<大項目> 原子力発電
<中項目> 原子力発電所の事故・故障
<小項目> 福島第一原子力発電所事故
<タイトル>
原子力被災者への対応に関する取り組み (02-07-03-09)

<概要>
 福島第一及び第二原子力発電所(以下、原子力発電所を「原発」という。)の事故による原子力災害被災者(以下「被災者」という。)の生活支援が喫緊の課題であることに鑑み、平成23年3月29日、福島第一及び第二原発事故に係る原子力災害対策本部の下に、「原子力被災者生活支援チーム」が、被災者支援の体制強化として発足した。平成25年12月20日に、国は原子力災害対策本部及び閣議において、「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」の指針を決定し、平成27年6月12日に、その改訂を公表した。改訂のポイントは、(1)早期帰還支援・新生活支援の両面の取り組みの深化、(2)事業・生業や生活の再建・自立に向けた取り組みの大幅な拡充、(3)より安定的で持続的な福島第一原発の事故収束に向けた対応(中長期ロードマップの改訂)である。現在も改訂された指針に基づき、政府の被災者支援が行われている。平成27年8月24日には、原子力災害対策本部長決定により、「福島相双復興官民協議会」が設置された。
 福島第一原発事故の当事者である東京電力は、事故発生当初から、福島第一原発の立地自治体などに人員を派遣し、人的支援を中心とした様々な取り組みを実施している。平成25年1月には、双葉郡のJヴィレッジに福島復興本社を設置し、被災者への支援の取り組みを一元的に実施する体制を整え、復興推進活動や除染推進活動を行っている。
<更新年月>
2016年12月   

<本文>
1. 政府における取り組み
 福島第一及び第二原子力発電所(以下、原子力発電所を「原発」という。)事故に係る原子力災害対策本部(内閣府、本部長:内閣総理大臣)は、福島第一及び福島第二原発の事故による原子力災害被災者(以下「被災者」という。)の生活支援が喫緊の課題であることに鑑み、平成23年3月29日、原子力災害対策本部の下に、「原子力被災者生活支援チーム(チーム長:経済産業大臣)」が、被災者支援の体制強化として、発足した(図1参照)。
 原子力被災者生活支援チームの発足時の主な任務は以下のとおりであり、関係行政機関、地方自治体、東京電力(株)(当時の名称)等との調整を行い、総合的かつ迅速に取り組むとした。
(1)被災者の避難・受入れの確保(除染体制の確保を含む)
(2)被災地周辺地域・避難所への物資の輸送、補給
(3)被災者への被ばくに係る医療等の確保
(4)環境モニタリングと情報提供
 平成23年5月17日、原子力災害対策本部は、原子力事故による被災者、被災自治体への対応に係る当面の課題とその取り組み方針を「原子力被災者への対応に関する当面の取り組みのロードマップ」としてとりまとめ、公表した。とりまとめた項目は以下のとおり。ロードマップについては、適宜、進捗状況の公表が行われた。
(1)福島第一原発事故の事態収束に向けた取り組み
(2)避難区域に係る取り組み
(3)計画的避難区域に係る取り組み
(4)緊急時避難準備区域に係る取り組み
(5)被災住民の安心・安全の確保
(6)雇用の確保、農業・産業への支援
(7)被災地方公共団体への支援
(8)被災者・被災事業者等への賠償
(9)ふるさとへの帰還に向けた取り組み
 原子力被災者生活支援チームでは、福島県内のラジオ番組を通じて、原発事故に関する情報や、政府の支援策について情報提供を行うため、ラジオ番組「守ります!福島 〜政府福島原子力被災者生活支援チームQ&A〜」を平成23年4月11日〜平成24年3月31日まで放送した。また、平成23年9月15日には、福島県外に避難されている人々向けに、政府の政策情報を直接届けるため、「ふれあいニュースレター」を創刊した。ふれあいニュースレターは現在も被災13市町村から県内外に避難している人々に向けて、配信されている(平成28年10月時点で、第68号を配信)。
 平成25年12月20日に、国は原子力災害対策本部及び閣議において、「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」の指針を決定した。指針では、
(1)帰還に向けた取り組みの充実と新たな生活の開始に向けた支援の拡充の両面からの福島支援
(2)予防的、重層的な汚染水対策の実施と廃炉推進に取り組む体制の強化など、福島第一原発の事故収束に向けた取り組みの強化
(3)国と東京電力の役割分担の明確化による国が前面に立った原子力災害からの福島再生の加速の3つの大きな方向性を示している。国は、この指針を避難生活が継続している被災者の人々の生活再建と、地元自治体の自立、再生への出発点として、活用し、充実し、具体化していくとした。
