<大項目> 海外情勢
<中項目> アジア各国
<小項目> 台湾
<タイトル>
台湾の原子力研究開発体制、原子力安全規制体制および原子力産業 (14-02-04-03)

<概要>
 行政院に設置された原子能委員会が、台湾の原子力の開発推進と規制に当たっている。原子能委員会には放射線安全委員会、原子力規制委員会、原子力施設安全諮問委員会、環境評価委員会等の諮問委員会があって安全審査を行う。また下部組織として核能研究所、台湾放射線モニタリングセンター、放射性廃棄物管理所がある。核能研究所は総合的な原子力の研究機関で、基礎研究のほか、原子炉技術、核燃料、廃棄物管理、資源、アイソトープの製造と利用、放射線安全の研究を行っている。放射線モニタリングセンターは国内の各所で自然放射能の測定を行っている。放射性廃棄物管理所は低レベル廃棄物を蘭嶼島に貯蔵するほか、使用済燃料中間貯蔵施設の国産化準備を進めている。
<更新年月>
2011年10月   

<本文>
 台湾は商業用原子力発電所の運転を1978年に開始して以来、第1、第2、第3発電所サイトで1985年にかけて相次いで運転を開始した。現在、6基・電気出力5,144MWの原子炉が稼動中であり、さらに第4発電所で2基が建設中である(表1及び図1参照)。
1.原子力開発及び原子力安全規制機関
 台湾の原子力政策立案、研究開発、利用推進及び規制にいたる全般を行政院(内閣)に設置された台湾原子能委員会(原子力委員会)が所管している。そのほか、原子力発電所の建設、運転管理については国営企業である台湾電力公司が実施している。なお、民間の原子力関係機関では、核能学会が台湾の原子力学会として活動している。
(1)原子能委員会(Atomic Energy Council、略称「AEC」)
 1955年に設置された特設委員会で、委員長は行政委員長(首相)から任命される国務大臣である。AECの事務局には「計画部」、「原子力規制部」、「放射線防護部」、「原子力技術部」の4部門と「原子力科学技術研究開発成果審議委員会」、「放射性物質安全諮問委員会」、「原子力法規制委員会」、「第4原子力発電所安全監督委員会」などの8つの内部委員会と、「原子力事故緊急対応基金管理会」及び核能研究所、放射線モニタリングセンター、放射性廃棄物管理所の3付属機関がある(図2参照)。
 計画部は、保障措置、原子力立法、国内調査及び関連情報と刊行物の収集と配布、原子力国際協力、要員訓練と国際事務を担当し、原子力規制部は研究炉及び原子力発電所の許認可及び規制に当たる。放射線防護部は医療用及び工業分野に利用される放射線の監視及び規制を行い、原子力技術部は原子力発電の技術の一部国産化をめざしている。
1)核能研究所(Institute of Nuclear Energy Research、略称「INER」)
 台湾における原子力研究開発の唯一の国立機関として、行政院AECに所属する核能研究所がある。1968年に設立され、台北の南西43kmの桃園県に位置する。原子力基礎研究のほか、原子力発電の安全確保に関する研究、放射性廃棄物の処理処分に関する研究、放射線の医学的、生物的影響の研究、新エネルギーの実用化研究、地球温暖化防止のための新規電源開発の研究、アイソトープの製造と利用、技術及びエンジニアリングなどのサービスを行っている。委託研究のほか、低レベル放射性廃棄物の新減容技術(ホウ酸液減容固化方式)の開発など産業応用技術の開発にも力を入れている。
2)放射線モニタリングセンター(Radiation Monitoring Center、略称「RMC」)
 第一原子力発電所(金山)の建設工事開始直後の1974年にAECに「放射線測定局」として、環境中の自然放射線の測定、原子力発電所の運転開始後における環境放射線の測定、放射性廃棄物の放射線量の把握などを目的にした業務を開始した。1996年以降、放射線モニタリングセンターとして高雄に設立され、現在では24時間体制で環境のモニタリングを行っている。自然放射線や、海水や土壌、果物や食品などサンプル採取を含むモニタリングを行う。また、台湾南部にある第3原子力発電所(馬按山)や低レベル廃棄物を貯蔵している蘭嶼島での環境放射線モニタリングも行っている。(注:「蘭嶼」は日本語の読みでは「らんしょ」であるが台湾では「らんゆう」と呼ぶ。)
