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<概要>
 福島第一原子力発電所の、2011年12月における事故収束後の中長期取り組みは、同年12月21日に決定された「廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」(以下、「中長期ロードマップ」という。)に基づき実施されている。中長期ロードマップでは、福島第一原子力発電所の廃止措置等を、「放射性物質によるリスクから、人と環境を守るための継続的なリスク低減活動と位置付け、適切な対応を実施していく」、と記載されている。
中長期ロードマップは2016年12月までに、廃炉・汚染水対策の進捗や地域の声等を踏まえ、3回の改訂が行われている。
<更新年月>
2016年12月   

<本文>
1. 中長期ロードマップの策定経緯
 2011年12月16日、福島第一原子力発電所の事故収束に関し、政府及び東京電力が取り纏めた「福島第一原子力発電所・事故の収束に向けた道筋(2011年4月17日公表)」(以下、「道筋」という。)の目標を達成。原子炉は安定状態となり、当該プラントが敷地外に与える放射線の影響は十分小さく抑えられている状況になった。
 事故収束後の中長期の取り組みについて、2011年11月9日に、経済産業大臣及び原発事故収束・再発防止担当大臣(当時)より、中長期ロードマップの策定等についての指示が、東京電力、資源エネルギー庁、原子力安全・保安院(当時)に出された。
 本指示を受け、2011年12月21日、東京電力、資源エネルギー庁、原子力安全・保安院は、中長期ロードマップを取りまとめ、政府・東京電力中長期対策会議にて決定された。 
2. 中長期ロードマップ改訂の経緯
 中長期ロードマップは、2016年12月現在まで、3回(2012年7月30日、2013年6月27日、2015年6月12日)の改訂が行われている。
(1)2012年7月30日第1回改訂の概要
 「道筋」の完了以降も漏水などのトラブルが発生していた状況を受けて、東京電力は、原子力安全・保安院の指示を受け、中長期的な信頼性向上のために優先的に取り組むべき事項についての具体的な計画(以下、「信頼性向上計画」という。)を策定し、2012年7月25日には、原子力安全・保安院から評価結果が公表された。これを受け、2012年7月30日、信頼性向上計画や、それまでの取り組みの進捗状況を反映して中長期ロードマップの第1回改訂が行われた。
(2)2013年6月27日改訂の概要
 2013年3月7日に、燃料デブリ取り出しスケジュール前倒しなどの検討を進め、同年6月中を目途に「改訂版ロードマップ」を取りまとめるよう、廃炉対策推進会議議長である経済産業大臣から指示が出され、6月27日に中長期ロードマップの第2回改訂が行われた。
(3)2015年6月12日改訂の概要
 前回改訂以降の廃炉・汚染水対策の進捗や地域の声等を踏まえ、中長期ロードマップの第3回改訂が行われた。本改訂において、2014年1月に発電設備として廃止となった福島第一原子力発電所5号機及び6号機も対象に加えられている。
3. 中長期ロードマップ(第3回改訂版(2015年6月))の概要(表1
3.1 中長期の取り組みの実施に向けた基本原則
【原則1】地域の皆様、周辺環境及び作業員に対する安全確保を最優先に、現場状況・合理性・迅速性・確実性を考慮した計画的なリスク低減を実現していく。
【原則2】中長期の取り組みを実施していくに当たっては、透明性を確保し、積極的かつ能動的な情報発信を行うことで、地域及び国民の皆様の御理解をいただきながら進めていく。
【原則3】現場状況や研究開発成果等を踏まえ、中長期ロードマップの継続的な見直しを行なう。
【原則4】中長期ロードマップに示す目標達成に向け、東京電力や政府を始めとした関係機関は、各々の役割に基づき、連携を図った取り組みを進めていく。政府は、前面に立ち、安全かつ着実に廃止措置等に向けた中長期の取り組みを進めていく。
3.2 中長期の取り組みの実施に係るリスク低減とそれに向けた安全確保の考え方
 福島第一原子力発電所の現在の状況を把握した上で、リスク低減の考え方を整理し、安全確保に向けた取り組みを進めていく。
3.3 中長期の具体的対策
(1)中長期ロードマップの期間区分の考え方
 【第1期】「道筋」完了〜初号機の使用済燃料プール内の燃料取り出し開始まで(2年以内)
      2013年11月18日、4号機取り出し開始をもって終了
 【第2期】第1期終了〜初号機の燃料デブリ取り出し開始まで(10年以内)
      マイルストーン(主要な目標工程)を定め、進捗管理を明確化(表2)。
 【第3期】第2期終了〜廃止措置終了まで(30〜40年後)
(2)汚染水対策
 汚染水問題に関する3つの基本方針(汚染源を「取り除く」、汚染源に水を「近づけない」、汚染水を「漏らさない」)の下、予防的・重層的な対策を進めていく。また、建屋内滞留水についても取り組みを続け、表2の目標達成を目指す。
(3)使用済燃料プールからの燃料取り出し
 1〜3号機からの燃料取り出し、取り出した燃料の長期的な健全性の評価及び処理に向けた検討を行う。
(4)燃料デブリ取り出し
 原子炉格納容器の水位や燃料デブリへのアプローチ方向を組み合わせた複数の工法の実現可能性について、成立性の評価及び技術的な比較検証を行う(図1)。
(5)廃棄物対策
 固体廃棄物処理・処分の専門的検討を進める。
(6)その他の具体的な対策
3.4 作業円滑化のための体制及び環境整備
3.5 研究開発及び人材育成
3.6 国際社会との協力
3.7 地域との共生及びコミュニケーションの強化
<図/表>
表1 福島第一原子力発電所の廃止措置等に向けた主要な目標工程(2015年6月)
表1  福島第一原子力発電所の廃止措置等に向けた主要な目標工程(2015年6月)
表2 中長期ロードマップにおけるマイルストーン(主要な目標工程)
表2  中長期ロードマップにおけるマイルストーン(主要な目標工程)
図1 燃料デブリ取り出し工法の特徴
図1  燃料デブリ取り出し工法の特徴