 その後、本指針に沿って取り組みを進めた結果、平成26年の田村市と川内村の避難指示解除の実現、国道6号の一般通行の再開、常磐自動車道の全線開通、福島県立ふたば未来学園高等学校の開校、除染等の措置など着実な進捗があった。このように具体的な進展が見られるものの、未だ復興に向けた道筋が見えないとの声が依然として地元には存在していること、発災から4年以上が経過したことによる長期避難に伴う課題の顕在化、また被災事業者等には事故前に比べた顧客・取引先の減少や、長引く風評被害等により厳しい事業環境が継続している状況であった。これらの状況を踏まえ、原子力災害対策本部は、必要な対策の追加・拡充を行うため、平成27年6月12日に、「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」改訂を公表した。改訂のポイントは以下のとおりで、現在も改訂された指針に基づき、政府の原子力被災者支援が行われている。
(1)早期帰還支援・新生活支援の両面の取り組みの深化
(2)事業・生業や生活の再建・自立に向けた取り組みの大幅な拡充
(3)より安定的で持続的な福島第一原発の事故収束に向けた対応(中長期ロードマップの改訂)
 原発事故による災害へのリンクも含め、東日本大震災に係る政府の対応については、復興庁のホームページに掲載されている。また、原子力被災者支援に関しては、経済産業省のホームページに避難指示や福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想等に関する現在の状況などが掲載されている。
 イノベーション・コースト構想は、平成26年1月に当時の原子力災害現地対策本部長の私的懇談会として設置された「イノベーション・コースト研究会」において、産学官の有識者が今後の研究開発拠点、産業拠点、人材育成拠点、地域開発の在り方等を検討し、地域経済の将来像、必要な取り組み、支援策等についての提言を同年6月、報告書にとりまとめられた。イノベーション・コースト構想の具体化に向けては、国、福島県、市町村をはじめ関係者が一体となって取り組みを進める必要があることから、個別検討会における検討状況の報告、その他、構想具体化に向けた進捗状況を共有しつつ、構想の実現に向けた方策について意見交換等を行うことを目的に、平成26年12月、「イノベーション・コースト構想推進会議」が設置され、現在に至っている。
 また、平成27年8月24日には原子力災害対策本部長決定により、「福島相双復興官民協議会」が設置された。福島相双復興官民協議会は、福島第一原発事故による被災事業者等の生活再建、生業や就労の回復等きめ細かい支援の実施に向けて、地方公共団体を含む関係機関等との総合調整等を行うことを目的とし、国、福島県、民間をメンバーとしている。そして、この協議会が司令塔となり、原子力災害対策本部、福島県、一般社団法人福島相双復興推進機構、独立行政法人中小企業基盤整備機構から構成される「福島相双復興官民合同チーム(官民合同チーム)」を設立し(図2参照)、福島第一原発事故に伴い避難指示等の対象地域となった福島県内12市町村において、当時事業を営んでいた事業者の事業・生業・生活の再建等を支援している。
2. 東京電力の取り組み
 福島第一原発事故の当事者である東京電力は、福島第一原発の事故発生当初から、福島第一原発の立地自治体などに人員を派遣して役場に避難していた住民等に発電所の状況説明を行った。政府が福島第一原発から半径20Km圏内に避難指示を出した後は、指示に従って移転した各自治体の役場に人員を帯同させるなどして事故の状況を説明するとともに、福島県内14自治体の災害対策本部を通じて住民の避難所等に米・飲料水や衣類等、物資の提供を行った。その後も東京電力は、原子力損害賠償への取り組みと併せて、人的支援を中心とした様々な取り組みを実施している。事故後間もない時期から、各自治体の避難所や政府と各自治体が行う住民一時立入の会場に人員を派遣して支援物資の仕分けやスクリーニング(放射線測定)などを行うとともに、他の電力会社とも協力しながら避難区域等で放射線モニタリングを行った。