3)放射性廃棄物管理所(Radwaste Administration、略称「RWA」)
 放射性廃棄物管理所は、放射性物質の処理、貯蔵、処分施設の建設、運転、廃止措置の審査・許可、放射性物質の輸出入、処理、貯蔵、輸送、処分などに関連した安全管理及び検査を行う。1981年1月に設立され、1982年5月から蘭嶼島の放射性廃棄物貯蔵所に低レベル廃物の貯蔵を開始したが、1990年に台湾電力公司に移管した。
(2)台湾電力公司(Taiwan Power Company、略称「TPC」)
 行政院経済部の管轄の下、原子力発電所の建設、運転管理、放射性廃棄物の管理を行う。
(3)国立清華大学
 原子力の研究開発機関として、唯一の研究炉THOR(Tsing Hua Open-Pool Reactor、出力2MW、1962年〜)を運転する。そのほか、1993年に廃止措置を完了したTHAR(Tsing Hua Argonne Reactor)や2003年に廃止措置が完了した教育・研究用のTHMER(Tsing Hua Mobile Educational Reactor)を持つ。
2.原子力発電所の許認可システム
(1)プロジェクトの承認手続き(図3参照)
 原子力発電の建設を行う際にはまず、プロジェクトの承認手続きを採る必要がある。承認を得るため、台湾電力は経済部に、フィジビリティ報告(FR)、立地選定報告(SSR)、及び環境報告(ER)の3種類の報告を提出する。経済部はこれらの報告を投資審査のために経済計画・開発委員会に送るとともに、SSRとERを立地適性審査と予備環境審査のためにAECに送付する。承認が得られた場合は行政院(内閣)へ送付される。
(2)許認可プロセス(図4参照)
 台湾の原子力発電所の建設の許認可システムは逐時的なプロセスで、建設を開始する前に申請者は建設許可(CP)をAECから受ける必要がある。次に燃料を装荷する前に、燃料装荷・運転開始許可が必要である。最後に発電所が技術的に許容できると宣言された後、運転許可(OL)が交付される。また、建設許可の申請には、事前に予備安全解析報告書(PSAR)と予備環境報告(PER)を、運転許可の申請者は、最終安全解析報告書(FSAR)と最終環境報告書(FER)をAECに提出しなければならない。なお、安全解析報告書と環境報告書の書式と内容は米国原子力規制委員会のRegulatory Guide 1.7及び4.2が採用されている。安全審査と環境影響審査はそれぞれの内部委員会により個々に審査され、安全評価報告書と環境影響声明書がAEC原子力規制部に報告されてAEC委員長の許認が与えられる。なお、運転許可証は10年間のみ有効で、申請者は改訂更新したFSARとさらに10年運転可能であることを示す評価報告書を提出して許可の更新を行わなければならない。
3.核燃料サイクルと原子力産業
 台湾の原子力発電所はアメリカのGE社及びWH社とターンキー方式で建設してきた。第4発電所の建設に関しても当初GEと1996年及び1999年に主契約を結んだが、2000年の「建設中止命令」により契約は破棄された。2001年に建設続行が決定したことから、2003年6月に1号機の原子炉圧力容器を日立製作所が、2004年7月には2号機の原子炉圧力容器を東芝が納入。タービン発電機は三菱重工業、土木工事は清水建設、廃棄物処理場は日立制作所が受注した。従って、設備は燃料も含めてすべて輸入であり、部品や核燃料サイクルについて国産化の動きはほとんど見られない。唯一の例外は廃棄物処理である。
(1)台湾の放射性物質管理
 台湾の放射性物質は低レベルと高レベルの2種類に分類される。放射性物質管理は従来1968年に公布された原子力法をもとに、AECが規制指針(ガイドライン)や基準を設けていたが、2002年12月、放射線源や核燃料、放射性廃棄物の規制を目的とした放射性物質の管理に関する法律が成立している。
(2)低レベル放射性廃棄物の管理
 発電所由来の低レベル廃棄物は台湾電力公司が、医療、工業、研究等の廃棄物は核能研究所が責任を持つ。また、廃棄物処分地の用地確保が困難なことから、放射性物質管理法第29条で、廃棄物の発生者が廃棄物の生産量及びその体積を減少させ、AECへ報告することが義務付けられた。AECは1989年より放射性廃棄物の減量施策(除染、焼却、圧縮等)を推進した結果、原子力発電所で発生する廃棄物の量は、1983年の最高12,258ドラムより2010年の234ドラムに減少し、総計で98%の減量となっている(図5参照)。
