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<概要>
 米国では、原子力発電所の永久停止に備え、原子力規制委員会(NRC)により、その規制が及ぶ部分(解体、解体廃棄物処理処分等)に関して廃止措置基金制度が定められている。商業用原子力発電所は、建設後の運転認可手続き段階でNRCにより審査される。この認可申請に添付される資金調達計画書は、原子炉型及び原子炉出力に応じて最低限度額以上の資金が確保できる計画でなければならない。また、廃止措置段階では、廃止措置方式や費用等についてNRCに提出することが義務付けられ、審査が行われる。このため、NRCは、廃止措置費用の妥当性を評価することを目的に、その基金を試算している。
<更新年月>
2014年09月   

<本文>
 廃止措置基金の過程は発電所の運転者が発電を停止した後に開始されるが、計画は運転を開始した時点から始まる。すべての原子力施設は原子力規制委員会(NRC)の廃止措置基金規制の対象となる。この規制は1988年に制定され、その後、適宜更新されてきた法令に基づいて実施される。
 NRCは、原子力発電所の廃止措置基金(NRC規制部分:放射性物質の廃止措置に係る領域でNRCの規制が及ぶ範囲)として、3400MWt(1100MWe)のPWR及びBWR発電所に対して各々、最低でも$105M及び$135M(1986年ドル価格)が必要であると評価している。また、1998年の低レベル廃棄物処分費用の上昇等を考慮したシナリオに基づいて、PWRの場合、西部地区で$188M、北部地区で$490M、BWRの場合、中央部地区で$360Mと評価している。
 これに対して、現在の廃止措置費用は、NRC規制部分(解体、解体廃棄物処理処分等)に、使用済燃料管理及びサイト修復費用を加えると、$300Mから$500M(330〜550億円:110円/ドルで換算)の範囲になる(ATOMICAデータ「米国の原子力発電所の廃止措置費用(05-02-01-13)」参照)。特に、処分費用は、クラスAの廃棄物に対して、ハンフォード及びクライブ処分場が約$80/ft3 に対し、バーンウェル処分場では、1996年時点で$320/ft3(うち$235/ft3 はサウスカロライナ州税)であるが、近年では約$500/ft3 と高騰している。2012年12月時点での全発電所の廃止措置基金は457億ドル(2010年の404億ドルから13.1%の増加)である。NRCは2年ごとの廃止措置基金現状報告(DFS)において、コスト計算の結果を提示している。
 ここでは、NRC廃止措置基金に関連する廃止措置活動・手続・積立基金、資金の確保、基金の使用制限等を紹介する。
1.廃止措置活動・手続・積立基金
 原子力発電所の廃止措置とは、原子炉施設を解体撤去し、認可されたサイトの残存放射能をNRCが認可の終了と認めるレベルまで下げることを意味する。NRCは、1988年に、技術及び財務基準に加えて、計画立案が必要なこと、資金調達方法を含む一般要件と環境要件(53FR24018)を定めた。その後、廃止措置に関する規制の改正(61FR39278)が1996年7月に行われた。これによって、10CFR Part2「許認可手続きと命令発給の実施規則」、Part50「生産及び利用施設の許認可」及びPart51「許認可における環境保護規則と関連規則機能」が改正された。
 原子力発電所の廃止措置活動(10CFR50.2で定義される)は、3段階に分けられる。即ち(1)初期活動、(2)主要な活動及び安全貯蔵、(3)認可終了のための手続きである。原子力発電所の廃止措置に係わる手続き及び廃止措置積立基金の使用計画を図1に示す。10CFR50.82(a)(1)に従って、恒久運転停止前、または停止後2年以内に、設置者は、停止後廃止措置活動報告書(PSDAR)を提出しなければならない。また、認可終了の計画書(LTP)は、PSDAR記載の認可終了予定日の2年前に提出しなければならない。
 なお、関連規則には、文書保管、報告(10CFR50.36)、積立基金の使用計画(10CFR50.75)、最終安全解析書(10CFR50.59)、サイト解放基準(10CFR20 Subpart E)、使用済燃料の独立貯蔵許認可要件(10CFR Part72)などがある。2013年10月のNRC報告によれば、2012年12月時点で、104基の発電炉のうち、100基が廃止措置基金保証に適合している。
2.資金の確保