<関連タイトル>
福島第一原発事故の概要 (02-07-03-01)
福島第一原発事故収束(2011年12月)に向けた取り組み (02-07-03-06)

<参考文献>
(1)東京電力:福島第一原子力発電所・事故の収束に向けた道筋(2011年(平成23年)4月17日)、http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu11_j/images/110417b.pdf
(2)原子力災害対策本部 政府・東京電力中長期対策会議:東京電力(株)福島第一原子力発電所1〜4号機の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ(2011年(平成23年)12月21日公表)、http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu11_j/images/111221d.pdf
(3)原子力災害対策本部 政府・東京電力中長期対策会議:東京電力(株)福島第一原子力発電所1〜4号機の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ(2012年(平成24年)7月30日第1回改訂)、http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/roadmap/images/t120730_02-j.pdf
(4)原子力災害対策本部 東京電力福島第一原子力発電所廃炉対策推進会議:東京電力(株)福島第一原子力発電所1〜4号機の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ(2013年(平成25年)6月27日第2回改訂)、http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/roadmap/images/t130627_04-j.pdf
(5)廃炉・汚染水対策関係閣僚等会議:東京電力(株)福島第一原子力発電所の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ(2015年(平成27年)6月12日第3回改訂)、http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/pdf/20160317.pdf
(6)東京電力:東京電力株式会社福島第一原子力発電所における信頼性向上対策に係る実施計画(2012年(平成24年)5月)、http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu12_j/images/120512j0101.pdf
(7)東京電力:プレスリリース 2012年「福島第一原子力発電所における信頼性向上対策に係る実施計画の策定に関する経済産業省原子力安全・保安院からの指示文書に対する報告の実施について」2012年(平成24年)5月12日、http://www.tepco.co.jp/cc/press/2012/1203491_1834.html
(8)東京電力:プレスリリース2012年「福島第一原子力発電所における信頼性向上対策に係る実施計画の策定に関する報告書(改訂)の経済産業省原子力安全・保安院への提出について」2012年(平成24年)7月24日、http://www.tepco.co.jp/cc/press/2012/1206816_1834.html
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