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<概要>
 本訴訟は、北海道電力(株)泊発電所1、2号炉(昭和59年:1984年6月14日原子炉設置許可、昭和59年:1984年8月着工、1号炉は平成元年:1989年6月に、2号炉は平成3年:1991年4月に、それそれ運転を開始)の建設・操業差止を求めている民事訴訟(昭和63年:1988年8月提訴)である。
 平成11年(1999年)2月22日に札幌地方裁判所は原告側の請求を棄却し、原告側の控訴がなく、被告側(北海道電力)の勝訴が確定した。
<更新年月>
2000年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 本訴訟は、北海道電力(株)の泊発電所1号炉、2号炉(PWR 型57.9万kW×2基、いずれも、昭和59年:1984年6月14日に原子炉設置許可を得て昭和59年(1984年)8月に着工、1号炉は平成元年(1989年)6月に運転開始、2号炉は平成3年(1991年)4月に運転開始)の建設・操業差止(運転差止)を求めて、原告側の周辺住民ら989人が北海道電力(株)を被告として、昭和63年(1988年)8月31日に札幌地方裁判所に提訴した民事訴訟である。この訴訟は、原子力発電の運転差止に関する民事訴訟として、女川1号炉訴訟(昭和56年:1981年12月提訴)、もんじゅ訴訟(昭和50年:1985年9月提訴)に次ぐわが国で3番目のものである。
 平成11年(1999年)2月22日の札幌地方裁判所での判決では、原告側の泊発電所1、2号炉に関する原告側の運転差止請求を「原告の生命や身体に侵害を及ぼす具体的な危険は認められない」として、原告側の訴えを棄却した。
 裁判では、放射能により人格権と環境権が侵害される訴えが適法かどうか、泊原子力発電所の安全性の二つが最大の争点になった。判決では、人格権に基づく訴えを適法と認めたが、環境権については「生命侵害の危険を前提としており、人格権と基本的に同一のもの」として判断を示さなかった。
 日常運転で放出される放射線については「身体的傷害や遺伝的傷害が発生する確率は無視できる程度に小さい」と指摘し、重大事故の可能性についても「機器の故障や運転員の誤操作があり得ることを前提に、安全確保策はとられている」としたうえで、「極めて高い確率で防止されている」との判断を示した。
 結論の後で裁判長は「人類の未来へ目を向けたとき、原子力発電所がどのような意義を持つのか、真剣に議論されるべき時期にさしかかっている」と指摘し、さらに、原子力発電所(建設)の推進と中止という二つの選択肢を挙げて「自分たちの子供に何を残すのか、多方面から議論を尽くし、英知を集めて賢明な選択をしなければならない」と述べた。
 平成11年(1999年)2月22日の札幌地方裁判所の請求棄却に対し原告側の控訴がなく、被告側(北海道電力)の勝訴が確定した。
<関連タイトル>
日本の原子力発電所の分布地図(2001年) (02-05-01-05)
発電用原子炉の安全規制の概要(原子力規制委員会発足まで) (11-02-01-01)

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