 廃止措置資金措置は、運転認可手続きにおいて審査される。運転認可申請に添付される資金調達計画書は、原子炉型及び原子炉出力に応じて最低限度額以上の資金が確保できる計画としなければならない(10CFR50.33(k)(1))。
 廃止措置基金方式の決定は、NRCの2つの報告書(廃止措置基金の財政上の安定と利用性(NUREG/CR-3899、1984年)と1986年の内部及び外部基金の分析に関する報告書)に基づいている。その資金確保には、電力会社に対して、1)前払い方式、2)外部減債基金方式、3)保証又は保険方式、の3つの方式が認められている(10CFR50.75(e)(3))。
 1999年時点での会計検査院(GAO)の調査によると、これまで米国では全土で統一された廃止措置資金措置に関する制度はなく、電力会社の50%が減価償却方式、25%が債務方式、16%が減価償却・債務混合方式を採用し、未公開が7%などである。減価償却は、設備の取得価格に廃止措置費用を加えた金額を、減価償却対象金額として、設備の耐用年数期間中に償却する方式である。減債基金方式は、廃止措置費用として積み立てた特定の基金を銀行預金に金銭信託し、その元利合計が廃止措置費用になるように運営する方式である。また、最近の原子力発電所の売却による他社へのライセンス移行の際には、前払い又は前払い・外部減債基金方式が採用されている。
 使用済燃料の輸送及び処理処分については、放射性廃棄物政策法に基づき、電気事業者が米国エネルギー省DOE)に発電1kWh当り1ミル(0.1セント)を拠出する。拠出された基金は、財務省に設置された放射性廃棄物基金に組み込まれ、米国債によって財務省が運用する。処分する施設が確保されていないため、現状ではサイト内の乾式保管施設で当分保管されるが、その費用の確保が不明確でDOEとの争点となっている。
 なお、日本、ドイツ、フランス、イギリスでは、年度毎に定められた引当金により、将来必要とする廃止措置費用を積み立てる方式が採られている。
3.基金の使用制限
 廃止措置基金の使い方は、10CFR50.82(a)(8)で定められている。主な規則は次のとおりである。
 設置者は、運転段階から廃止措置計画書作成のために、10CFR50.75(f)(2)で定めた概算費用の3%まで使用できる(10CFR50.82(a)(8)(ii))。また、NRCがPSDARを受理して90日経過した後、さらに20%追加して使うことができる。
 サイト固有の廃止措置費用評価報告書が、NRCに提出されるまでは、残りの77%の使用は禁止される。この評価報告書は、運転の恒久停止後2年以内に提出されなければならない(10CFR50.82(a)(8)(iii))。その内容は、NRCの規制部分である計画、大型機器の撤去、除染作業、低レベル廃棄物の処分、最終の放射能サーベイ及び廃止措置財務費用等に関するものである。
4.基金の評価
 1986年1月時点で、例えば、(a)熱出力3400MWt(電気出力1100MWe)のPWR及びBWRについて、各々1億500万ドル及び1億3500万ドルの廃止措置のための資金最低限度額を確保するよう計画をたてなければならないと規定されていた(10CFR50.75(c)(1))。これに対し、TLGサービス社などの評価調査結果と比較して、NRCの評価が約30%低いことから、会計検査院(GAO)は1988年にNRCに再調査するよう指摘した。
 また、NRCは、最低限度額は賃金、エネルギー、廃棄物費用等の要因によって以下のように調整される(10CFR50.75(c)(2))としている。
 PWR:3400MWt以上に対して、$105M(1986年ベース)
     1200MWt〜3400MWtに対して、$75M+0.0088P
 BWR:3400MWt以上に対して、$135M(1986年ベース)
     1200MWt〜3400MWtに対して、$104M+0.009P
 ここでPは原子炉出力レベル(MWt)であり、1200MWt以下の場合はP=1200である。
 また、1986年以降の基金(最低限度額)は、1986年の値にインフレーション係数を掛けることで求められる。インフレーション係数は、インフレーション係数=0.65L+0.13E+0.22Bとして求められ、L:労働コスト、材料及びサービスコストの補正係数、E:エネルギーと廃棄物輸送コストの補正係数、B:放射性廃棄物の埋設/処分及び追加コストの補正係数である。
