たりのCO2排出量は2010年の912gから2030年には約66%まで低減され、600gとなる予定である。
<図/表>
表1 南アフリカにおけるエネルギー需給バランス(2009年)
表2 ウラン資源量と生産量
表3 南アフリカの電源供給計画
図1 南アフリカの主要鉱物資源分布とウラン生産センター
図2 南アフリカの電力網、主要発電所マップ

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<関連タイトル>
南アフリカの原子力開発と原子力施設 (14-09-01-01)

<参考文献>
(1)(社)海外電力調査会:海外諸国の電気事業、第2編、2010年(2010年3月)、南アフリカ共和国
(2)(一社)日本原子力産業協会:南アフリカ共和国、http://www.jaif.or.jp/ja/asia/southafrica/southafrica_data.pdf
(3)OECD・NEA/IAEA:Uranium 2011 Resources, Production and Demand (2012)、
、南アフリカ共和国
(4)世界原子力協会(WNA):Uranium production figures, 2001-2011、
http://www.world-nuclear.org/info/uprod.html
(5)外務省:南アフリカ共和国、http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/s_africa/data.html
(6)(財)石炭エネルギーセンター アジア太平洋コールフローセンター 技術術・情報委員会:ワールド・コール・レポート Vol.4(2012年3月)
(7)(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構:資源開発環境調査 南アフリカ共和国、(2004)、http://mric.jogmec.go.jp/public/report/2005-10/s_africa_05.pdf
(8)ESKOM電力公社:Map of Eskom power stations、

(9)南アフリカエネルギー省:IRP 2010:Electricity:Promulgated、
http://www.doe-irp.co.za/content/IRP2010_promulgated.pdf
(10)国際エネルギー機関(IEA):South Africa、2009 Energy Balance for South Africa及び
Total primary energy supply South Africa
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