<大項目> 原子力発電
<中項目> 原子力発電所の事故・故障
<小項目> 海外の原子力発電所の事故・故障・トラブル
<タイトル>
チェルノブイル原子力発電所事故直後における国際的な対応 (02-07-04-10)

<概要>
 チェルノブイル原子力発電所事故は放射性物質が国境を越えてその影響が広範囲に及んだため、事故直後から国際的な対応が活発に行われた。
 まず、近隣諸国では、当初は飲食物制限等の独自の措置を講じていたが、世界保健機構(WHO)で専門家による検討の結果勧告が出されるとそれにしたがった。
 一方、事故直後の東京サミットにおいて国際原子力機関(IAEA)を通じて国際的に対処するという方針が提案されたのを受けて、IAEAにおいて事故評価がおこなわれるとともに今後の対策として「事故の早期通報」と「国際的な援助」に関する条約案が作成された。また、経済協力開発機構(OECD)/原子力機関(NEA)ではOECD諸国の原子力発電所の安全性と諸国民への放射能の影響とについて評価がおこなわれ民心の安定に大きく貢献した。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 チェルノブイル原子力発電所4号機で1986年 4月26日発生した事故では、放出された放射性物質が国境を越え、その影響を近隣諸国だけでなく広い範囲に及ぼした。
 4月28日にスウェ−デンで放射能が検出されて以来、4月末から5月初めにかけて、諸外国で放射能レベルの増加が認められた。そのため、主としてヨ−ロッパ諸国では;
・子供の外出制限
・食料品、雨水、牛乳等の摂取制限
・野菜、肉類等の市場出荷制限
・牛への牧草供与及び放牧の制限
・放射能汚染食品等の輸入規制
・海外旅行者への対策
・車両及び船舶の検査
等の各種の措置をそれぞれ独自に講じた。
 世界保健機構(WHO)は、加盟国から放射能の影響ついての推定と採るべき措置に関して助言を求められたのを受けて、5月6日に専門家グル−プによる会議を開催した。
 そして、この事故に伴う放射能の影響について分析をおこなった結果;
・これ以上の放射性物質の大量放出はもはや無いと推定される
・ヨ−ロッパ一帯の大気中の放射性物質は大気によって薄められている
・短い半減期の放射性物質は減衰している
などから、事故の初期段階で一部の国がとっていた措置はもはや必要無い、との勧告を出した。
 この勧告により、ヨ−ロッパ諸国でとられていた規制措置は徐々に解除されていった。この時期(5月4日〜6日)に東京で開催されていた主要先進国首脳会議(東京サミット)においてもこの事故が議題としてとりあげられた。ここでは、このような国際的な事態に対応できるような通報体制や支援体制を整備する必要性が盛り込まれた「チェルノブイル原子力事故の諸影響に関する声明」が発表された。
 一方、国際原子力機関(IAEA)では、事務局長他2名が5月5日〜9日現地に行き事故状況と事故拡大防止措置の状況を視察すると共に、ソ連側から事故に関する情報を入手した。さらに、IAEAはソ連から国内の環境放射能に関するデ−タの提供を受け各国に伝達した。
 その後IAEAは、西ドイツからの要請等に応えて、この事故に対してIAEAのとるべき今後の方針を検討する為5月21日特別理事会を開催し、次の4項目を決定した。
〔1〕東京サミットの声明を受け、国際的な事故の通報システムと事故時の援助体制を確立するための国際協定を策定する。
〔2〕事故評価のための会合を3ケ月以内に開催する。
〔3〕原子力安全分野の協力を強化するための追加措置を検討する。
〔4〕原子力安全問題全般に関する閣僚級の国際会議をIAEAの下で開催する。
 これらの決定のもとに、IAEAでは、まず事故が発生した場合の早期通報及び援助に関する国際協定策定のための専門家会合を7月21日〜8月15日に行い、二つの条約案がとりまとめられ9月24日〜26日に開催された閣僚級によるIAEAの特別総会で採択された。これらの条約は、関係各国の被害を最小限に抑えるため、原子力事故の際の早期の通報・事故情報の提供と国際的な協力による迅速な援助について締約国とIAEAの義務が記されたものである。
 この事故については、当初は情報がかなり不足していて全容が明らかになるのにかなりの日時を要した。IAEAは情報入手に関してソ連に積極的に働き掛けソ連もそれに応えて協力的な姿勢を示した。8月25日〜29日にIAEAで開催された事故評価の専門家会合には、62ケ国・21機関から約600名の専門家が参加し、ソ連からの報告書と説明に対する質疑・応答がおこなわれ事故の全容がほぼ明らかにされた。
 このように、チェルノブイル原子力発電所事故の国際的な対応に関しては、IAEAが大きな役割を果たした。これは、各国がこの事故の重要性を認識し、またソ連がIAEAに積極的に協力し事故に関する様々な情報を提供することによって可能となったものである。
 また、IAEAとは別に、世界中の原子力発電所の7割以上を有する加盟国(23ケ国)で構成されている経済協力開発機構(OECD)/原子力機関(NEA)では、下部機関である原子力施設安全委員会(CSNI)を5月9日開催してOECD諸国で運転中または建設中の原子炉の安全性等について検討すると共に、OECD諸国の国民に対する放射能の影響について評価を行い、
・IAEAにソ連から出された情報によれば事故をおこしたRBMK型炉の設計と安全性はOECD諸国の炉とは基本的に異なっており、OECD諸国の原子力発電所の運転や設計に関して緊急の措置を講じる必要はない。
・この事故によるOECD諸国の国民に対する放射能の影響は軽微である。
等の結論を報告している。
<関連タイトル>
チェルノブイリ原子力発電所事故の概要 (02-07-04-11)
チェルノブイリ原子力発電所事故の経過 (02-07-04-12)
チェルノブイリ原子力発電所事故の原因 (02-07-04-13)

<参考文献>
(1) 原子力安全委員会(編):原子力安全白書昭和61年版、大蔵省印刷局(昭和62年3月)
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