 NRCは、1986年の廃止措置費用を基にして、(1)労働・材料コスト等、(2)エネルギー・廃棄物輸送コスト、(3)放射性廃棄物の埋設/処分コスト等を考慮し、プラント及び処分場位置を変えた代表的シナリオ(4ケース)について1998年の廃止措置費用を公表した(表1)。これによると(1)の労働等の補正係数は約1.5倍、(2)のエネルギー等の補正係数は1に近く、(3)の処分等の補正係数は3倍から16倍に増加し、その結果、1998年の廃止措置費用は、出力3400MWtのPWRの場合、$188M(シナリオ1)から$490M(シナリオ2)の範囲に、また、BWRの場合、$359M(シナリオ4)に増大している。なお、これらの見積りには、乾式貯蔵のための費用及びサイト修復費用は含まれていない。
5.会計検査院の調査・指摘
 米国議会は、会計検査院(GAO)に原子力発電所の廃止措置基金が十分であるか1997年12月に諮問し、GAOは1999年5月に報告書を公表している。この報告書によると、2000年時点で、運転中及び閉鎖炉合計118基のNRC規制部分の廃止措置費用は、GAO基準で約$35,000M(平均$297M /基)に対し、NRC基金では、$29,000M(平均$245M /基)と評価している。この見積りには、使用済燃料の乾式貯蔵のための費用及びサイト修復費用は含まれていない。
 2013年の廃止措置基金現状報告によれば、2012年12月時点で各発電所は、不足額がないか、あるいは不足額を補填している。また、NRCは10CFR50.75(c)(2)に基づく、基金の最少額について、修正の必要はないとしている。
<図/表>
表1 NRC評価の代表的なシナリオにおける廃止措置費用
表1  NRC評価の代表的なシナリオにおける廃止措置費用
図1 米国の廃止措置手続きの時系列
図1  米国の廃止措置手続きの時系列

<関連タイトル>
原子力発電所の廃止措置費用評価 (05-02-01-02)
海外主要国における廃止措置の考え方 (05-02-01-10)
米国の原子力発電所の廃止措置費用 (05-02-01-13)

<参考文献>
(1)日本エネルギー法研究所:廃炉措置及び高レベル放射性廃棄物処分の法制及び問題点、原子力規制班報告書(1995年2月)、p.39-55
(2)通産産業省 資源エネルギー庁:パンフレット 役割を終えたその後は?、原子力発電所の廃止措置について(1998年3月)
(3)Nuclear Regulation:NRC’s Decommissioning Cost Estimates Appear Low,(GAO/RCED-88-184),
(4)Nuclear Regulation:NRC’s Assurances of Decommissioning Funding During Utility Restructuring Could Be Improved,(GAO-02-48)(Dec.2001),http://www.gao.gov/new.items/d0248.pdf
(5)宮坂靖彦:米国の発電用原子炉デコミッショニングの最新動向、デコミッショニング技報 第21号(2000年3月)
(6)Report on Waste Disposal Charges:Changes in Decommissioning Waste Cost Low - Level Waste Burial Facilities,NUREG-1307, Rev. 8(Dec. 1998)
(7)Decommissioning of Nuclear Power Reactors, Regulatory Guide 1.184(July.2000)
(8)Daniel G. Williams:Recent Trends in Adequacy of Nuclear Plant Decommissioning Funding, WM’02,(Feb. 2002)
(9)Decommissioning, GAO report: To ensure funds, better analysis needed, NUCLEAR NEWS, p36,(Jan. 2004)
(10)Decommissioning Nuclear Power Plants, NEI Fact Sheet (Aug. 2014),
http://www.nei.org/Master-Document-Folder/Backgrounders/Fact-Sheets/
(11)NRC Policy Issue, SECY-13-0066, NRC Policy Issue, SECY-13-0105,
http://www.nrc.gov/
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