 平成25年1月には、双葉郡のJヴィレッジに福島復興本社を設置し、原子力被災者への支援の取り組みを一元的に実施する体制を整えながら、復興推進活動や除染推進活動を行っている。復興推進活動の主な取り組みとしては、住宅や神社等の清掃・屋内片づけ、役場や図書館・公民館の荷物運搬・整理、住宅等への進入路や墓地・町道等の除草、仮設住宅における除雪、一時立入会場におけるスクリーニング、避難先からの帰還を目指す住民に直接声を掛けて要望を聞く見回り活動などがあり、これらに従事した人員は27万人・日を超えている。除染推進活動の主な取り組みとしては、農地・宅地・学校のモニタリングやJR常磐線の運転再開に向けたモニタリング、国や市町村が行う除染関連作業の工事管理、滞留した牛糞堆肥の流通回復に向けた取り組み、中間貯蔵に向けた試験輸送への対応などがあり、これらに従事した人員は18万人・日を超えている(実績はいずれも平成28年8月末現在)。
 平成28年3月には、福島復興本社を双葉郡富岡町にある東京電力の建物に移転させるとともに、各自治体の避難指示解除の動きに合わせて「見回り活動」を強化するなど、浜通りを中心に住民の要望に応える活動を継続して行っている。
<図/表>
図1 原子力被災者生活支援チーム
図2 福島相双復興官民合同チームの組織図

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<関連タイトル>
福島第一原発事故の概要 (02-07-03-01)
福島第一原発事故への国の初期対応 (02-07-03-03)
福島第一原発事故への福島県の初期対応 (02-07-03-04)
避難区域等の設定と住民避難 (02-07-03-05)
福島第一原発事故収束(2011年12月)に向けた取り組み (02-07-03-06)

<参考文献>
(1)原子力災害対策本部長決定:資料1「原子力災害被災者支援の体制強化について」、http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/downloadfiles/g110331b.pdf
(2)原子力災害対策本部:「原子力被災者への対応に関する当面の取組方針」(平成23年5月17日)、http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/pdf/torikumihoushin_110517_03.pdf
(3)政府原子力被災者生活支援チーム:ふれあいニュースレター第68号(平成28年10月号)、http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/kinkyu/fureai/pdf/letter_fureai68.pdf
(4)原子力災害対策本部:「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」(平成25年12月20日)、http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/pdf/131220_hontai.pdf
(5)原子力災害対策本部:「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」改定(平成27年6月12日)、http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/kinkyu/pdf/2015/0612_02.pdf
(6)復興庁:東日本大震災に係る政府の対応、http://www.reconstruction.go.jp/topics/20151007154956.html
(7)経済産業省:原子力被災者支援、http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/kinkyu.html
(8)経済産業省 研究会事務局:資料5「研究会における検討事項について」(2014年1月21日)、http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/pdf/140121/140121_01g.pdf
(9)経済産業省:資料3-2「イノベーション・コースト構想推進会議」について、http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/pdf/141218/141218_01e.pdf
(10)原子力災害対策本部長決定:「福島相双復興官民協議会の設置について」(平成27年8月24日)、https://www.fsrt.jp/wp-content/uploads/2016/03/0824_01c.pdf
(11)福島相双復興官民合同チーム公式ホームページ:https://www.fsrt.jp/outline
(12)東京電力ホームページ:「福島復興への責任を果たすために(写真集)」
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