 低レベル放射性廃棄物の中間貯蔵施設は蘭嶼島にあり、1982年から廃棄物の所外中間貯蔵が行われている。また、最終処分場に関しては、サイト選定が1992年から開始され、2006年3月には「低レベル放射性廃棄物最終処分場設置条例」の制定により、サイト選定プロセスとスケジュールが定められた。2010年9月に行政院経済部が台東県達仁郷と金門県烏キュウ郷の2箇所を潜在的予定地と公表したが、処分候補地としての決定は住民投票で行われる。
(3)高レベル放射性廃棄物(使用済燃料)の管理
 1988年9月に行政院が策定した「放射性廃棄物管理方針」及び使用済核燃料管理規定に基づき、使用済燃料は「短期的なサイト内の使用済燃料プール保存」、「中期的な設備内での乾式貯蔵」または「国際原子力保護防止協定を順守した上での海外での再処理の可能性」、「長期的な最終処分の推進」が提案されている。現在、台湾電力は金山及び国聖発電所の乾式貯蔵施設を計画または建設中である。金山乾式貯蔵施設は、核能研究所が米国のNAC社に技術を導入してきたINER-HPSコンクリート貯蔵保護箱を採用するもので、2010年10月から建設工事を開始、2013年2月からの稼動を予定している。また、国聖発電所に関してはNAC社のMagnastorコンクリート保護箱を採用する計画で、2011年にAECに建設許可を申請し、2014年11月に稼働許可を申請する予定である。
 原子力発電所から発生した使用済燃料の最終処分計画に関しては、2002年12月に公布施行した「放射性物料管理法」及びその施行細則に従い、台湾電力は「使用済核燃料最終処分計画書」を作成、2007年7月にAECの了承を得ている。処分計画は「潜在的な処分場の地盤母岩特性調査及び評価段階」、「処分場評価選定段階」、「処分場詳細調査及び試験段階」、「処分場設計及び安全分析評価段階」及び「処分場建設段階」等5段階からなり、2055年から処分場の操業を開始する計画である(図6参照)。
(前回更新:2004年2月)
<図/表>
表1 台湾の原子力発電所一覧
図1 台湾の原子力関係施設所在地図
図2 原子能委員会組織図
図3 台湾の原子力発電プロジェクト承認のプロセス
図4 台湾原子力発電所の許認可プロセス
図5 原子力発電所サイト内に貯蔵されている低レベル放射性廃棄物の推移
図6 台湾の使用済燃料の最終処分に係る全体計画

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<関連タイトル>
台湾のエネルギー資源、エネルギー需給、エネルギー政策 (14-02-04-01)
台湾の電力事情、発電計画、原子力発電 (14-02-04-02)
台湾のPA動向 (14-02-04-04)
台湾の原子力国際協力、保障措置 (14-02-04-05)

<参考文献>
(1)日本原子力産業会議(編):アジア諸国 原子力情報ハンドブック 1992
(2)藤井晴雄・森島淳好(編):詳細原子力プラントデータブック、(株)日本原子力情報センター(1994年)、p.116、763
(3)(社)日本原子力産業協会:原子力年鑑2011年版、p.130-139(2010年10月)
(4)(社)海外電力調査会:海外諸国の電気事業 第1編 2008年、p.733-p.767(2008年10月)
(5)(社)日本原子力産業協会:世界の原子力発電開発の動向 2011年版(2011年5月)
(6)台湾電力公司ホームページ:
(7)台湾原子能委員会:http://www.aec.gov.tw/www/english/intro/images/aec-or.gif
(8)台湾原子能委員会:核能電廠低放射性廢棄物管制(2010年2月)、
http://www.aec.gov.tw/www/control/waste/files/index_02_1.pdf
(9)台湾原子能委員会:用過核子燃料最終處置計畫書2010年修訂版(2010年12月)、
http://www.aec.gov.tw/www/control/waste/files/index_06_a10.pdf
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