<解説記事ダウンロード>PDFダウンロード

<概要>
 貯蔵施設は、放射性同位元素を安全に貯蔵するためのもので、施設の位置、構造及び設備の技術上の基準が、法令に定められている。貯蔵施設には、貯蔵室もしくは貯蔵箱を設ける必要があり、一般的に多量の放射性同位元素を使用する施設では貯蔵室を、少量の放射性同位元素を使用する施設では貯蔵箱が設置されている。
<更新年月>
2004年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
(1)貯蔵施設は、放射性同位元素を使用する施設において、放射線による障害を防止するため及び放射性同位元素を安全に貯蔵するために設けられ、その位置、構造及び設備の技術上の基準が「放射性同位元素による放射線障害の防止に関する法律」に定められている。
(2)貯蔵施設について、法令で定められている技術上の基準は次の通りである。
 1) 貯蔵施設は、地崩れ及び浸水のおそれの少ない場所に設けること。
 2) 貯蔵施設には、貯蔵室又は貯蔵箱を設けること。
 3) 貯蔵施設には、遮へいのための壁、その他の遮へい物を設けること。
 4) 貯蔵施設には、放射性同位元素を入れる容器を備えること。
 5) 貯蔵施設のとびら、ふた等外部に通ずる部分には、鍵その他の閉鎖のための設備または器具を設けること。
 6) 貯蔵室、貯蔵箱または容器には標識を付すること。
 7) 貯蔵施設には、放射線障害の防止に必要な注意事項を掲示すること。
(3)貯蔵施設には、遮へいのための壁、遮へい物を設けるなどして、貯蔵施設等に立ち入る者及び貯蔵施設周辺に居住する者等に対して法令上定められた線量限度を超えないようにしなければならない。
(4)貯蔵室は、その主要構造部を鉄筋コンクリートなどの耐火構造とし、その開口部には建築基準法施行令に規定される甲種防火戸を設けなければならない。その他、貯蔵室には、貯蔵する放射性同位元素の種類、大きさなどに応じて、耐火構造で、必要な遮へい能力をもたせ貯蔵棚、貯蔵孔などが設けられることもある。図1に貯蔵室の例を示す。
(5)貯蔵箱は、少量の放射性同位元素を入れた容器を格納する箱で、耐火性の構造で、かつ十分な遮へい性能をもち施錠可能な構造でなければならない。
(6)放射性同位元素を入れる容器としては、空気を汚染するおそれのある場合は気密な構造とし液体状のものを入れる場合は、こぼれにくく、かつ浸透しにくい材料を用いる必要がある。液体状または固体状のものを入れる容器が亀裂、破損等のおそれのあるときは、汚染の広がりを防止するための受皿、吸収材等を設ける必要がある。
(7)放射能標識については、日本工業規格にその大きさ、記入する文字等が定められており、貯蔵施設は出入り口、貯蔵箱はその表面、容器は容器表面に掲示することとなっている。図2に貯蔵室等に掲示する放射能標識の例を示す。
[用語解説]
甲種防火戸とは、次の条件を充たすものである。
1)骨組みを鉄製とし、両面に厚さがそれぞれ0.5mm以上の鉄板を張ったもの
2)鉄製で鉄板の厚さが1.5mm以上のもの
3)鉄骨コンクリート製又は鉄筋コンクリート製で厚さが3.5cm以上のもの
4)土蔵造の戸で厚さが15cm以上のもの
5)国土交通大臣が指定するもの
<図/表>
図1 貯蔵室の例
図1  貯蔵室の例
図2 貯蔵室等の放射能標識の例
図2  貯蔵室等の放射能標識の例

<関連タイトル>
線量および防護に用いられる諸量 (09-04-02-01)
放射線の遮へい (08-01-02-06)
標準線源 (09-04-03-02)

<参考文献>
(1) 飯田博美(編):放射線用語辞典、(株)通商産業研究社(昭和622年)
(2) 日本アイソトープ協会(編):アイソトープ便覧、日本アイソトープ協会(昭和59年)
(3) 日本原子力産業会議(編):放射線取扱技術、日本原子力産業会議(昭和61年)
(4) 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律
(5) 建築基準法施行令
(6) 工業標準化法(日本工業規格:放射能)
(7) 日本アイソトープ協会(編):放射線管理の実際、改訂2版、丸善(1994年)
JAEA JAEAトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